OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【リハビリ】myelopathy hand~頚部脊髄症の手~

【リハビリ】myelopathy hand~頚部脊髄症の手~

 

 

頚部脊髄症の手の症候

 脊髄の障害部位の違いによって

  ①索路徴候(long tract sign)

  ②髄節徴候(segmental sign)  の2つに分けられる。

索路徴候とは

圧迫高位脊髄の白質の障害によるもの。

脊髄白質の障害は、圧迫高位より遠位に痙性麻痺・筋力低下は一般的に伴わないと言われている(みられても軽度のことが多い)。

髄節徴候とは

脊髄の灰白質の障害によるもので圧迫高位の脊髄節支配筋の筋力低下や筋委縮を生じ、深部腱反射は低下ないし消失(弛緩性麻痺)。

 

索路徴候でみられる手の症候

Myelopathy hand(頚髄症の手)

①手が開きづらい:Finger escape signで評価

Finger escape signとは・・・

手のひらを下に向けて両手を前に出し、全ての指を揃えて30秒伸ばした状態を保つ。頚髄症の重症度によって小指、薬指、中指と揃えることや伸ばすことが出来なくなる。

②尺側(小指側)の指が言うことをきかない手:10秒テスト(Grip and release test) により評価。

10秒テスト(Grip and release test)とは・・・

手のひらを下に向けて両手を前に出し、「グー」「パー」を出来るだけ早くかつ不完全な曲げ伸ばしにならないように10秒間で何回出来るか数える。健常者における平均値は26±6.7回、頚髄症患者と健常者の閾値は21~22回、高齢者の場合は20回以下、壮年以下では25回以下で回数が低下していると判断。

 

髄節徴候

頸椎症で脊髄が圧迫された場合は,通常は髄節症候が索路症候よりも先行して生じる。

索路症候を伴わない髄節症候では,神経根症候との鑑別が必要である。

典型的な神経根痛(肩甲部,上肢の高度の痛みがあり,頸椎の後屈や病変側への側屈で痛みがビリっと走る)があれば,神経根症候の可能性が高い。また髄節性のしびれでは手掌側が強いことが多いのに対して,神経根症のしびれでは,手背側が強いことが多い。

 

頚部神経根症について

年齢:中高年層に多く、10歳代は皆無であり、20歳代は稀

初発症状:頚部痛単独が7割、頚部痛に上肢痛あるいは手指のしびれを併発したのが3割頚部神経根症のほとんどが片側の頚部痛で発症。※因みに脊髄症の多くが指のしびれで発症。

 

頚部神経根症の手の症候

 大きく2つの特徴:①感覚障害(指の痺れ) ②筋力低下(運動機能障害) 

①感覚障害(指の痺れ)

初期症状は両手指のしびれと歩行障害であり、それぞれ64%、16%とした報告がある。

手の巧緻性障害も特徴的な症状であり、手指のすばやい把握動作とその解除や内転、外転動作が障害され、 myelopathy hand と呼ばれる。客観的指標としては finger escape sign (小,環,中指の内転および伸展の障害により5段階に分類)と10秒テスト(10秒間に20回以下しか手指の把握動作とその解除ができなければ異常)がある。

②筋力低下(運動機能障害)

初期症状は両手指のしびれと歩行障害であり、それぞれ64%、16%とした報告がある。

痙性歩行が明らかな症例では両下肢の反射は亢進し、Babinski 反射や足クローヌスが高率に陽性となる。失調性歩行のある場合には閉眼によってこの傾向は悪化し、Romberg 徴候は陽性となる。一方、上肢においては圧迫高位の髄節支配の筋の腱反射は低下、それより下位の髄節支配の筋の腱反射は亢進し、Hoffmann 徴候陽性となる。

 

【介護】職業性腰痛の現状と展望

【介護】職業性腰痛の現状と展望

 

 

 

職業性腰痛とは

日本産業衛生学会では職業性腰背部障害と、行政上では業務上の腰痛(災害性腰痛 と非災害性腰痛とを区別される)とされており、WHOでは労働関連性疾患に包括され。作業関連性腰痛とされている。

 

腰痛の職業性危険因子

職業性腰痛の発生には、多数の因子が絡み合っており、疫学や生体力学のみならず,種々の臨床医学的研究(X線検査、MRI検査、電気生理学的検索、筋力評価など)の検討がされてきている。

職業性危険因子は・・・

①作業要因

➁環境要因

③心因的・社会的要因

④個人的要因

多数の危険因子が絡み合う職業として、長時間の拘束姿勢保持、振動が合わさる長距離トラック運転があげられる.

