【リハビリ】サルコペニアの基準
●サルコペニアの新基準 (AWGS)
第6回日本サルコペニア、フレイル学会にてアジアサルコペニアワーキンググループ(AWGS)による2019年版の新しいサルコペニア基準が国内で初めて発表された。
AWGSの診断基準
①筋力(Muscle Strength)
②身体機能(Performance)
③骨格筋量(Skeletal muscle mass) の3つをもとに
サルコペニア(低筋力+低骨格筋量 もしくは 低身体機能)と重度サルコペニア(低筋力+低骨格筋量 かつ 低身体機能)に分類する。
カットオフ値
筋力
男性:握力28kg未満、女性:18kg未満
身体機能
歩行速度1.0m/秒未満(6m歩行速度にて)
もしくは 5回椅子立ち上がりテスト 12秒以上
もしくは Short Physical Performance Battery 9点以下
骨格筋量
Dual-energy X-ray absorptiometry:男性:7.0kg/m2未満 女性:5.4kg/m2未満
Bioelectrical impedance analysis:男性:7.0kg/m2未満 女性:5.7kg/m2未満
なお、スクリーングとしてのカットオフ値は、下腿周囲長が男性34cm未満、女性が33cm未満、SARC-Fが4以上、SARC-CalFが11以上とされている。
●EWGSOPによる定義
サルコペニアの診断基準は様々な種類がありますが、ヨーロッパのワーキンググループEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)による定義がよく使われています1)。
四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下がある場合にサルコペニアと診断されます。
四肢骨格筋量は四肢の筋肉量(ALM)を身長(m)の2乗で割った、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)の値(kg/㎡)が男性では7.23 kg/㎡以下の場合、女性では5.67 kg/㎡以下であることが必須の条件であり、さらに10mの歩行速度が0.8m/秒未満の場合、あるいは握力が男性では30kg未満、女性では20kg未満の場合にサルコペニアと診断されます。
WGSOPによる診断基準
四肢骨格筋量(ALM)
ALM÷身長(m)の2乗 男性:7.23 ㎏/㎡以下、女性:5.67 ㎏/㎡以下
身体機能(歩行速度)
0.8m/秒以下
筋力(握力)
男性:30㎏未満、女性:20㎏未満
日本人のサルコペニアの診断基準
EWGSOPの診断基準では欧米人の高齢者の基準値であり、日本人と欧米人では、高齢者であっても体格や生活習慣の違いがあるため、日本人の高齢者に合ったサルコペニアの簡易基準案を国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)が作成しています。
65歳以上の高齢者で、歩行速度が1m/秒未満、もしくは握力が男性25kg未満、女性20kg未満である場合で、さらにBMI値が18.5未満、もしくは下腿囲が30cm未満の場合にサルコペニアと診断されます。
歩行速度、握力が基準値以上であった場合は正常。歩行速度、握力が基準値以下でもBMI、下腿囲が基準値以上であれば脆弱高齢者であるがサルコペニアではないと診断されます
この簡易基準では身長、体重、握力計、メジャー、ストップウォッチがあれば測定可能であり、診断が比較的容易に行える利点があります。歩行速度の1m/秒は横断歩道を青信号のうちに渡り切ることのできる歩行速度とされています