パーキンソン病【脳】
1.パーキンソン病とは??
①病理
ドーパミンが減ると、体が動きにくくなったり、震えが起こりやすくなる。ドーパミン細胞が急激に減っていく原因は不明。パーキンソン病の発症にはドパミン細胞の中のタンパク質が凝集することで起こると言われている。
ドーパミン詳細⇩
②症状
<四大症状>固縮、静止振戦、無動、姿勢反射障害
●固縮(筋強剛、筋硬直)rigidity
筋肉がかたくなって、スムーズに動かしにくくなる。
顔の筋肉がこわばり、無表情(仮面様顔貌)に感じられる。
●静止時振戦 resting tremo
何もしていないのに勝手に震える。
※静止時で手指、手間接、前腕、足、膝、下顎、口唇などにみられ4~6Hzの粗い震え。
震えている部位を動かすとその部の振戦は軽減ないし収まる。
睡眠中は震えが収まるが、目が覚めると震えが始まる。
震えのない部位の動作や精神的ストレスが加わると振戦は増すことがある。
●無動 akinesia
動きが素早くできない(運動緩慢)。
歩くときに足が出にくくなる(すくみ足)。
※すくみ現象:すくみ足歩行、すくみ手、開眼失行(閉眼ができない)すくみ言語などがあり、動作を意図してもできなくなるので運動遮断ともよばれている。
深いソファーからの立ち上がりが難しい。
話し方に抑揚がなくなり、声が小さくなる。
※言語障害:進捗した本症患者では、言語は抑揚に乏しく、小声で早口の言語となる。末期にはほとんど聞き取りがたくなる。
書く文字が小さくなる(書字障害)。
●姿勢反射障害 postural instability
体のバランスがとりにくくなり、転びやすくなる。
歩いていて止まれなくなる(突進現象)、方向転換をするのが難しい。
※突進現象:バランスを保つ機能が失われているため、木が倒れるように倒れてしまうか(彫像現象)、足を止めることのできない突進現象が現れる。
体を回す動作(寝返りなど)が難しくになる(体軸失行)。
症状が進むと、首が下がる、体が斜めに傾くこともある。
※前屈姿勢:パーキンソン特有なかがみの姿勢。体だけでなく、肘・膝関節も曲がった状態をとりやすい。
<その他の症状>
●自律神経症候
便秘が大部分の患者にみられ、脂顔、唾液分泌亢進、多汗、起立性低血圧などを伴う。膀胱障害、陰萎もみられることがある。
●精神症状
抑うつ傾向、自発性欠如、不安、幻覚症状をみることがある。末期になると、多少とも知能の低下を見ることが多い。
2.ホーン・ヤールの重症度分類
<Ⅰ度>
体の片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる。
体の障害はないか、あっても軽い。
<Ⅱ度>
両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがみられる。
日常の生活や仕事がやや不便になる。
<Ⅲ度>
小刻みに歩く、すくみ足がみられる。方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に
支障が出るが、介助なしに過ごせる。
職種によっては仕事を続けられる。
<Ⅳ度>
立ち上がる、歩くなどが難しくなる。
生活のさまざまな場面で、介助が必要になってくる。
<Ⅴ度>
車いすが必要になる。ベッドで寝ていることが多くなる。
3.治療
①治療の方針
必要な社会生活により薬の強さを調節する。
日常生活に支障ない程度まで症状を改善するにまずL―Dopa以外の薬を使い、できるだけL―Dopaの使用は避ける。
治療法の進歩が逆に予後長期化・重症化させ、治療薬増量・長期与薬による副作用も増加している。
病状により妥当な治療のゴールを設定し、それにより薬をコントロールする必要がある。◎いたずらな増量は副作用を招くため。
褥創、脱水、誤嚥による肺炎の予防が重要である。
②薬物療法
<第一段階>
抗コリン薬
ドパミン不足の結果相対的に過剰になる、神経伝達物質アセチルコリンを抑えて、神経伝達物質のバランスをとる。
認知症・排尿障害があれば、憎悪させるので避ける。
副作用:のどの渇き、便秘、めまい、大量で興奮・幻覚。
アマンタジン
本来抗ウイルス剤であるが、ドパミン放出を助けると考えられ、パーソニズムに効果がある(A型インフルエンザにも効果があると言われている)。
副作用:イライラ、不眠、うつ。
<第二段階>
ドパミンアゴニスト
ドパミンを受けとめる「受容体」の働きを助ける。
ドパミンが減っても、受け止める受容体を強化して影響を回避する仕組みである。
副作用:幻覚、錯乱など精神症状
<第三段階>
L―ドパ
不足しているドーパミンそのものを補う。
初は劇的に効くが、数年で効果がなくなる。また用量の調節が難しい薬である。
L―Dopaは末梢血管で酵素により分解され、その分効果が減るのでL―Dopaの分解を抑える物質を加えた製剤もある。
副作用:吐き気、幻覚・妄想・興奮、立ちくらみ、不整脈、悪性症候群。
<L―Dopaに特有の現象>
Wearing‐off(ウェアリングオフ)
L―Dopaが急に効かなくなり動けなくなる現象である。
L―Dopa服薬後1-3時間で急に症状が戻る。
朝・夕方によく起こる。
起こりやすい時間帯の少し前に少量のL―Dopaを服薬するか、他の薬を調整する。
on/off現象(オンオフ現象)
L―Dopa服薬に関係なく症状が軽快したり(on)悪くなったり(off)する
L―Dopaを少しずつ減らし(ドラッグホリデー)、また少しずつ増やして用量を調整する。このとき他の薬を併用し、L―Dopaを元より少なめにする。
4.リハビリテーション
①日常生活動作
できるだけ自分で行うようにする。生活すべてがリハビリになる(生活リハビリ)。
目標を立てて計画的に実施。
②運動
運動に消極的になりやすいため、なるべく身体を動かすことを意識する。
全身の体操を毎日実施する(散歩など)。
③歩行
だんだん歩幅が小さくなりやすいため、歩幅を大きくするように意識する。
意識をして腕をしっかり振りリズムよく歩く。
足のもつれに注意(転倒に注意)し、手すりなど周囲の物も利用する。
④言語
大きな声ではっきり発音する。
唇や舌を意識してはっきり動かす。
話す前に息を吸い、ゆっくり吐きながら話して声量を出すようにする。
1日数回深呼吸し肺活量を保つようにする。
参考文献
リハビリテーションのための神経内科 第2版 著者 安藤一也 杉村公也
http://parkinson-smile.net/treatment/p1.html
カラー人体解剖学 構造と機能:ミクロからマクロまで 西村書店 監訳 井上貴央