 

職業性腰痛の具体例

肉体的重労働

肉体的重労働が腰痛を引き起こすことは事実。重労働には、どのような職業であるかFrymoyerらの定義によると、腰を傷める者が年間1.5%以上発生する職種は運輸・倉庫業などが該当する。

継続的な静的労働姿勢

長時間座り続けたり、ある姿勢で仕事を継続する労働も腰痛の危険因子である。1日の労働時間の半分以上を自動車運転に費やす者は、椎間板ヘルニアの発生率3倍にもなるという報告がある。これは、長時間の座位姿勢保持と振動との影響とされている。

体幹の屈曲・捻転

屈曲・捻転が腰痛の発生に深い関連性を有するという報告は多数みられる。この複合動作は、物の挙上(持ち上げる)を伴うこともしばしばある。自動車の組立ライン、土木作業、看護業務などがあげられるが、事務員でもよくとられる動作である。

物体の挙上(持ち上げ)

物体の挙上(持ち上げ)が腰痛の原因となることは、多くの研究から明白となっており、常識でもある。職業性危険因子としての物体の挙上は、挙上重量のみならず、数人での物体運搬時に1人が急に物体から手を離す場合や予想外の重量物を手渡される時などの急激な力学的要請時や反復動作も関係する。

物体の押し・引き

物体の押し・引きを要する作業従事者は、通常の労働者よりも腰痛の発生頻度が5倍多いとの報告がある。押し・引きの動作で椎間板内圧が上昇すると言われている。

反復作業

反復作業は、単調な作業内容による心理的因子の影響もある。流れ作業の手仕事従事者は、事務員より腰痛の発生頻度が高い。

振動

振動は、椎間板の代謝に影響し、傍脊柱筋に疲労をもたらすことが生体力学的、生理学的研究から検証されている。そのため、トラック、バス、飛行機、建設機械などの運転手は、腰痛のリスクが高く、他職種の労働者よりも早期から腰痛に罹患しやすい。

心因的・社会的因子

これらの中で不満足な職業・職種,労働者間の不協調、単調な作業などの職場に関連するものも危険因子となる。

 

【介護】鼠径ヘルニアとは~よく聞くけど結局なに?~

【介護】鼠径ヘルニアとは~よく聞くけど結局なに???~

 

 

 

鼠径ヘルニアとは

ヘルニアとは、腹腔内容物(腸管や脂肪)が、腹壁に生じた(または生来有する)欠損部(脆弱となった部分)を通じて飛び出す状態。いわゆる脱腸と言われおり、左右の太腿の付け根部分に発生するヘルニアの総称を「鼠径ヘルニア」という。腹部に生じるヘルニアの約80%は鼠径ヘルニアと言われている。

 

鼠径ヘルニアの種類

鼠径ヘルニアには一般的に

・外鼠径ヘルニア

・内鼠径ヘルニア

・大腿ヘルニア

の3種類があり、鼠径部のどの部分にヘルニアが発生するかによって、種類が分けられる。外鼠径ヘルニアは解剖学的な理由から、男性に多く発生。大腿ヘルニアは女性が発症することが多いと言われている。

 

鼠径ヘルニアの原因・症状

原因

鼠径ヘルニアを発症する原因は、先天性と後天性がある。

先天性の場合:生まれたときからヘルニア嚢が存在するため、乳児期から鼠径ヘルニアを発症。

後天性の場合:立ったり座ったりという慢性的な鼠径部への圧力に加え、加齢による腹壁の脆弱化によって鼠径ヘルニアを発症。

症状

鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、あるいは痛みが現れる。また、立っているとき膨らみや違和感があるのに、横になると内容物が腹部に戻るため膨らみや違和感がなくなるのが特徴。

 

鼠径ヘルニアの診断・治療

鼠径ヘルニアの診断は、基本的に問診と患部の視診・触診で診断できることが多い。

しかし、鼠径ヘルニアの種類や似ている病気を鑑別することができないため、超音波検査も併用を行なうことも多い。

治療

鼠径部ヘルニアは構造的な問題が大きい為、自然治癒は期待できません。治療は手術が原則

手術の種類と方法

鼠径ヘルニアの手術には、鼠径部を3~4cmほど切開する鼠径部切開法と、腹腔内に腹腔鏡(腹腔内を調べる内視鏡の一種)を挿入する腹腔鏡下修復術の2種類ある。

<手術手順>

①筋肉や靭帯の隙間であるヘルニア門から出たヘルニア嚢を、周囲の組織からヘルニア門の裏側まで剥離。

②剥離したヘルニア嚢を切除、または還納し、ヘルニア門を閉鎖ないし縫縮。

※以前まではヘルニア門を縫い閉じていたが、現在は人工の膜をヘルニア門にあてがう方法が一般的になってきた。

退院後の生活

退院した直後から、基本的には普段通りの生活を送っていただくことが可能。

数日の間は、過激な運動や重いものを持つ行為は控えるとよい。

 

嵌頓(かんとん)とは??

