認知症について
1.認知症とは??
ICD-10では…
「脳疾患による症候群であり、記憶・思考・見当識・理解・計算・学習能力・言語・判断を含む多数の高次皮質機能障害を示す。組織の混濁はない。」
※ICD-10とは:疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)」とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類。厚生労働省サイトより引用:https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/
2.症状は大きく二つ??
症状は中核症状・周辺症状(BPSD)の2つに分けられます
<中核症状>
記銘・記憶や計算能力、見当識などの障害が徐々に進行し、失語・失行・言語機能の喪失などを経て、高度の状態に至る。
<周辺症状(BPSD)>
さまざまな精神症状や人格障害、異常行動が随伴する。
◎精神症状
自発性低下、不眠・不穏、夜間せん妄、不機嫌・易刺激的、興奮、幻覚、妄想、抑うつ、無為、作話、人物誤認、多弁・多動など
◎異常行動
徘徊、独語、叫声、攻撃・暴力、破衣、不潔(弄便)、異食、弄火、収集癖、盗癖、わいせつ行為、拒食、自傷、自殺企図など
3.認知症の種類
高齢者では、うつ状態や廃用症候群、せん妄、健忘症候群、あるいは向精神薬や抗パーキンソン薬などの服薬中に、精神活動が不活発になり、認知症様状態を呈することがしばしばみられる。
☆アルツハイマー型認知症
アルツハイマー症は大脳皮質の神経細胞が異常老化によって広範に変性・脱落する疾患。
<発症年齢と頻度・病型>
・男性より女性で発症率が高い。
・40~65歳の発症を早発型、65歳以降の発症を晩発型(アルツハイマー型老年認知症(SDAT))という。
<症状と経過>
全経過は数年から10年程度であり、3期に分けられる。
[初期]
物忘れ(記憶障害)・失見当識、理解・判断・思考力など全般的に低下する。
被害妄想などが見られ、視空間認知の障害も現れる。
表面的ではあってもまだ社会性は良く保たれていることが多く、会話も可能である。
⇩記憶の詳細⇩
[中期]
自分の意思を表すことができなくなる。
失行・失語なども目立ってくる。
着衣失行(衣服の着脱ができない)
観念失行(生活動作ができない)、人物誤認(顔を見ても誰だかわからない)などがでる。
⇩失行の詳細⇩
⇩失認の詳細⇩
[末期]
会話はほとんど消失し、疎通性も失われ、自分的な言語間代、保続などのみとなる。
パーキンソン症候群や歩行障害も出現し、失外套症候群※に陥る。
※失外套症候群(しつがいとうしょうこうぐん):外傷や血管障害、一酸化炭素中毒などで大脳が広範に障害された場合に出現する。
開眼の状態で横臥したままで、視線は固定しているか、定まらない。会話や随意運動は不可能であるが、嚥下は可能で、睡眠覚醒のリズムも保たれている。
<病理および病態>
大脳は高度に萎縮し、脳重量は著しく減少を示す。
皮質の神経細胞は高度に脱落し、神経細胞内には神経原線維変化という特徴的な変性所見が見られる。
皮質内には変性神経突起からなる老人斑が側頭葉から頭頂葉にかけて多量に出現する。
神経化学的には、記憶・学習機能と密接な関係である大脳皮質や海馬などでのアセチルコリン系機能の低下が指摘されてる。
<診断>
CT・MRIで萎縮所見が観察され、血管障害や他の器質性疾患を除外できることで診断される。
☆ピック病
ピック病は、発症はアルツハイマー病の1/10~1/15と少なく、弧発性の疾患である。
<症状の特徴>
特有な人格変化や意図しない行動・態度であり、高次脳機能障害は呈さない。
[初期]
徐々に判断力や道徳感情が低下、かつ抑制力も低下するため、人格からの推定しがたい反社会的行動を呈する。
[中期]
意欲低下、無関心や無頓着も目立つようになり、相手を無視したり、小馬鹿にしたりする特有な対人的応対が見られるようになる。
徘徊や多動、保続、常同的行動もしばしば目立つ。
[末期]
精神機能の荒廃が進行し、無言・無動状態となる。
☆レビー小体型認知症
<症状の特徴>
レビー小体型認知症は、進行性の認知症、幻視や意識状態の変動に加え、経過中に歩行障害や筋固縮などパーキンソン症状を呈する。
大脳皮質から脳幹の神経細胞内にレビー小体と呼ばれる円形の異常構造が広範に出現していることが特徴。
☆脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などにより脳組織が傷害され、認知症が出現する状態をいう。
⇩脳梗塞・脳出血の詳細⇩
<症状と経過>
一過性脳虚血発作、あるいは軽い脳梗塞の発作に引き続いて、徐々に症状が出現することが多い。
頭痛や頭重感、めまい、耳鳴りなどを愁訴として現れたり、神経衰弱状態を呈する。
次第に物忘れを自覚するようになり、注意集中の困難、意欲低下、物事への関心の低下、イライラ感や抑うつなどが見られ、情動失禁も呈するようになる。
易刺激、幻覚や妄想、せん妄、抑制欠如などが顕著になる。
記憶障害が高度になっても、判断力や理解力は比較的保たれていて、疎通性や感情的反応を示したり、日常でも対人関係は良好なことが少なくない。また、技能や趣味なども比較的良く保たれている。(まだら認知症)
神経衰弱状態:疲れやすく、集中して考えることができない。考えがまとまらない。イライラするなどに加え、頭痛・めまい、動機などの身体症状も伴うような状態である。
☆その他
●正常圧水頭症
脳せき髄液が何らかの影響でたまり、脳を圧迫することにより認知症のような症状が出現する病気。
65歳以上の高齢者に起こることが多い
原因は不明
認知症状以外には、歩行障害と尿失禁も起こる(三大症状)
歩行の特徴は、左右の足の幅を広げて小股での歩行となる。進行すると立てなくこともある。
治療法としてシャント手術という脳手術を行う。
●頭部外傷
<慢性硬膜下血腫>
頭蓋骨と脳の隙間に血がたまり脳を圧迫する病気。
高齢者に非常に多い。
名前に慢性とついている通り、頭部打撲などでの1か月~3か月後に起こることが多い。
症状は頭痛や歩行障害、運動麻痺など
さらに意欲低下や見当識障害などの認知機能障害も出現することもある。