【リハビリ】リハビリをする上でのリスク管理
- リハビリ中に生じる急変・状態変化
- 脳梗塞のリスク管理
- 脳出血のリスク管理
- くも膜下出血のリスク管理
- 血圧低下に伴う脳虚血(起立性低血圧)
- 急性期の自律神経障害
- 脳浮腫への考慮
- 筋力増強トレーニングでの注意
- 肩関節痛
- 肩関節亜脱臼について
- 肩手症候群について
- 転倒・転落・骨折
- ベッドサイドでのチューブ・コード類のライン管理
リハビリ中に生じる急変・状態変化
重篤・時間変化とともに重篤化
①心肺停止 ②胸部痛 ③動悸・不整脈 ④腹痛 ⑤頭痛
状態変化
①気分深い・悪心・嘔吐 ②めまい ③痙攣 ④ 低血糖 ⑤血圧変動 ⑥関節痛・筋肉痛
脳梗塞のリスク管理
①脳血流の自動調節機能の破綻(はたん)
血圧低下により脳血流量が低下し再梗塞や脳機能低下につながる。
②心原生梗塞
・出血性梗塞や脳浮腫のリスクが大きい。
・不整脈・心不全に注意が必要。
・再発予防にはワーファリンを使用。
③脳梗塞の危険因子
・高血圧:収縮期血圧160㎜Hg 以上 拡張性血圧95㎜Hg以上
・糖尿病
・高脂血症
・喫煙
脳出血のリスク管理
①出血の原因と再出血
・典型的出
血部位:被殻40% 視床30% 脳幹・小脳・皮質下10%
・その他の原因による再発:動静脈奇形、海綿状血管腫、もやもや病、脳腫瘍など
②脳室穿破(せんぱ)に伴う急性水頭症
神経症状の悪化が見られた場合はすぐに医師に報告。ドレナージ術適応の可能性あり
③痙攣
・皮質下出血は高率で起こりやすい(15~23%)
・脳出血の場合は確率は低いが、遅発性痙攣や症候性てんかんが起こりやすい。
・早期痙攣出現後、遅発性痙攣再発率(30%)は高い。
・まれに脳卒中再発の場合もあるため注意。
くも膜下出血のリスク管理
①重症で予後不良症例の急変には注意‼
・高齢 ・脳室内、脳内出血 ・再破裂 ・脳血管攣縮 ・Hunt Hess分類、Fisher分類が重症
Hunt Hess分類
GradeⅠ:無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直がある
GradeⅡ:中等度から強度の頭痛や項部硬直があるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はない
GradeⅢ:傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示す
GradeⅣ:昏迷状態で中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害を伴うこともある
GradeⅤ:深昏睡状態で除脳硬直があり、瀕死の様相を示す
Fisher分類
Group1:CT上で血液を示す所見が見られない。
Group2:CT上で血液がびまん性に存在するも、血塊は認めない。血液の層が1㎜を超えない。
Group3:CT上で血塊を認める、または血液の層が1㎜以上ある。
Group4:脳室内に血塊を認める.びまん性の出血を認める、またはクモ膜下に出血を認めない状況に限らない。
②再破裂
・発症6~24時間以内
・根治術の未実施症例はいつでも再破裂の可能性が高い。
③脳血管攣縮
・数日~14日目ごろまでに発症。
・神経症状の悪化が30%程度あり、無症候に収まる場合は60~70%程度。
・治療方法として、意図的に血圧を上げる方法がある。
・脳血管攣縮期の血圧低下は脳血流量の低下につながる。
・脳血管攣縮による梗塞の可能性もあり、その予後の影響は大きい。
④正常圧水頭症
・発症頻度:10~40% 発症期間:発症後2日~数か月
・水頭症の合併症として、認知障害、歩行障害、尿失禁の疑いがある場合は報告。
・急性期の重症例として、心電図の異常や呼吸困難(中枢性肺水腫)、意識障害(低ナトリウム血症)に注意。
血圧低下に伴う脳虚血(起立性低血圧)
①臥位から座位・立位になると重力の影響により血液が下肢や腹部臓器に移行し、心臓への還流血液量は約30%軽減してしまい、血圧低下につながる。
②脳卒中(特に急性期)では、麻痺による筋収縮困難・長期臥床による筋力低下が起こり、筋ポンプによる静脈還流の低下、下半身への血液貯留が起こりやすくなる。
③体位変や離床を進める際は、頻度の血圧測定と本人の訴えを聞き出し慎重に行なう。
血圧が低下する場面
・強い負荷や痛みからの解放後:迷路神経過反射が起こりやすい。
・刺激が少ない:立つだけ。車椅子に座っているだけ。
・長期臥床患者・糖尿病合併症の離床。
・突然の起立:十分な筋活動もないまま他動的に立位姿勢になるため、起立性低血圧を起こしやすい。