腸の一部がヘルニア門に挟まり込んで、おなかのなかに戻らなくなってしまった状態を嵌頓(かんとん)という。嵌頓を放置すると腸が虚血の状態となり、腸閉塞や腸が壊死するケースもある。

※腸閉塞:口から摂取した食物や消化液の流れが、腸のなかで滞ってしまう疾患。腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れる。

 

【介護】男女別にみた認知症高齢者の病前性格と BPSDの関連

【介護】男女別にみた認知症高齢者の病前性格と BPSDの関連

 

 

 

BPSDとは

BPSDの定義

BPSDを「認知症患者にしばしば生じる、 知覚認識、思考内容、気分、行動の障害による症状」と定義。

BPSDの症状

抑うつ、せん妄、妄想、幻覚、徘徊、失禁、暴力、食異常といったものである。しかし、その症状も認知症状や環境・体調、薬剤などほかの要因が加わり区別は難しい場合もある。

BPSDによる介助者の影響

BPSDは、介護者と患者のQOLの低下、介護者のストレス増大など、さまざまな問題が生じ、多くの主介護者が BPSDへの対応方法が分からず、介護負担感を抱えてしまっていることが在宅介護を困難にする。

 

BPSDへの対処方法 

薬物療法

BPSDは介護者の適正な介入と薬物療法によって症状の改善がみられることが明らかとなっているが、BPSDは身体的および環境要因が関与することもあるため、対応の第一選択は非薬物的介入を原則とする姿勢が重要である。

※抗精神病薬を使用する群のほうがプラセボ投与群に比べて死亡率が増加することが報告されている。

環境改善

・落ち着く場所の確保

・服薬調整管理

・課題の工夫

・本人生活ペース確保

・自力可能課題実施      といった対応が症状を改善させた。

※日常生活リズムの確保や嫌がることをしないといった対応により症状が改善した。

 

BPSDの症状の男女比較

男女の違い

男女は脳機能の違いや、性格特性の違いから BPSDの現れ方が異なっている可能性が示唆されている。

男性:女性に比べて攻撃的行動、退行が多くみられる。

女性:男性に比べてうつ症状が多くみられる。

男性において最も多くみられた症状

・易刺激性(54.9%)

・夜間行動(49.0%)

・興奮(45.1%)であった。

女性において最も多くみられた症状

・妄想(61.7%)

・興奮 (56.5%)

・易刺激性(56.5%)

・夜間行動(54.8%)

 

BPSDと性格の関連

男性の性格変化

勤勉性傾向の性格は脱抑制、神経症傾向の性格は易刺激性、協調性傾向の性格は異食を起こしやすいという結果がある。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症では前頭葉の障害が指摘されているが、レビー小体型認知症に限定した研究結果では、勤勉性の病前性格が興奮を起こしやすかったことを報告している。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症を対象に行われた先行研究では、協調性の欠如した性格で焦燥性興奮、易刺激性、アパシーが多くみられたと報告がある。

 

男女別にみた精神疾患の関連性

男性の場合

男性は外向性、勤勉性、開放性傾向の性格はうつ症状を起こしにくい。

うつと性格特性に関連があり、高いニューロチシズム(神経症傾向)、低い外向性、低い誠実性といった性格の人はうつになりやすい。外向性は、社交的、活動的な性格であり、開放性は、好奇心がある、興味が広い性格であるため、うつが少なかったと推察される。

女性の場合

女性は協調性傾向の性格が多く、アパシーが多くみられた。

先行研究では、アルツハイマー型認知症で協調性傾向の性格はアパシーを起こしにくいことが報告されている。協調性は柔軟な、気の良い性格であり、先行研究と同様にアパシーになりにくいことが推察される。

 

文献

原著_TJDCR20002_男女別にみた認知症高齢者の病前性格とBPSDの関連野_2020.0609.indd (jst.go.jp)

 

