骨折後の合併損傷・合併症
●骨折の合併損傷
末梢神経、筋腱損傷、靱帯損傷、皮膚欠損、血管損傷
●骨折の合併症
<急性期>
全身性:出血性ショック、播種性血管内凝固症候群 、脂肪塞栓症候群、静脈血栓症、肺塞栓症
局所性:隣接臓器損傷、皮膚・筋・腱の損傷、血管・神経損傷、コンパートメント症候群、破傷風、感染症
<慢性期>
全身性:外傷後神経症
局所性:遷延癒合、偽関節、阻血性骨壊死、Volkmann拘縮、外傷性骨化性筋炎、慢性骨髄炎、Sudeck骨萎縮、外傷後関節症、骨の発育障害(小児)
①コンパートメント症候群
・四肢の骨と筋膜によって構成される区画の内圧が何らかの原因によって上昇し、血行障害や神経障害をきたして筋肉の機能不全や筋壊死に至るもの。
・筋肉は阻血時間が6~8時間で不可逆的となる。
・水疱形成を伴う著しい腫脹と激しい疼痛を生じる。
*前腕のVolkmann拘縮が有名である。
②Volkmann拘縮
・ギブスや骨片による上腕動脈の圧迫に起因する区画症候群であり、上腕骨顆上骨折に合併しやすい。
③遷延癒合
・骨折が通常癒合する季刊を過ぎても仮骨形成がないか、あっても骨化帰転が非常に緩慢であるが、骨折部癒合への組織反応がまったく消失しているわけではない。
・治癒までに時間を要する状態をいう。
④偽関節
・遷延癒合とは異なり、骨癒合への組織反応が停止あるいは消失し骨折部は厚い結合織が存在する状態で、骨折端に裂隙が形成され周囲は関節包様組織に包まれ、滑液様の漿液を含むものである。
・偽関節のうちにも、適切な固定で骨新生が著しく活性化されたものと、そうでないものに分けられる。なお感染は偽関節を増悪させる。
・原因としては種々の要因が関与し、結果的に偽関節が生じる。その主な要因とは、①開放骨折、②感染、③血行不良な骨折片、④不適切な固定力と固定期間、⑤不適切な固定剤力などである。
⑤阻血性骨壊死
・栄養動脈の損傷による血行遮断により骨折片の壊死。
・大腿骨頸部内側骨折、手舟状骨骨折などで起こりやすい。
*舟状骨の解剖
舟状骨への血行は遠位部及び中央部から供給され、近位部からは供給されてないことがあるため、骨折下場合、癒合が遅れ無腐性壊死に陥りやすい。本にてチェック。
⑥外傷性骨化性筋炎
・挫滅された筋肉のなかに形成された血腫に異所性骨化を生じたもの。
・小児や若年者の股関節、肘関節の脱臼・骨折に好発する。
・関節の可動域が著しく制限される
⑦慢性骨髄炎
・骨組織の感染を意味する。
・多くは血行性感染だが、隣接軟部組織からの侵食、開放骨折や穿刺や手術での直接感染もある。
参考文献
1)原田考 遠藤剛等 骨折の基本的知識
2)総合リハビリテーション 第26巻 第7号 株式会社医学書院
3)腰野富久 エッセンシャル整形外科(第2版) 医歯薬出版 1996年1月
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