バイタルサインとは?
バイタル・サイン Vital signsとは、
Vital⇒生命
Sign⇒徴候
という意味で、患者の“生きている証”というような意味を持ち、患者の生命に関する最も基礎的な情報である。
一般にバイタルサインとは、脈拍、呼吸、血圧、体温の4つの生体情報を指す。
1.脈拍 Pulse
脈拍は、、、
①左心室が収縮する際に
②大動脈に送り込まれる血液の圧波が、
③全身に分岐した動脈内に波動的に伝わり、
④表剤する末梢動脈で触知されるものである。
その性状は、1分間の脈拍数とリズム、そして緊張度で表現される。
正常値:毎分50-60回
徐脈(bradycardia):50回以下
頻脈(tachycardia):100 回以上
<脈拍の診察方法>
脈拍が測定できるところはいろいろあるんですが、皮膚表面近くに存在し比較的簡単に触診できる動脈として、身体診察において最も頻用されるものは、、、
両側の橈骨動脈です‼
触診部位は、両側前腕の手関節(手首)の体幹側直近の外側の部位(下図)。
ここに、第2・3・4指の指尖(人差し指・中指・薬指の指先)を当て、脈拍の左右差、不整脈の有無、緊張度を測る。
左右差がなれければ、回数を測定する。
余裕があれば、1分間測定するのが良いが、現場では15秒間測定することが多い。
例:脈15回×4回(15 秒間の場合)=60回/分
不整脈がみられた場合は1分間以上測定する。
2.呼吸 Bleathe
呼吸には外呼吸と内呼吸がある。
<外呼吸>
肺の伸縮によって酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する運動のこと。
この運動は肺自体の運動ではなく、胸郭の拡大収縮することによって起こる。
<内呼吸>
末梢の毛細血管と体組織の間で、酸素と二酸化炭素の交換されること。
呼吸は呼吸中枢の延髄によって制御されてるが、心臓の動きと異なりある程度は意識的に変化(自己で調節)させることができる。
正常呼吸数は成人で16~20回(新生児は正常値が40~60回)
呼吸数は年齢によっても異なり、体位、運動、精神状態など様々な原因によっても変化する。
<呼吸の診察方法>
呼吸の診察は、脈拍の測定を15 秒間行っている間に同時に始める。
脈拍の呼吸性変動を診察するためには、同時に患者の呼吸の様子を観察する。
<観察ポイント>
①鎖骨上窩の凹凸の有無
②喘鳴の有無
③おおよその呼吸数を診察
鎖骨上窩の凹凸は、正常の呼吸時にはみられないが、大きく深呼吸をすることで観察することができる。呼吸不全のある患者の場合、胸鎖乳突筋の胸骨頭・鎖骨頭が明確に観察される。
<呼吸の種類>
基本的身体診察の中で特殊な呼吸として重要なものは
①チェーン・ストークス呼吸
弱い呼吸が次第に強く大きな呼吸となり、また次第に弱くなり、無呼吸(数十秒から数分間)となるサイクルを繰り返す呼吸。
大脳が広範囲に障害されたときにみられる。同時に、患者の意識状態・神経学的診察所見等も重要である。
②過換気状態
女性に多くみられる心因性の呼吸状態である。
重症の場合には、呼吸性アルカローシスを伴い、血中カルシウムの異常をもたらし、手足や舌の知覚異常を伴っていることがある。
③起坐呼吸
患者が坐位で努力性の呼吸になる。臥位では苦しいため患者自ら坐位になる。
心不全・肺水腫などのときに多くみられ、チアノーゼ・下肢の浮腫などを伴っている場合がある。
④下顎呼吸
状態が非常に悪い患者さんにみられるもので、呼吸筋を十分に機能させることができないため、下顎だけを動かして努力性の呼吸をしているため、患者の全身状態・意識状態等の他所見も重要となる。
3.血圧 Blood Pressure ;BP
血管内を流れる血液の圧力を血圧という。
心収縮力、血管の抵抗、血液量、血液粘度に依存し、心拍出量と抹消抵抗の積で表される。
●最高血圧(maximal BP:最大血圧または収縮期圧)は、心臓の収縮期に血圧が動脈に入り血管が最高に緊張したときの圧で、心収縮力と大動脈の弾性により決まる。
●最低血圧(minimal BP:最小血圧または拡張期圧)は、心臓の拡張期の終わりに血圧が毛細血管や静脈に流れ込み血管の緊張がもっとも減じたときの圧で、細動脈の血管抵抗に左右される。
最高血圧と最低血圧の差を脈圧といい
最高血圧:最低血圧:脈圧は3:2:1の関係にある。
平均血圧は1心拍ごとの動脈圧の平均で、最低血圧+脈圧/3で換算される。
<血圧の正常範囲>
最高血圧(mmHg)/ 最低血圧(mmHg)
新生児:80~60/60
乳児:90~80/60
幼児:100~90/60~65
学童:120~100/60~70
成人:130~110/60~90
<血圧測定>
血圧の測定には直接法(カテーテル法)と間接法(触診法、聴診法、振動法)があるが、一般に聴診法が用いられる。
4.体温 Body Temperature
体温とは、身体の内部の温度を言うが、実際に温度を直接計ることはできないため、比較的、体内温度に近い値を示す腋の下の温度(腋窩温)、口の中の温度(口腔温)または直腸温を測定する。
人間は皮膚の血管の拡張、発汗などにより、身体の表面からの放熱を増やしたり、
皮膚の血管の収縮、ふるえなどによって身体の表面からの放熱を減らしたりして、
体温を一定に保つ。
<体温の評価>
体温の測定の際基準となる温度は、一般的には腋窩温で36.0℃から37.0℃、正確な評価のためには通常の個人の平熱についての情報が必要である。
新生児:体温は高く、外界の温度に左右されやすい。
高齢者:皮膚の熱の伝導度が低いために、逆に低い値を示す傾向にある。
閉経前の女性の体温:一般的に排卵日を境に前2週間は低値、後2週間は高値の二相性を示す。
体温は時間帯でも測定値が若干異なり、午前2時-6時が最低で、午後3時-10時が最高値を示すが、その温度差は1℃以内である。
体温が異常に上昇する場合は高体温と発熱との2種類が考えられる。
高体温:運動・高温環境の時に見られ、体温調節のバランスは正常で、涼しい場所などに移動することにより正常な体温まで下降する。
発熱:体温調節の機構が崩れており、涼しい場所などに移動するだけでは元には戻らない。発熱の原因としては感染症、悪性腫瘍、膠原病などの存在が考えられる。
◎バイタルサインを見る意義
バイタルサインは対象者の全身状態を知る1つの手がかりであり、何かをする前後に確認する習慣をつけるべきである。
対象者が急変した場合、意識状態の確認およびバイタルサインの測定がきわめて重要となる。
最低限、意識状態や血圧、呼吸状態を確認する。嘔吐物はその症状・量などを確認しておく。