【介護】運動と認知症の関係~運動しよう~

【介護】運動と認知症の関係~運動しよう~

 

 

 

歩行機能と認知機能

文献

歩行速度が遅く、歩行の空間的・時間的ばらつきが大きい者ほど認知症リスクが高いと言われている。

文献

高齢者の認知機能と歩行機能を調べた研究によると、歩行速度低下は認知機能低下を強く予測する一方で、認知機能低下はそれ以後の歩行機能低下にはあまり関連しなかったという研究があり、歩行機能低下が認知機能低下の前駆症状である可能性を示している。

文献

認知検査の結果から四分位範囲で被験者を分け各集団の歩行速度の変化を調べた研究では、認知検査の得点が低い集団ほどその後の歩行速度の低下が激しいことを明らかにしている。

 

身体活動と認知機能低下

最近では、身体活動の低下は認知機能低下の危険因子と考えられてきており、認知症の発症にも強く関連していることも報告されている。

運動習慣がない者(運動習慣が週1回未満)に比べ、「週に1回以上」の運動習慣がある者では40%ほどアルツハイマー型認知症のリスクが低かったことを明らかにしている。このような身体活動量と認知機能の関連は特定の運動に限定されるわけではなく、家事やちょっとした移動も含めた「1日の総活動量」が重要であることが示唆されている。

※ 1 日の総活動量が多い上位 10%に比べ,下位 10%の集団では5年後の認知症の発症率がおよそ 2~3 倍高い。

 

正常範囲の加齢に伴う認知機能低下認知症の中間症状軽度認知機能障害(以下MCI)という。この MCIは、年間約5~15%が認知症を発症する高認知症リスク群であると考えられている

身体活動量レベルが高い者(スポーツ、ウォーキング、旅行・ 長い距離の外出、ガーデニングの頻度身体活動量レベルを定義)ほど、MCI から認知症に移行するリスクが低い。

※身体活動量が最低レベルの者と最高レベルの物と比べると約60%近くリスクが軽減されるという報告あり。

 

身体活動への介入が認知機能に与える影響

多くの研究で運動介入により認知機能の改善効果があるとの報告がある。そのほとんどはウォーキングを用いたもので、非認知症高齢者と認知症高齢者の両者において認知機能の改善が認められている。

研究では、ウォーキング群に有意な海馬容量の増加も認められており、有酸素運動が中枢神経系の構造変化を引き起こし、認知機能を改善していることを示している。

運動による効果

・認知機能改善効果は有酸素運動に伴う脳血流量の改善。

・運動反応性の神経栄養因子やマイオカインの増加。

・酸化ストレスの低下

・運動を通じた抑うつの予防・軽減

・睡眠の改善

・認知機能低下リスクとなる疾病(高血圧,脳血管疾患,糖尿病など)の予防・症状改善

など、運動が認知機能改善に及ぼす影響とされている。

※ただし、認知機能低下が見られる高齢者や軽度から中等度の認知症高齢者を対象とした介入研究では運動が認知機能改善に及ぼす効果は小さいと結論づけるものが少なくないのも事実であり、運動の認知機能に対する影響は認知機能低下の進行状況が関連している可能性が大きい。

 

アルツハイマー型認知症患者を対象とした治験

認知症症状の改善薬であるドネペジル塩酸塩メマンチン塩酸塩によって認知機能のみならず歩行機能の改善も概ね認められている。

ドネペジル塩酸塩

アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害し、脳内のアセチルコリンを増加させ、アセチルコリン系の神経活動を高める結果、記憶障害をはじめとする認知症の関連症状が改善する。

メマンチン塩酸塩

認知症症状に伴い脳内に過剰に出現する神経伝達物質であるグルタミン酸を抑制し、グルタミン酸神経系の機能の正常化から認知症の関連症状の改善を図る。このような神経伝達システムは運動制御にも影響を与える。

 

 

運動と認知症 桜井良太 バイオフィードバック研究・2022 年・49 巻・第 2 号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbf/49/2/49_59/_pdf

 

【介護】食後低血圧

【介護】食後低血圧

 

 

 

 

食後低血圧とは

食後低血圧とは、食後に血圧が過度に低下する状態。めまい、ふらつき、転倒などの症状がみられる。

食後低血圧は、高齢者では3人に1人という高頻度で起こると言われており、若年者ではほとんどみられない。

特に食後低血圧を起こしやすいのは・・・

①血圧が高い方

②自律神経系を制御している脳の中枢に異常が出る病気がある方

※例として、 パーキンソン病、 多系統萎縮症、 糖尿病などがある。

 

