せん妄
●せん妄とは?
「せん妄」は、何らかの影響によって一定的な精神症状を呈する場合に診断されます。
「せん妄」は、病院の入院患者の中で10-30%程度に発症すると言われています。
場合によっては点滴やドレーンチューブなどを抜いたり、ベッドから転落するなどして二次的な障害を負ったり、治療の妨げになったりします。
●主な症状
・幻視
・妄想
・興奮状態
・集中力の低下
・見当識障害がみられる
・睡眠のリズムが崩れる
など
●特徴
上記のような症状だけでなく、せん妄にはいくつかの特徴がある。
①急な発生(いつから出始めたも確認)
②一時的に発症し、その後おさまる。
③日中は大きな変化はないが、夕方から夜間に症状が出現。症状に変動がある。
大きな症状としては、注意力や状況への理解力が低下する。
記憶力の低下、幻覚や錯覚、妄想などの訴えなど、認知機能が低下もみられる。
このふたつの症状が、短期間の中で出現、1日の中で変動します。
特に夜に変化の大きいせん妄を「夜間せん妄」と言い、昼間に症状は出ないが夜間に症状が強く現れます。
<診断基準>
A:注意の集中や維持に障害があり、意識に障害がある
B:短期間(障害は数時間から数日間)で発症して、1日を通して重症度が変動する傾向がある
C:認知(記憶・見当識・言語・視空間能力など)の障害がある
D:AとCの障害は、認知症ではしっかりと説明できない
E:身体疾患、アルコールや薬物といった物質中毒や離脱など、ひとつまたは複数の直接的な生理学的
結果により引き起こされたという証拠がある
<せん妄症状の3つのタイプ>
①過活動性せん妄…大声を出して暴れたりといった行動を起こすタイプ。
②低活動性せん妄…混乱しているものの沈静しているタイプ
③混合型せん妄…上記ふたつが合わさっているタイプ。
<せん妄の種類>
夜間せん妄:昼間は症状がなく、夕方から夜にかけてせん妄が出現。
術後せん妄:手術後に発生。
薬剤性せん妄:薬により引き起こされる。
アルコール離脱せん妄:アルコール依存症の人などが起こす。
●高齢者のせん妄
①環境変化や手術などのストレス
ストレスの多い環境や経験でせん妄が出やすくなる。
入院や入所、家族との別れなど大きな環境変化や手術がストレスとなり、せん妄が出現することもある。
②体調悪化
・熱中症、脱水
・尿路感染症、インフルエンザなどの病気
・低栄養
・便秘
など
③薬の服用
薬や薬の飲み合わせによってせん妄が起こることがある。
レボドパ(パーキンソン病の薬)や抗うつ薬、睡眠薬などの鎮静薬、向精神薬、抗ヒスタミン薬、心不全薬など、せん妄が出やすいと言われています。
3種類以上の薬の飲み合わせや、飲んでいた薬をやめるなどして起こる場合もある。
④生活リズムの崩れ
睡眠不足がせん妄を引き起こすほか、昼夜逆転が原因となり引き起こすこともあります。
暗いところや静かなところにいると不安が大きくなり、せん妄が出やすくなりやすい。
⑤中枢神経の影響によるもの
認知症、脳血管障害、多量の飲酒などで、中枢神経に影響が出るとせん妄の原因になることがあります。
●せん妄の予防・治療
環境調整や苦痛緩和が中心となります。
本来の病気や怪我の治療をスムーズに進めるためにも、せん妄へのアプローチも重要になってきます。
視覚・聴力:眼鏡、補聴器など
寝たきり:早期離床、早期リハビリ、身体拘束の回避
脱水:早期発見、早期治療
不眠:騒音の軽減、昼間の覚醒(昼夜逆転の阻止)
薬物療法:興奮や幻覚などで大声を出したり、活動をする場合は薬物療法を行う。
参考資料
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=40
https://ansinkaigo.jp/knowledge/2939