【介護】認知症の方のコミュニケーション
認知症者の多くは“寡黙”
病院や施設での現場で、認知症者は自ら積極的に話しを始めることは少ない。軽症例ではきちんと会話は成立する事が多いため、専門職は、認知症者が話しやすい環境。会話内容、質問の仕方を工夫することが求められる。
アルツハイマー型認知症
通常は、喚語困難(呼称障害)から始まり、認知症の進行に伴って理解の障害も目立つようになるが、進行期にも復唱は保たれていることが多い。
日常会話では,「あれ」「それ」といった代名詞や「もの」「こと」といった代用語の使用が目立つようになる。古典的な失語分類に基づけば、健忘失語から超皮質性感覚失語に移行していくのが一般的である。
アルツハイマー病の特徴
①社会性が比較的保たれる。
記憶や見当識の障害を補いつつ会話を続けようとするため“取り繕い反応”と呼ばれる症状がしばしばみられる。
②今を生きている。
アルツハイマー病患者は、将来を語ることが苦手であり、一生懸命〝今〟を生き、状況により〝過去〟に向かう傾向がある。そのため〝今〟に会話を戻すことが重要であるが、24 時間寄り添っている家族にとっては難しい。「また同じ話。さっきも聞いた」となると、相手との関係も険悪になり、当事者は寡黙になっていく。
レビー小体型認知症
抑うつ症状が初発症状である場合もしばしばみられ、寡黙で反応も遅くなる。また、無関心・意欲低下は、初期認知症に共通して頻度の高い心理症状である。
レビー小体型認知症の特徴
①初期の段階で明らかな失語を認めることはほとんどない。
パーキンソン関連疾患による認知症者と同様に、日常会話においても反応が遅いことが特徴。
認知面の精神緩慢と運動面での動作緩慢が関与。
② “症状の変動”
時間帯によってボーとしてコミュニケーションが成立しないような状態や認知症を疑う程しっかりしている時間帯もある。そのため、重要な相談などを含む場合は、このしっかりしている時間帯にコミュニケーションを取れば十分に会話は成立し、記憶にも残すことが可能になる。
③“人物誤認”
人物誤認症状によって口調が変わり、しばらくの間は通常のコミュニケーションが困難になる可能性があること、しかし数十分もすれば通常のコミュニケーションが可能になることを介護者に知らせておく必要がある。
血管性認知症・前頭側頭型認知症
失語や記憶障害は目立たないのに自分から話しかけたり、会話に加わろうとしない。
また、社会的関心の狭小化も認知症者とのコミュニケーションを困難にする要因である。認知症の進行につれて自分や家族のことに関する関心なども薄れてくる。
前頭側頭葉変性症は最初に侵される領域に対応して出現する臨床症状
行動障害が目立つ“前頭側頭型認知症”
失語と行動障害が前景に立つ“意味性認知症”
失語が前景に立つ“進行性非流暢性失語”
の3 型に分類される。
同じ内容の話しを繰り返す“オルゴール時計症状”
何を尋ねても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える“滞続言語・反復言語(palilalia)”
※言語に関する常同行動は高頻度で、アルツハイマー病などとの鑑別にも有用。
認知症の疾患別特徴をふまえたコミュニケーションの支援が重要で、この点は専門職が介護者に対してアドバイスできることである。