原因

①食後、腸が食物を消化するには大量の血液が必要になり、腸に血液が集まる。

②全身の血圧を維持しようとして心拍数が上昇、腸以外の部分の血管が収縮する。

③しかし、場合によっては、このような仕組みが十分に機能しないことがあり・・・

④血流は正常に腸へ集まるが、血圧を維持できるほど十分に心拍数が上昇せず、血管収縮も起こらないため、その結果、血圧低下が生じてしまう。

 

症状

食後低血圧では、めまい、ふらつき、気が遠くなる、転倒などが起こる。

高齢者で食後にこのような症状がみられた場合は、食前と食後の血圧を測定して、原因が食後低血圧かどうかを確かめる必要があります。食後低血圧の診断には、食前と食後に血圧を測定。

 

治療

食後低血圧の症状がみられる人は・・・

・服薬のタイミングと食事前後の活動の調整。

・食前に降圧薬を服用しない。

・食後は横になって休む。

・降圧薬の服用量を少なくする。

・少量の低炭水化物食を摂取する。

などの対処をすることで食後低血圧の症状を軽減できる可能性がある。場合によって、食後に歩くことで血流が改善しますが、歩くのをやめると血圧が低下する可能性がある。

 

服薬の場合・・・

①非ステロイド系抗炎症薬(NSAID):塩分を体内に保持することにより、血液の量を増加させる。

②カフェイン:血管収縮を促す。朝食前にだけとるようにすれば、眠れなくなることも、カフェインの作用に対して耐性が生じることもない。

③その他:オクトレオチドという薬を注射することで、腸への血流を減らすこともある。

 

日常生活での予防策

①食べすぎない:食べすぎ、とくに炭水化物(ご飯、おこわ、麺類、パン類など)を摂りすぎると、食後低血圧を起こしやすくなるので注意が必要。

②ゆっくり食べる:早く食べることで、腸に血液が集まりやすく、食後低血圧を起こしやすくなってしまう。休憩のため箸を置きながら、ゆっくり時間をかけて食べるように心がける。 

③カフェインをとる:カフェインには血管を収縮させて、食後低血圧を予防する効果がある。コーヒーや緑茶などを食前・食後に飲むとよい。ただし不眠には注意。

④食後にしっかり休息をとる:食後低血圧の疑いがある方は、食後1時間以上はゆっくり休息をとると良い。なお、こうした予防でも症状が改善されない場合には、早めの受診をする。

 

【情報】月経前症候群(PMS)

【情報】月経前症候群(PMS)

 

 

 

月経前症候群とは

月経前症候群(PMS)は、月経が開始する3~10日ほど前から身体的、精神的に現れる不快なさまざまな症状が現れ、これらの症状は月経が開始すると同時に改善するのも特徴な症候群である。

月経のある女性の70~80%は月経前に何らかの不快症状を感じるといわれており、症状の程度は軽度なものから重度と様々で、日常生活に支障を来す場合はPMSと言われる。

 

原因

女性の性周期

女性には25〜38日間の性周期があり、月経の始まりから次の月経までが1つのサイクル。

卵胞期:性周期前半は、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが多く分泌され、卵巣内の卵胞が成熟

排卵 :周期のちょうど14日目頃に成熟した卵胞から卵子が排出。

黄体期:排卵後は妊娠に備えて黄体からもうひとつの女性ホルモンであるプロゲステロンが多く分泌。

二週間ほどして妊娠が成立しなければ、妊娠のために準備された子宮内膜が剥がれ落ちて月経が生じ、次の性周期に移行します。

PMSの原因

PMSの原因不明であるが、女性ホルモンの変化が関与していると考えられる。 黄体期はエストロゲン・プロゲステロンが多く分泌さるが、黄体期後期に入るとホルモンが急激に低下、脳のホルモンや神経伝達物質の変化が生じ、PMSの症状が現れると考えられる。ただし、脳のホルモンや神経伝達物質は女性ホルモンだけでなく、ストレスなどの影響を受ける。そのため、女性ホルモンの変動だけが原因ではなく、さまざまな要因が関わっていると考えられる。

 

症状

PMSは身体症状と精神症状があり、これらの症状は、月経の3~10日ほど前から始まり、月経の開始とともに改善傾向と向かう。

身体症状

下腹部痛、頭痛、腰痛、乳房痛など

自律神経失調症状

動悸、悪心、めまい、脚のむくみや体重増加など

精神症状

イライラ感、抑うつ、不安・緊張感、易疲労感、不眠、無気力、判断力の低下など

その他

重症なケースでは、イライラ感や怒りが強くなって他者を無意識に罵倒したり、攻撃したりすることも。

 

