OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【介護】高齢者への転倒予防~フットマッサージは効果はあるのか~  

【介護】高齢者への転倒予防~フットマッサージは効果はあるのか~

 

 

 

●高齢者の転倒予防の必要性

高齢者の転倒・転落による骨折などの外傷は、要介護状態の悪化を加速させQOL の著しい低下をもたらす。また、介護予防で重要視される転倒予防は、特に立位歩行能力の維持・向上が重要になる。

転倒予防に関する先行研究で・・・

  • 介護予防の必要な在宅高齢者の90%以上が足に何らかの悪影響があり、立位バランスの低下が転倒経験に繋がっており、在宅高齢者の多くが立位バランス能力向上に向けたフットケアを必要。
  • 足底部の皮膚感覚受容器からの情報入力が立位バランス能力と関連が深い。
  • 足趾機能が立位バランス能力や移動能力に及ぼす要因であることが報告されている。

 

●高齢者の転倒原因

①高齢者は加齢に伴う姿勢の変化や身体的な衰え。

②過去に転倒歴がある者は再転倒のリスクが高くなる。

③杖やシルバーカーの使用者は使用しない者と比べ転倒リスクが2 倍になる。

④対象者は複数の病歴を抱えている。

⑤5種類以上の多剤服用がある。

※薬剤数が5 種類以上の服薬は転倒のリスクが服薬のないものに比べ4.5 倍と示されている。

※降圧剤による起立性低血圧や睡眠薬によるふらつきなどが易転倒を誘発することが考えられる。

 

●足のマッサージ効果

①足底感覚の変化

足のマッサージにより感覚閾値の低下及び正常の状態にまで改善が見られた。それは、立位バランス能力において感覚受容器が集中している左右の拇指の感覚閾値低下が多く見られたが、触覚正常に改善したこと、②足のマッサージによる皮膚への刺激で残された感覚受容器の感受性が賦活化され、感覚伝達入力が高まったことが閾値の正常化を図る事は出来た

②足趾筋の変化

加齢に伴い足趾把持力が大きく低下する。加齢による足趾力の低下は足趾体操で改善されることが多く、特に足趾把持力は姿勢保持や前傾姿勢の安定性を保つために必要とされる。それを改善すれば地面を掴むような足趾の動作が転倒回避に役立つ可能性が考えられる。また、要介護高齢女性の足部は柔軟性が高いほど足把持力が強いことが明らかにされている。足のマッサージによる揉みほぐしが皮膚や筋肉の柔軟性を高め、足趾把持力の向上に寄与したのではないかと考える。

③足部機能の変化

足のマッサージによる足部機能に及ぼす効果が立位バランスの改善に繋がっている。足趾訓練は、足の握力が改善するだけでなく、感覚受容器の賦活を促し、静的立位バランスを改善させるという報告もある。高齢者にフットマッサージを実施することで、足部機能の向上(特に立位バランスと足握力)の改善につながることがわかった。

④精神的な変化

足のマッサージには、ストレス軽減効果があることが分かってきている。また、マッサージにより意欲的な意見もあり、マッサージ中のコミュニケーションやタッチングによる効果も考えられ、高齢者の自立した生活の維持や意欲向上にも繋がる。

 

引用文献

日本看護科学会誌 J. Jpn. Acad. Nurs. Sci., Vol. 41, pp. 520–526, 2021

介護予防の必要な在宅高齢者への転倒予防支援~フットマッサージが足部機能に及ぼす効果の検討~