OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【健康】静脈血栓塞栓症~怖い病気の1つです~

静脈血栓塞栓症~怖い病気の1つです~

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●深部静脈血栓症とは

静脈血栓塞栓症VTE:venous thromboembolism)は
①深部静脈に血栓を生じる病態(深部静脈血栓症:deep vein thrombosis:DVT
②その血栓が静脈壁から剥離して静脈血流に流れ込み、肺動脈を塞ぐ急性の病態(急性肺塞栓症:acute Pulmonary Embolism:aPE)を併せたし総称である。


●DVTの病態

DVTは全身の深部のすべての静脈に発生するが、下腿のDVTが最も多く要注意とされる。
その中で、ヒラメ静脈は筋および静脈の構造の違いから、最近の臨床においてDVTを発症しやすい静脈とされている。

 

成因

静脈内の血栓が形成される原因としては、1856年にVirchowが提唱した
①血流の停滞
②静脈壁の異常
③血液凝固能の亢進
の3要因が極めて重要といわれ、これらの因子が高率に重複して存在する場合に発生率が高いとされている。


●予防方法

予防対象となる手術や疾患の基本的なリスクの強さを評価。
①手術や疾患に起因するリスク増強因子
②個々の患者に起因したリスク増強因子
を参考に適切な予防方法のリスクアセスメントを行う。

<予防のポイント>
血流の停滞予防と抗凝固療法

予防は・・・
発症していない時期に行う一次予防と、発症後にそれ以降の再発を予防する二次予防に分かれる。

静脈系は・・
①末梢血管から心臓へ血液を還流させる働き
②容量血管として循環血液量を調節する機能
を持つが、外からの様々な物理的因子の影響を受けるため、静脈系の生理を十分理解した上での予防法が重要となる。


●治療内容

①圧迫法

弾性ストッキング

<生理的効果>
①筋の圧迫により筋収縮時の静脈圧迫を増強させ直接的に筋ポンプ作用を増強する
②静脈の圧迫により静脈系を縮小させ、逆流の減少を引き起こす
③不全に陥っている弁の接合を改善する
④微小循環領域の圧迫により、毛細血管の還流を良好にして浮腫を改善する

などが挙げられる

<着用上の注意>
着用前に十分な説明を行い承諾を得ること、下肢長や下腿周径を正確に計測し、適切なサイズを選択した上で上端部や下端部の丸まり、重なりによって血流を阻害しないように均一に装着することが必要。

弾性包帯

弾性ストッキングが下肢の形状に合わない場合、手術、病変のために使用できない場合に弾性包帯を考慮する。生理的効果としては弾性ストッキングと同様

欠点

①時間経過で緩みが出る。

②施行者の巻き方で圧迫圧が変化する

方法

弾性包帯の幅は10cmのものを用い、末梢部より巻き始め、浮腫を発生させないため末梢部をきつく、中枢に向かうにしたがって弱く巻き上げる
圧迫圧は足関節部を100%とすると中枢部は40%程度。

らせん状に外側から内側に向かって巻いていくと適度に力を入れやすく、安静臥床時に下肢は外旋位をとるため、下肢と反対方向に巻く事で緩みにくい

間欠的空気圧迫法

間欠的空気圧迫法は物理療法機器の中でマッサージ器(空気圧式)として分類され

①ブーツタイプ(IPC)

②足底静脈叢圧迫(VFP)装置 に大別される。

元来血流、リンパ液流の促進を目的に末梢性浮腫(末梢循環障害、手の外傷後の浮腫、手の外科術後、乳がん術後の上肢循環障害、肩手症候群、下腿・足部周辺・四肢外傷後の浮腫、原発性リンパ浮腫など)に適応されていたが、2004年4月から「肺血栓塞栓症予防管理科」が算定できるようになり、DVT予防に使用されるようになった。

IPCは空気を送り出すコンプレッサー(ポンプ)とエアホース、カフ(グローブ)より構成される。

<生理的効果>
①骨格筋の収縮には静脈自体が直接圧迫され血液が静脈内の一方弁により中枢側へ押し上げて作用があるが、臥床による不動の状態では袋状の静脈弁を有する下腿のヒラメ静脈などの静脈に血液が停滞しやすくなる。IPCはこの作用を他動的に補助する。

②足部に荷重することで約30ml貯留するといわれる足底部の静脈叢を圧迫し血流還流を促すvenous foot pumping作用を補助する。