検査・診断

PMSを診断するうえで重要なものは詳細な問診。問診では症状や発症時期、月経周期、妊娠・出産歴、生活環境などさまざまな項目をチェックする。また、子宮や卵巣などに異常がないか超音波検査が行うこともある。

重症なケースでは、うつ病などの他の精神疾患との鑑別を行うために、精神科や心療内科などの受診も必要になることもある。

 

治療

セルフモニタリング

基礎体温測定に合わせて、気になる不快症状についてセルフチェック。症状の内容や程度を細かく記載するだけでなく、その日の出来事や食事の内容などを確認することで自身の体調変化のパターンを知る。

生活習慣改善

十分や睡眠、適度な運動、バランスの良い食事によって、症状の改善を図る。月経前にむくみや頭痛が気になる方は塩分の取り過ぎに注意(スナック菓子やインスタント食品など)。

低用量ピル

排卵を抑え、ホルモンの値を一定に保つ事で、月経前の不快症状が改善する場合があり、PMSの治療目的でよく使用される。

抗うつ剤

PMSの中でも、イライラや憂うつ、不眠などの精神症状が強く出る場合がある。月経周期に合わせてくり返される抑うつ状態ともいえる。何らかの強いストレスが引き金とまることが多く、排卵から月経前の期間に合わせて、抗うつ剤や精神安定剤の内服が必要な場合もある。

アロマセラピー

原因のひとつであるストレスをセルフケアする方法で、アロマセラピーも進められている。

イライラや落ち込みのある人:ベルガモットやネロリ、グレープフルーツ、オレンジなどの柑橘類オイル。

女性ホルモンバランスの崩れ:クラリセージ、ローズ、ゼラニウムなどのあるオイル。

不眠:リラックス効果のあるラベンダー。  などがある。

 

 

 

【介護】アリセプト(ドネペジル)とは

【介護】アリセプト(ドネペジル)とは

 

 

アリセプトとは

アリセプト(ドネペジル)はアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の症状進行を抑制する薬である。認知症治療薬の中でも古くから使用されている薬である。

 

アリセプトの種類・剤型

①口腔内崩壊錠(OD錠)

少量の水分で溶けるように設計された薬。口の中に入れると唾液で瞬時に溶けるため、水なしで飲むことができる。飲み込む力の弱い方によい。

②ゼリー剤

カップに入った一口サイズのゼリー状の製剤。食事でのムセなど飲み込む力が弱い人に適している。

ドライシロップ

粉末を水に溶かして液体として飲むことができ、粉末のまま飲むこともできる。

 

各疾患の用法・用量

アルツハイマー型認知症

開始用量の3mgから開始する。少量の開始理由は、副作用の出現の有無を見極めるためと、薬を内服することで起きる神経伝達物質の変化に身体を慣らすため。また、脳の活性化を促す薬であるため、昼夜のリズムを作っていく目的で朝に処方されることも多い。薬がの半減期が長いため飲む時間による血中濃度への影響は少ないとされている。

レビー小体型認知症

臨床試験の結果レビー小体型認知症に有効であることが確認され、2014年よりレビー小体型認知症への適応が拡大された。

 

アリセプトの効果・作用機序

脳は神経伝達物質を介して記憶・学習を行なっている。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では神経伝達物質の1つであるアセチルコリンが脳内において減少していることがわかっている。

脳内にはアセチルコリンを分解する役割を持つ酵素であるアセチルコリンエステラーゼがあり、アリセプトはこのアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内でのアセチルコリンの濃度を高め神経伝達を助ける働きがある。

 

アリセプトの副作用について

飲み忘れた場合は、基本的には気が付いた時に服用。

※ただし、いつも飲む時よりも12時間以上離れていたときは、次の日から通常通りに飲む。

この薬は半減期が長いため、1日飲まなくても影響は少ないです。飲んだかどうかわからなくなってしまった場合は、誤って重複して飲むことを避けるためにその日はそれ以上飲まずに翌日から内服を再開する。

 

代表的な副作用

多い副作用として、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状がある。

消化器症状

消化管における神経伝達物質の変化により生じると考えられており、多くは内服が開始後および増量後に出現。多くは様子をみているうちに体が慣れてきて自然に軽快すること多い。