急性期の自律神経障害
①病型(脳出血・梗塞)に関わらず、急性期は自律神経のバランスが崩れる。
②原因は、①ストレスに対する交換神経の過剰反応、②内因性カテコールアミン濃度の上昇。
※副腎髄質および交感神経に存在する生体アミンの総称で、生体内ではドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの3種がある。
・血圧動揺:血圧上昇が多く、変動しやすい。少しの刺激に過剰反応する。
・不整脈
・頻脈:安静時より頻脈になる。
・発汗異常:安静時より発汗が多い。
・発熱:明らかな炎症反応なしでも高熱が続く。
脳浮腫への考慮
①出血、梗塞、虚血で脳浮腫出現
②脳梗塞:3~7日のピークから徐々に減少。脳出血:1~2日後から出現、約1~2週間をピークに3~4週間持続。
③脳浮腫の悪循環:脳浮腫により、脳組織・頭蓋内圧亢進し、脳血流が低下する。その結果、脳低酸素状態に陥り、脳浮腫の悪化につながる。
④薬物コントロールが最優先で行なわれる(ステロイド療法、高張液療法など)。
筋力増強トレーニングでの注意
①過負荷にならないように負荷量を調節(翌日に疲労が残らない程度)。
②血圧に配慮し、循環器疾患は注意する。
・等尺性収縮は、血圧上昇をきたしやすい。
・呼吸を止め、いきむと血圧上昇をきたしやすい。バイタル確認および運動時の呼吸維持。
肩関節痛
①肩関節亜脱臼
・初期の弛緩期に多く、上肢の重量を保持できないため生じる。
・腱板に対して牽引力が生じ、関節包・棘上筋・三角筋が昨日的ストレッチ(オーバーストレッチ)を受ける事で生じる。
・すべての亜脱臼症例で痛みが生じるわけではなく、一時機関経過後に生じる。
②痙性および拘縮
・片麻痺上肢:内旋・内転が優位になり、外旋制限が起こりやすい。
・内旋筋(肩甲下筋・大胸筋)の痙縮が強く、伸張刺激で生じる場合がある。
肩関節亜脱臼について
<定義>
関節が構成する骨の関節面がズレて正常な位置関係ではないが、一部はなお接触を保っている。
<原因>
三角筋だけでなく棘上筋の筋緊張の低下や筋力低下が原因だと考えられる。
<予防>
・早期の関節可動域訓練。
・スリングを使用し、関節の位置関係(アライメント)を保持する。
・筋緊張の低下している時期は、スリングや三角巾で固定することが多いが、拘縮を起こさないように他動的に関節可動域維持のための運動も必要。
肩手症候群について
<定義>
肩と手の疼痛性運動制限と手の腫脹(発赤を伴う)・痛みを主徴とする反射性交感神経性ジストロフィー(RAD)の一種である。原因の明らかでない特発性のもともあるが、離床的にみられる本症候群の多くは、片麻痺、心疾患、頚部脊椎症、上肢の外傷などに続発する。重症例では上肢機能は廃用(廃用肩・廃用手)となる。
<症状>
急性期では、手部の腫脹・熱感・発赤、手指の運動時痛を伴うことが多く、慢性期では手指の関節可動域と筋委縮を伴うようになる。
<発症時期>
発症から3日目から6ヶ月(7割程度は3か月までに発症)
<各時期の症状>
第1期(急性期:3~6か月)
・激しい疼痛
・発赤、腫脹、発汗過多、皮膚温上昇、血流増加
・肩、手関節の屈曲制限
第2期(亜急性期:3~6か月)
・激しい疼痛
・萎縮(皮膚や手指)、蒼白、乾燥、光沢を帯びる。
・関節拘縮。MP軽度伸展位
第3期(慢性期)
・疼痛の軽度減少。
・乾燥、著名な萎縮。
・関節拘縮の悪化。完全拘縮。
転倒・転落・骨折
<リスクマネージメントシート>
①転倒したことがある(入院前後) :3点
②歩行に介助または補助具が必要である。 :2点
③判断力が低下している(記憶・理解・注意力低下など) :2点
④日常生活に影響する視力障害がある。 :1点
⑤頻尿・失禁がある :1点
⑥薬を服用している(眠剤、降圧剤、利尿剤など) :1点
※転倒の可能性大:7~10点 転倒しやすい:4~6点 可能性がある:0~3点
ベッドサイドでのチューブ・コード類のライン管理
人工呼吸器装着患者
経鼻挿管:鼻から気道確保
経口挿管:口から気道確保
気管切開:直接気道へチューブを挿管し気道確保
カテーテル挿入患者
胸腔ドレーン:胸水などの排泄用チューブ
末梢動脈カテーテル(Aライン):血液ガス測定、持続的な血圧のモニタリング(観血的動脈圧測定)
中心静脈カテーテル(CV):中心静脈栄養法(TPN/IVH)。太い静脈から直接投薬、栄養補給を行なう。
マーゲンチューブ:胃への直接流動食・投薬を行う。
バルーンチューブ:膀胱から直接排尿。
肺動脈カテーテル(スワンガンツカテーテル):肺動脈圧(心臓負荷)、肺動脈