【介護】職業性腰痛の現状と展望
職業性腰痛とは
日本産業衛生学会では職業性腰背部障害と、行政上では業務上の腰痛(災害性腰痛 と非災害性腰痛とを区別される)とされており、WHOでは労働関連性疾患に包括され。作業関連性腰痛とされている。
腰痛の職業性危険因子
職業性腰痛の発生には、多数の因子が絡み合っており、疫学や生体力学のみならず,種々の臨床医学的研究(X線検査、MRI検査、電気生理学的検索、筋力評価など)の検討がされてきている。
職業性危険因子は・・・
①作業要因
➁環境要因
③心因的・社会的要因
④個人的要因
多数の危険因子が絡み合う職業として、長時間の拘束姿勢保持、振動が合わさる長距離トラック運転があげられる.
職業性腰痛の具体例
①肉体的重労働
肉体的重労働が腰痛を引き起こすことは事実。重労働には、どのような職業であるかFrymoyerらの定義によると、腰を傷める者が年間1.5%以上発生する職種は運輸・倉庫業などが該当する。
➁継続的な静的労働姿勢
長時間座り続けたり、ある姿勢で仕事を継続する労働も腰痛の危険因子である。1日の労働時間の半分以上を自動車運転に費やす者は、椎間板ヘルニアの発生率3倍にもなるという報告がある。これは、長時間の座位姿勢保持と振動との影響とされている。
③体幹の屈曲・捻転
屈曲・捻転が腰痛の発生に深い関連性を有するという報告は多数みられる。この複合動作は、物の挙上(持ち上げる)を伴うこともしばしばある。自動車の組立ライン、土木作業、看護業務などがあげられるが、事務員でもよくとられる動作である。
④物体の挙上(持ち上げ)
物体の挙上(持ち上げ)が腰痛の原因となることは、多くの研究から明白となっており、常識でもある。職業性危険因子としての物体の挙上は、挙上重量のみならず、数人での物体運搬時に1人が急に物体から手を離す場合や予想外の重量物を手渡される時などの急激な力学的要請時や反復動作も関係する。
⑤物体の押し・引き
物体の押し・引きを要する作業従事者は、通常の労働者よりも腰痛の発生頻度が5倍多いとの報告がある。押し・引きの動作で椎間板内圧が上昇すると言われている。
⑥反復作業
反復作業は、単調な作業内容による心理的因子の影響もある。流れ作業の手仕事従事者は、事務員より腰痛の発生頻度が高い。
⑦振動
振動は、椎間板の代謝に影響し、傍脊柱筋に疲労をもたらすことが生体力学的、生理学的研究から検証されている。そのため、トラック、バス、飛行機、建設機械などの運転手は、腰痛のリスクが高く、他職種の労働者よりも早期から腰痛に罹患しやすい。
⑧心因的・社会的因子
これらの中で不満足な職業・職種,労働者間の不協調、単調な作業などの職場に関連するものも危険因子となる。