症状が強い場合は、整腸剤や吐き気止めなどを併用し継続できるが、内服の継続有無は主治医の判断や副作用の程度で判断する(重度の場合には基本的に中止または減量)。

精神症状

興奮やイライラ感、落ち着きのなさなどが出現することがある。これは脳内のアセチルコリンが増加することにより、神経細胞が刺激されて生じるものと考えられている。投与開始や増量に伴い生じた場合は慣れてくるに従い自然に軽快することもある。

徐脈・不整脈

心臓の病気をお持ちの方は内服にあたり注意が必要。

パーキンソニズム

アリセプトにより脳内のアセチルコリンとドパミンのバランスが崩れ、パーキンソニズムの悪化・出現を招く可能性が指摘されている。

 

アリセプトの特長

認知症の周辺症状(BPSD)の中でも、意欲低下、無関心、抑うつといった症状への改善効果が報告されている。また、2015年にレビー小体型認知症に適応の薬となっている。

コリンエステラーゼ阻害薬の中で、唯一高度のアルツハイマー型認知症に適応のある薬。軽度から高度まで適応があるため、途切れのない治療を行うことができる。1日1回の内服で済むため、飲み忘れの防止や本人・介護者の負担軽減になる。

 

 

【介護】ぎっくり腰~急に動けなくなるのキツイです~

【介護】ぎっくり腰~急に動けなくなるのキツイです~

 

 

ぎっくり腰(急性腰痛)とは

急性腰痛症は、腰痛が発症してから4週間以内のものを指します。一般に“ぎっくり腰”と呼ばれている状態はこれに含まれ、重いものを持ち上げたときや腰をひねったりしたときなどに突然起こります。強い痛みを生じることが多く、欧米ではその激しい痛みから「魔女の一撃」と呼ばれることもあります。痛みの原因は、主に腰の関節やその周りの筋肉や靱帯にあると考えられていますが、原因がはっきりとしないこともあります。

 

原因

急性腰痛症の痛みの原因はさまざまで、原因がはっきりしない場合が多いようです。

原因の1つとして・・・

・身体の機能低下(姿勢、習慣、過緊張、筋力、柔軟性低下)

・ストレスや環境、季節要因に

・老化

・無理な力がかかることなどによる腰の関節のズレ、椎間板の損傷、腰の筋肉や腱、靱帯の損傷 など

が原因として多いと考えられています。

そのほか、特別な病気として椎間板ヘルニア、脊椎分離症、すべり症、腰部脊柱管狭窄症などが原因となっていることもあります。また、ときに圧迫骨折やがんによる背骨の病的骨折、感染症による背骨や椎間板の化膿などが原因となって腰痛を引き起こす場合があるため、病院での診断を受けることが重要です。

 

症状

・腰に強い痛みが生じ、腰を前後に曲げることが難しくなる。

・症状が重い場合は痛みで動けなくなることがあり、臀部や下肢に放散するような痛みやしびれを伴う場合もある。

・起き上がる時や咳・くしゃみをしたときなどに生じることもある。

・痛みは1日以上続き、1か月以内に治まる場合を急性腰痛症と呼ぶ。

※安静にしていると痛みは和らぎますが、過度な運動制限は筋力低下を招き腰痛を悪化させる可能性があるため注意が必要。

 

検査・診断

診断で重要となるのは問診・身体診察と画像診断になります。

診断では、まず問診と身体検査によって、痛みの範囲、悪性度、慢性化の可能性、進行性かどうかなどを注意深く評価し、腫瘍や感染症、骨折などの重要な病気が隠れている可能性も。

腰椎の状態を調べるために、画像診断(X線検査で、より詳しい情報を得るために、MRI検査やCT検査)が行われることもあります。

他にも、血液検査、尿検査、骨密度検査、筋電図検査、骨シンチグラフィー検査、PET検査などが行われる場合もあります。

 

治療

急性腰痛症は安静にしていると数日から数週間で自然に治ることもありますが、痛みを軽減させるために、薬物療法、神経ブロック療法、装具療法などが行なわれます。

薬物療法

腰の痛みや炎症に対しては通常、非ステロイド系抗炎症薬が処方されます。痛みによる筋肉の緊張や精神的な緊張を和らげる目的で筋弛緩薬や抗不安薬を使用することもあります。また、心因性の腰痛が疑われる場合は、抗うつ剤などの薬剤が用いられることもあります。

