【介護】男女別にみた認知症高齢者の病前性格と BPSDの関連
BPSDとは
BPSDの定義
BPSDを「認知症患者にしばしば生じる、 知覚認識、思考内容、気分、行動の障害による症状」と定義。
BPSDの症状
抑うつ、せん妄、妄想、幻覚、徘徊、失禁、暴力、食異常といったものである。しかし、その症状も認知症状や環境・体調、薬剤などほかの要因が加わり区別は難しい場合もある。
BPSDによる介助者の影響
BPSDは、介護者と患者のQOLの低下、介護者のストレス増大など、さまざまな問題が生じ、多くの主介護者が BPSDへの対応方法が分からず、介護負担感を抱えてしまっていることが在宅介護を困難にする。
BPSDへの対処方法
薬物療法
BPSDは介護者の適正な介入と薬物療法によって症状の改善がみられることが明らかとなっているが、BPSDは身体的および環境要因が関与することもあるため、対応の第一選択は非薬物的介入を原則とする姿勢が重要である。
※抗精神病薬を使用する群のほうがプラセボ投与群に比べて死亡率が増加することが報告されている。
環境改善
・落ち着く場所の確保
・服薬調整管理
・課題の工夫
・本人生活ペース確保
・自力可能課題実施 といった対応が症状を改善させた。
※日常生活リズムの確保や嫌がることをしないといった対応により症状が改善した。
BPSDの症状の男女比較
男女の違い
男女は脳機能の違いや、性格特性の違いから BPSDの現れ方が異なっている可能性が示唆されている。
男性:女性に比べて攻撃的行動、退行が多くみられる。
女性:男性に比べてうつ症状が多くみられる。
男性において最も多くみられた症状
・易刺激性(54.9%)
・夜間行動(49.0%)
・興奮(45.1%)であった。
女性において最も多くみられた症状
・妄想(61.7%)
・興奮 (56.5%)
・易刺激性(56.5%)
・夜間行動(54.8%)
BPSDと性格の関連
男性の性格変化
勤勉性傾向の性格は脱抑制、神経症傾向の性格は易刺激性、協調性傾向の性格は異食を起こしやすいという結果がある。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では前頭葉の障害が指摘されているが、レビー小体型認知症に限定した研究結果では、勤勉性の病前性格が興奮を起こしやすかったことを報告している。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症を対象に行われた先行研究では、協調性の欠如した性格で焦燥性興奮、易刺激性、アパシーが多くみられたと報告がある。
男女別にみた精神疾患の関連性
男性の場合
男性は外向性、勤勉性、開放性傾向の性格はうつ症状を起こしにくい。
うつと性格特性に関連があり、高いニューロチシズム(神経症傾向)、低い外向性、低い誠実性といった性格の人はうつになりやすい。外向性は、社交的、活動的な性格であり、開放性は、好奇心がある、興味が広い性格であるため、うつが少なかったと推察される。
女性の場合
女性は協調性傾向の性格が多く、アパシーが多くみられた。
先行研究では、アルツハイマー型認知症で協調性傾向の性格はアパシーを起こしにくいことが報告されている。協調性は柔軟な、気の良い性格であり、先行研究と同様にアパシーになりにくいことが推察される。
文献
原著_TJDCR20002_男女別にみた認知症高齢者の病前性格とBPSDの関連野_2020.0609.indd (jst.go.jp)