【介護】膝の痛み
参考資料
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjmj/48/2/48_186/_pdf
●関節の構造
関節は骨端の骨同士がこすり合わさる関節面はさ4~6mmの関節軟骨に覆われている。関節軟骨は柔らかく、摩擦係数が低く、氷と氷との接触摩擦よりも低い驚異的な潤滑性能を有する。
関節構造の変化
関節軟骨が何らかの原因で磨耗、それが原因で関節炎を引き起こす。原因は関節内骨折などの外傷後や化膿性関節炎後などの二次性のものがあるが、ほとんど原因が分かっていないものが多い自然に起こる一次性関節症が多い。発症年齢50歳以後急増し、年齢と共に増加。様々な研究の結果から、いずれも50歳代半ばから発生頻度は急増し、70歳代では半数以上に影響を及ぼすとの研究もある。
●膝に起こる症状
①疼痛
主に関節に荷重をかけて動かす時、歩行時(歩き出し)、階段昇降時、立ち上がるとき、深く曲げるとき等の日常生活動作全てに至る。また、関節炎のために腫脹、熱感が生じ、また関節に水が溜まる関節水症も生じる。初期は疼痛による可動域が制限、長期間罹患すると関節包の線維化や骨棘形成による可動域制限(拘縮)が生じ、膝が伸びきらない、曲がりきらないという状態が固定化し、そのためますます日常生活動作に制限が生じる。
②変形
日本人では、膝関節症の9割は内側の関節軟骨が磨耗し、徐々に内反膝(0脚)になる。この膝関節症の原因は不明、50歳代から急増し関節軟骨の何らかの退行性変性過程が基盤にあると言われている。男女比をみると、女性の罹患が男性4~5倍あり、女性ホルモンの関与も考えられている。また遺伝の関与が大きいと考えられ、近年、変形性関節症の遺伝子の解析が進んでいる。
③骨粗鬆症
結果分かってきたことは、膝関節症になる方は中高年以上の女性に多い骨粗霧症はなりにくく、逆に骨粗鬆症 になる方は膝関節症になりにくいことが分かってきている。
④X線写真
膝関節症をX線写真で見ると、関節軟骨はX線写真には写らないが、大腿骨と脛骨の隙間として写すことができる。膝関節症では、この関節の間が狭くなる。進行した膝関節症では軟骨の隙間は消失し骨と骨が接触するようになる。
●治療
治療には、保存的療法と外科的療法がある。進行して保存的療法の効果がなくなった症例では手術による療法 を行なうこともある。しかし、あくまでも保存的療法が主体であり、保存的療法は1)薬物療法、2)物理療法、3)運動療法の3つからなる。
1)薬物療法
薬は抗炎症鎮痛剤を処方されることが多い。最大の症状である痛みを和らげるためにこの薬剤を用いる。痛み が強い場合は日に2~3回服用し、痛みが軽くなってくると少しずつ服用回数や服用のタイミングなどを考え、痛みがあるときのみに服用するようにする。あくまでも痛みの軽減が目的であるため、関節自体がよくなっていくというものではない。
2)物理療法
物理療法は、温めたり冷やす、電気刺激を加えるなどによって痛みなどの症状を軽快させる方法。病院では専用の機器を用いて物理療法を行うが、家庭でも同様の効果を出す事が出来る。家庭でできることとして、お風呂に入ること。お風呂で温まることによって痛みは軽減できる。また、お風呂で関節が温まって柔 らかくなれば膝のストレッチ訓練もやりやすくなる。膝に熱感や腫れがあるときは、お風呂から上がったときにアイシングを行うこと炎症を抑えることができる。
3)運動療法
運動療法 は①ストレッチ、②筋トレ、③荷重運動の3つ。
①ストレッチ運動
膝関節症になると、徐々に膝の曲がりが悪くなる、伸びきらないといった症状が出る。前述のお風呂に入り、十分温まったら、ゆっくりと痛みがない範囲で最大まで膝を曲げたり、膝に手を当てて膝を伸ばす体操などが良い。お風呂で温まることで、関節の痛みの軽減、関節が柔らかくする効果がある。
②筋運動
・SLR訓練
仰臥位で反対膝は曲げて、膝を伸ばしたまま踵を床から10~15cmほど挙げ、5秒間止め、ゆっくり下ろす。
・外転筋運動
側臥位で下肢が床に水平になるくらいまで挙上5秒間停止し下ろす。
・内転筋運動
座位で大腿部にボールをはさみ、そのボールを両ももの力で5秒間つぶす。
③荷重運動
中年以後体重は増加傾向にあり、下肢の関節には負担が増えていきます。下肢の筋肉運動を行うことは、筋肉 の萎縮に止め、筋肉の関節への負担の分散、緩衝能力を再び取り戻す効果があると言われている。