神経ブロック療法

脊髄を囲む硬膜と骨の間の空間に局所麻酔薬を注射し、一部の神経を遮断(ブロック)することで痛みを軽減する方法。痛みを感じる神経のブロックと、運動神経や交感神経の遮断で筋肉が緩み血行がよくなる効果によって腰痛が緩和されることが期待できます。

装具療法

コルセットなどを用いて痛みの出ている部分を安静に保つことで、痛みの軽減や早期の回復を目指す。

急性腰痛では、安静を続けるよりも無理のない範囲で日常生活を維持したほうが早く回復するという報告もあり、どの程度運動を制限すべきかについては医師との相談が必要となります。

 

予防

機能改善

体幹トレーニングなどで体幹の安定性を高める

ストレッチなどで股関節や大腿部の柔軟性を高める

様々な運動、動作をおこない、共同運動パターンを増やす

トレーニングで猫背、反り腰、受け腰といった脊柱のアライメントを修正する

習慣改善

一日中、同じ姿勢、同じ動作にならないように体操を取り入れる

心理的なストレスを解消する

運動習慣を作る

入浴やストレッチなど日ごろのケアを行う

 

 

 

【介護】高齢者への転倒予防~フットマッサージは効果はあるのか~  

【介護】高齢者への転倒予防~フットマッサージは効果はあるのか~

 

 

 

●高齢者の転倒予防の必要性

高齢者の転倒・転落による骨折などの外傷は、要介護状態の悪化を加速させQOL の著しい低下をもたらす。また、介護予防で重要視される転倒予防は、特に立位歩行能力の維持・向上が重要になる。

転倒予防に関する先行研究で・・・

  • 介護予防の必要な在宅高齢者の90%以上が足に何らかの悪影響があり、立位バランスの低下が転倒経験に繋がっており、在宅高齢者の多くが立位バランス能力向上に向けたフットケアを必要。
  • 足底部の皮膚感覚受容器からの情報入力が立位バランス能力と関連が深い。
  • 足趾機能が立位バランス能力や移動能力に及ぼす要因であることが報告されている。

 

●高齢者の転倒原因

①高齢者は加齢に伴う姿勢の変化や身体的な衰え。

②過去に転倒歴がある者は再転倒のリスクが高くなる。

③杖やシルバーカーの使用者は使用しない者と比べ転倒リスクが2 倍になる。

④対象者は複数の病歴を抱えている。

⑤5種類以上の多剤服用がある。

※薬剤数が5 種類以上の服薬は転倒のリスクが服薬のないものに比べ4.5 倍と示されている。

※降圧剤による起立性低血圧や睡眠薬によるふらつきなどが易転倒を誘発することが考えられる。

 

●足のマッサージ効果

①足底感覚の変化

足のマッサージにより感覚閾値の低下及び正常の状態にまで改善が見られた。それは、立位バランス能力において感覚受容器が集中している左右の拇指の感覚閾値低下が多く見られたが、触覚正常に改善したこと、②足のマッサージによる皮膚への刺激で残された感覚受容器の感受性が賦活化され、感覚伝達入力が高まったことが閾値の正常化を図る事は出来た

②足趾筋の変化

加齢に伴い足趾把持力が大きく低下する。加齢による足趾力の低下は足趾体操で改善されることが多く、特に足趾把持力は姿勢保持や前傾姿勢の安定性を保つために必要とされる。それを改善すれば地面を掴むような足趾の動作が転倒回避に役立つ可能性が考えられる。また、要介護高齢女性の足部は柔軟性が高いほど足把持力が強いことが明らかにされている。足のマッサージによる揉みほぐしが皮膚や筋肉の柔軟性を高め、足趾把持力の向上に寄与したのではないかと考える。

③足部機能の変化

足のマッサージによる足部機能に及ぼす効果が立位バランスの改善に繋がっている。足趾訓練は、足の握力が改善するだけでなく、感覚受容器の賦活を促し、静的立位バランスを改善させるという報告もある。高齢者にフットマッサージを実施することで、足部機能の向上(特に立位バランスと足握力)の改善につながることがわかった。

④精神的な変化

足のマッサージには、ストレス軽減効果があることが分かってきている。また、マッサージにより意欲的な意見もあり、マッサージ中のコミュニケーションやタッチングによる効果も考えられ、高齢者の自立した生活の維持や意欲向上にも繋がる。

 

引用文献

日本看護科学会誌 J. Jpn. Acad. Nurs. Sci., Vol. 41, pp. 520–526, 2021

介護予防の必要な在宅高齢者への転倒予防支援~フットマッサージが足部機能に及ぼす効果の検討~