【脳】前頭側頭型認知症の症状
前頭側頭型認知症(fronto-temporal dementia;FTD)では、アルツハイマー病とことなり、ある程度進行するまでは記憶や視空間認知は保たれ、見た目では分からない状態であり、ADLそのものに問題は生じない。しかし、前頭葉の機能低下および前頭葉が抑制している部位に影響を与える。
前頭側頭型認知症の症状発現のメカニズム
①前頭葉障害そのものによる症状
②前頭葉障害に基づく後方連合野への抑制障害による症状
③前頭葉障害に基づく辺縁系への抑制障害による症状
④前頭葉障害に基づく大脳基底核への抑制障害による症状
前頭葉の機能低下そのものによる症状
①病識の欠如
・初期から病識の欠如は現れる事が多い。
・自己意識の欠如、社会的環境の中での自己の位置を認識させる能力も障害される。
②自発性の低下
・自発性の低下は病初期からみとめられる。
・常同行動や落ち着きの無さと共存してみられることが多い。
後方連合野への抑制障害による症状
被影響性の亢進ないし環境依存症候群
被影響性の亢進(影響されやすさ):外的刺激に対して反射的に反応し、模倣行動や強迫的言語応答がみられること。
環境依存症候群:日常生活上でみられる症状であれば、使用行動や模倣行動、さらには目についた文字の音読、目の前の物品の使用、呼称といったかなり単純な行為を行なってしまう状態。
日常生活場面でみられる事
反響・模倣行為:介護者が首をかしげるのをみて同じように首をかしげる。
反響言語:相手の言葉をそのままおうむ返しに応える。
強迫的音読:何かの文句につられて即座に歌を歌い出す、他患への質問に先んじて応じる、視覚に入った看板の文字をいちいち読み上げる。
辺縁系への抑制障害による症状
脱抑制
考え無精:自発性が低下し、質問に対してよく考えずに返答したり、無視したりする症状。
立ち去り行動:集中力がなくなり、周りの状況を考えずに突然立ち去ること。
本人に悪気はないが、社会的な関係や周囲への配慮がみられなかったり、過ちを指摘されても悪びれた様子がないなどの行動が見られる。
大脳基底核への抑制障害による症状
常同行動
常同行動:一見すると目的もなく同じ動きを繰り返す行動。
常同的周遊:天候状態にかかわらず、毎日同じコースを同じように歩く行動。
常同的食行動異常:買い物に行くと必ず同じ物を買ったり、毎日同じメニューの食事を作ったりする。
滞続言語:何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える。
同語反復:同じことを表す言葉を無意味に繰り返す(「善人は善い人だ」「未成年の小学生」「雨の降る日は天気が悪い など)。
反復書字:同じ文字を書き続ける。
このような症状自体は強迫性障害に似ているところもあるが、自己の強迫症状に対する自我の違和性が認められない。