OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【高次脳】社会的行動障害~どう対応していいか分からない。。。~

【高次脳】社会的行動障害

 

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●社会的行動障害とは

高次脳機能障害の1つである社会的行動障害は、依存性、感情コントロール低下、対人技能拙劣、固執性、引きこもりなど社会的・対人場面でその言動・行動によりさまざまな問題が生じる。

これらの障害の起こる前頭葉は社会的行動と関連する重要な脳領域であるが、その損傷によって生じる行動障害は、アパシー、脱抑制、遂行機能障害という 3つで大別することもできると言われている。この 3 症候群が内側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、背外側前頭前皮質の損傷によるものとも言われているが病変と症候の対応関係は明解ではない。社会的行動障害の基盤となる情報処理の障害が何であるのかは十分には明らかにされていない。

 

●主な症状

最も多い順に・・・・・

 

◎感情コントロールの障害、易怒性

◎金銭管理が困難

  • 対人技能の拙劣
  • 意欲・発動性の低下、アパシー
  • 固執性
  • 暴言・大声    など

また日常生活や社会生活を困難にするのは、暴力・他害行為や万引き、ストーカー行為など触法行為や反社会的な行動に至るケースもある。特に、病識が低下している場合は、本人が受診の必要性を感じない・病院受診を拒否する・高次脳機能の障害以外の症状を訴えるなど、上手く障害を把握することができず、家族だけで抱え込んでしまう事が多い。

 

社会的行動障害に含まれる行動や症状

脳損傷の直接の結果として理解可能な前頭葉の関与する社会的行動障害

他の認知機能障害(記憶障害・知的障害など)を基盤とした社会的行動障害

心理社会的要因の関与の大きい二次的な社会的行動障害

 

 

●基本的な対応

①前頭葉損傷に伴って生じる社会的行動障害

背外側前頭前野損傷で主に生じる遂行機能障害と関連した症状、腹内側前頭前野損傷で主に生じるアパシーと関連した症状、眼窩前頭前野損傷で主に生じる脱抑制と関連した症状に分けることができます。認知機能が比較的保たれている場合は、振り返りを重ねることにより、少しずつ衝動を抑える方法を身につけていくことができると言われています。無気力な場合は、以前の興味や外からのはたらきかけを工夫が必要です。ただし、外傷性脳損傷では、これらが重複していることが多いです。

 

他の認知機能障害から生じる社会的行動障害

原因となる認知機能障害そのものへの対処が有効。認知障害により集中できずイライラしている場合は、認知機能を補う方法を考えてみます。

 

③社会・心理的因子が絡んで二次的に社会的行動障害

例えばアルコール依存も加わるなど、より複雑になり重度化。重度化すると、対応が一層困難になるので、早期から当事者・家族に対する支援が必要です。

 

●行動(トラブルなど)のきっかけを知る

「トラブルになる行動」といっても、同じ症状・行動とは限らず、また、ひとつひとつの症状を別々に考えるのではなく、相互に関連していることも考えられます。その時のご本人の「気持ち」「捉え方」について、傾聴および行動観察して、きっかけとなる出来事を考えてみる。

1)きっかけとなる出来事 (トラブルの前や直接の原因)

2)実際に起こった行動(どのようなトラブルか)

3)結果(対応および反応)

この 3つの状況を記録し原因を検討。きっかけだけでなく、周辺状況やそれまでの経過などの要因を整理する。

 

●認知機能を確認

「すぐ怒る」「大声で怒鳴る」というケース

本人や家族に話を聞くと、「思い違い」「勘違い」「思い込み」などが起きていることがあります。約束やできごとを忘れてしまうと、経過や理由が分からなくなり、それに対する失望や焦り、不安がきっかけで“怒り”となって表れることがあります。記憶、注意、遂行機能などの認知機能を確認し「きっかけ」との関係を考えてみましょう。

 

「忘れやすい」「覚えがない」というケース

他人の動きや音が気になって、ついカッとなる(注意障害)、物を盗っても、全く覚えていない(記憶障害)などもあります。特に、興奮している時にいろいろと聞くと逆効果になることがあり、時間や場所を変えて、本人が冷静になった時に振り返ることが必要です。

 

●環境を調整、対応方法を身につける

社会的行動障害の多くは、言葉で注意しても収まらないことが多く、むしろ興奮して助長することがあります。できるだけ静かな場所に移動したり、話題を変えたりすることが有効。また原因や状況を観察して、きっかけとなる相手や話題、環境などを探ります。

相手の話をよく聞けるようになると、状態や課題をわかりやすく整理して、家族や職員が介助しながら、「大声を出す理由」「大声を出すことの周囲の影響」などを認識することができれば、原因を避けたり、最小限にしたりすることができるようになります。

人により対応方法はさまざま。その行動はすぐに収まることはできないため、少しずつ症状が軽減していくようにしていく。本人が課題認識を持てれば、場面や状況・頻度などで減っている状況を共有して、目標を設定していく。現実逃避や防御のための行動の場合は、一時的に行動が激しくなったり、攻撃的な行動が起こる場合がある。その場合は、ご家庭や病院・支援施設などで可能な範囲で調整できることから始める。