OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【文献】最新の文献・研究を読んでみた⑨

【文献】最新の文献・研究を読んでみた⑨

 

「会議中に疲労感で居眠りそうな管理職の男性」の写真[モデル:高木桂一]

 

 

くも膜下出血後早期における病態を解明

本研究グループは、くも膜下出血発症直後における交感神経系の過活動が神経学的予後に影響していることを明らかに。

【研究の背景】

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は,脳内出血や脳梗塞と比較して若年で発症し、生命を脅かす疾患。発症時のみならず、その後約 2 週間の病態が神経学的予後に重要な役割を果たすことが知られているが、そのメカニズムはいまだ解明されていない。そのような中、近年では早期脳損傷という概念が多くの研究者の関心を集めている

早期脳損傷は、くも膜下出血発症直後に起こる病態で、これがその後約 2 週間の病態ならびに最終的な予後に直結すると考えられる。これまでさまざまな研究が行われてきたが、患者さんの予後に改善は得られていないのが現状。

くも膜下出血の発症直後には、交感神経系の過活動が頭蓋内だけでなく全身に起こることが知られている。また、発症直後の脳血流の低下が予後の悪化につながることも報告。しかし、この脳血流の低下の原因について解明する研究はこれまでほとんど行われていない。そこで、我々はくも膜下出血発症直後の脳血流の低下に交感神経系が関わるのではと考えた。

【研究成果の概要】

金沢大学附属病院でくも膜下出血に対して治療を行った患者さんのデータの解析に加え、マウスにくも膜下出血を引き起こしたモデルを用いることで、脳血流の低下と交感神経系の関連、およびそれらが、くも膜下出血の予後に与える影響を解析。その結果、くも膜下出血発症直後に起こった交感神経系の過活動が頚部の交感神経節の一つ、上頚神経節を介して脳血流の低下を引き起こし予後に悪影響を及ぼすことが明らかに

まず、患者さんのデータの中でくも膜下出血発症後に行う検査の一つである脳血管撮影での脳血流障害を比較。その結果、退院時の神経障害が重度の患者さんでは、より軽度の障害だった患者さんと比較して、発症後急性期の脳血流障害が顕著に表れた。また、全身に及ぶ交感神経系の影響のうち、心臓への影響を心電図で評価したところ、交感神経の過活動による心電図変化が見られた患者さんで脳血流の重度な障害が確認された

 一方、くも膜下出血を引き起こしたマウスの脳血流を分析すると、くも膜下出血発症直後では脳への血流が十分に行き届いていない結果が得られた。そこで、脳血管の収縮機能に関連すると報告されている頚部の交感神経節の一つ、上頚神経節をあらかじめ取り除いたマウスで同様にくも膜下出血を引き起した。その結果、頚部の交感神経節のないマウスでは脳血流の顕著な改善がみられた。さらに、その後のマウスの神経障害も抑えられた。

 

日常的な農薬摂取が及ぼす腸内環境への影響をヒトで確認

ポイント

一般生活者の日常的な農薬曝露と腸内環境の関係をヒトで初めて調査した。

有機リン系殺虫剤の曝露量が増加するに従い、腸内細菌によって産生される短鎖脂肪酸の一種である酢酸の存在量が低下する傾向にあった。

大腸における酢酸の役割には、腸管感染防御作用が知られている。

研究成果

便中酢酸濃度低下の機序として、酢酸を産生する腸内細菌組成割合を確認したが、OP曝露との関連性はなかった。酢酸はビフィズス菌など多くの細菌が産生するため、その絶対的な細菌数の減少も考えられるが、本研究では検討できなかった

一部のOPは微生物活性や脂肪酸代謝に関連する酵素活性を抑制するとの報告があるため、これが便中酢酸濃度低下に関与している可能性があるが、いずれも推測の域。

今後の展開

本研究成果は、機序を明らかにすることはできなかったが、日常的な有機リン系殺虫剤の曝露が、腸管免疫制御などに寄与している便中酢酸濃度に影響することを、尿の高感度化学分析を用いることにより疫学的に示唆することができた最初の調査となった

ヒトの腸内環境が宿主に長期的な影響を与えることを考えると、今後は子供や妊婦を含むより広い年齢層を対象とした研究が必要であり、別集団を対象とした本研究結果の再現性確認や、実験的アプローチによる機序解明が急がれる。

 

日本の研究:https://research-er.jp/