OTのブログ~医療・福祉・リハビリ・SNS情報まとめ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【介護】廃用性浮腫について~むくむくな足を何とかしたい~

【介護】廃用性浮腫について~むくむくな足を何とかしたい~

 

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●下肢のむくみ=浮腫とは

組織間隙液(組織間質液)が異常に増加した状態で肉眼的でむくんだ状態

下肢の浮腫の原因は様々で、全身的な浮腫をきたす疾患や局所的な浮腫をきたす疾患にわかれる。

近年、急激な高齢化により、全身疾患や器質的原因を伴わない下肢浮腫によく遭遇し、下肢血管外科専門家の間で「廃用性浮腫」と呼ばれるようになった。

 

【廃用性浮腫の病態】

起立したままであれば、夕方になれば下肢がむくむ現象が見られる。この下肢のむくみを、起立性浮腫という。

慢性的なうっ血状態が続くはずだが、実際には下肢筋肉を収縮すること、静脈弁の働きで重力に逆らって静脈血を心臓に戻す働きでうっ血は避けられる。この下肢の血液の流れが「静脈還流」であり、静脈還流の駆動力となる下腿の筋肉の働きを「下腿筋ポンプ作用」と呼んでいる

高齢者はあまり歩行しないので、下腿の筋肉ポンプ作用が低下し、さらに皮膚緊張度も低下するため、容易に下肢浮腫を生じ、これを「廃用性浮腫」と 呼んでいる。

 

【診断】

活動性低下による廃用性浮腫は、筋肉と連動した静脈弁の機能不全が一因と考えられているが、単に静脈還流不全のみで発症するわけでもなく、いまだに体系的な研究が行われているわけではない。複合的な要因が絡んでいると思われ、他の原因(低栄養による浮腫、麻痺による浮腫)が混在していることも多い。

 

◎局所片側性に浮腫をきたす疾患

急性(72 時間以内)

高頻度:深部静脈血栓症

中頻度:腓腹筋障害、コンパートメント症候群、Baker 嚢腫破裂

慢性

高頻度:慢性静脈還流不全

中頻度:二次性リンパ浮腫、骨盤内腫瘍、骨盤内リンパ腫、RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)

低頻度:May-Thurner 症候群、先天性静脈奇形、一次性リンパ浮腫

 

◎両側性に浮腫をきたす疾患

急性(72 時間以内)

中頻度:深部静脈血栓症、心不全急性増悪、腎不全急性増悪

慢性

高頻度:慢性静脈不全

中頻度:肺高血圧症、心不全、腎不全、肝不全、二次性リンパ浮腫、妊娠、肥満、骨盤内腫瘍、廃用性浮腫

低頻度:一次性リンパ浮腫、拘束性心臓外膜炎、心筋症、栄養障害、脚気

 

【治療】

廃用性浮腫の治療にgolden standardはなく、いくつかの治療法を組み合わせ、患者の苦痛の軽減をはかる

 

◎理学療法

筋肉に対して適切な理学療法を加えることは、一定の自覚症状改善効果がある可能性がある。定期的にリハビリ施設への通院が困難な場合、患者自身に積極的にリハビリを継続する意欲が低いなど、患者個人で対処困難なケースが多い。

廃用性浮腫と診断した症例の50%以上が運動能力低下や介助者がいないため治療を断念しているとの報告されている。寝たきりになってしまえば、下肢の廃用性浮腫は解消されるが、患者と家族にとっては問題の解決ではないので、廃用性浮腫の段階で対処できることが望ましい。

 

◎圧迫療法(弾性ストッキング)

弾性包帯や弾性ストッキング着用により浮腫は改善するが、廃用にいたった筋力が圧迫療法によって改善するわけではない。廃用性浮腫に併発し易い深部静脈血栓症予防の一定の効果は望めるが、廃用性浮腫の患者は強い圧迫療法ができない事も多く、中圧より圧の低いチューブ包帯から開始する事も多い

 

◎低栄養状態改善

廃用性浮腫は肥満患者にも見られるが、サルコペニアのような低栄養状態でも多くみられる。高齢者において低栄養は改善すべき重大な問題であるが、原因が多岐に渡る。高齢者の場合、GERD(食道胃逆流症や、蠕動低下などの機能的な消化管の問題から、義歯装着による咀嚼力低下、亀背など変形性脊椎症でより逆流性食道炎は起きやすく、体幹の姿勢保持ができないことも栄養障害の原因になる。歯科、消化器科から整形外科に渡る問題を抱えているケースが多い。

 

◎膝関節股関節治療

下肢筋力低下の原因が変形性膝関節症や、変形性股関節症の場合、高齢者でも手術により運動機能や疼痛が緩和できる可能性があれば、手術をすすめるべきである。近年の整形外科手術の全国統計では80歳以上の手術件数が増加しており、改善が見込まれる場合、麻酔が禁忌でなければ積極的に手術加療する事が望ましい。全身麻酔リスクが高ければ、鎮痛薬服用、装具着用となるが、人工関節置換術ほどの高劇的な効果は望めない。

 

【治療の現状】

廃用性浮腫の治療法は、下肢の運動と圧迫療法が主体となるが、外来で行う事は難しい。当院での症例を提示する。いずれもADLの低下したフレイルな高齢者である。圧迫用法と五苓散および運動療法を行っているが悪化はしないものの効果に乏しい。

効率的に行うには入院での複合的療法(CDT)が推奨されている。廃用性浮腫の複合的治療を積極的に行っている施設は少ない。

四肢リンパ浮腫治療に用いられている保存的治療法である複合的治療(用手的ドレナージ、圧迫療法、運動療法)。四肢リンパ浮腫では皮下に貯留しているリンパ液のアルブミン濃度が高いため、治療開始から効果を得ることが難しいケースも多いが廃用性浮腫は皮下に貯留したリンパ液のアルブミン濃度が低いため、圧迫療法で比較的容易に下肢の浮腫を軽減することが可能である。廃用性浮腫症例の多くが、日々の活動性の低下した独居高齢者、もしくは家人の協力の得られない方が多く、一旦脚の腫れが軽快して自宅に帰っても、元々の下肢を使わない日常生活に戻ると容易に脚が腫れ、外来受診時には、元の状況になっていることも多い。リンパ浮腫に対する複合的療法は保険収載されているが、廃用性浮腫に対する治療は、廃用症候群のリハビリ料などでしか算定できず、急性期病棟では受け入れが難しい。