【リハビリ】感覚と感覚障害
感覚の分類
体性感覚は,① 表在感覚(痛覚・冷覚・触覚)、② 深部感覚(振動覚・関節位置覚)、③ 皮質感覚の 3 種類に分類される。
感覚障害の種類
感覚障害の分類には様々ある。
感覚障害は、感覚低下・錯感覚・異常感覚・感覚過敏・疼痛、の5 種類に大別される。錯感覚 (paresthesia) は異なった感覚として認識される感覚で、触覚を痛み・ぴりぴり感として感じることが多い。
異常感覚(dysesthesia) はしびれ・じんじん・ぴりぴりなどが自発的にみられる感覚。
疼痛は、① 放散痛、② 視床痛、③ 有痛性強直性けいれん、の3 種類に分類される.根性疼痛は放散痛に含まれ,神経根圧迫により神経の走行に沿って疼痛が生じる。
感覚障害の診断
感覚障害の診断で重要なことは、障害部位によって感覚障害の分布が異なることである。
単一神経の障害(mononeuropathy)
障害された単一の末梢神経の症状が出現する。障害された神経が1 本であれば単神経炎、複数であれば多発単神経炎と呼ばれる。
単神経炎:上肢では正中神経麻痺(猿手)、尺骨神経麻痺(鷲手)、橈骨神経麻痺(下垂手)、下肢では腓骨神経麻痺(垂れ足)が代表的。
多発単神経炎:血管炎とサルコイドーシス。脳神経系では三叉神経痛が代表的。
多発神経障害(polyneuropathy)
感覚障害が左右対称性に四肢遠位部にみられ(手袋靴下型)、深部感覚・表在感覚のいずれもが障害され、遠位部の運動麻痺や腱反射低下を伴うことがある。
原因:糖尿病、薬剤や中毒(アルコール)
実例:糖尿病性多発神経障害では異常感覚が多くみられ、しびれや灼熱感・足の違和感がみられる。
神経障害が高度になると、感覚は低下して糖尿病性壊疽に陥ることがあるので注意。
神経根の障害(radiculopathy)
神経根に支配される皮膚分節に一致する感覚障害が出現することが特徴。
放散痛がみられることが多く、障害された神経根に対応する領域に強い痛みがみられる。前根も障害されると、支配筋の萎縮と麻痺が生じる。
原因疾患:脊椎疾患で,変形性脊椎症・椎間板ヘルニア・後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症が代表的。
脊髄障害(myelopathy)
髄節以下の感覚障害が生じる。横断性を除いて解離性感覚障害がみられる。
原因疾患:脊髄梗塞・脊髄炎・多発性硬化症・腫瘍がある。
①横断性障害
障害髄節部(sensory level) 以下に両側性の全感覚障害がみられる.sensory level 直上に感覚過敏領域がみられることがある.対麻痺や膀胱障害を伴う.原因では外傷・脱髄・炎症(図 2A)がある.
②半側障害(Brown-Séquard 症候群)
脊髄が半側性に障害された時にみられる症候である。
表在感覚:情報は後根から脊髄に入り、そのレベルで交叉。
深部感覚:髄内ではすぐには交叉せず,同側を上行して延髄レベルで交叉。
このため脊髄半側の障害では、病巣側の麻痺と深部感覚障害・反対側の表在感覚障害がみられる。病変部髄節の全感覚障害を伴うことがある。
③前脊髄動脈症候群
前脊髄動脈の虚血により両側性に前索・側索が障害される。
障害:皮質脊髄路や外側脊髄視床路が障害され、対麻痺・表在感覚障害が生じ、膀胱障害を伴う。
④後脊髄動脈症候群
後脊髄動脈の虚血により両側性に後索が障害される。
障害:深部感覚が障害
原因:ビタミンB12 欠乏(亜急性脊髄連合変性症)が代表的。この疾患では多発性末梢神経障害を併発することが特徴。
⑤脊髄中心部症候群
脊髄の中心部が障害される疾患として、脊髄空洞症と脊髄腫瘍がある。
脊髄空洞症:下部頸髄から上部胸髄に生じることが多く、感覚障害としては宙吊り型の表在感覚障害が代表的であるが、実際には表在感覚障害は顔面を含む片側性にみられることが多い。
脊髄腫瘍:髄内腫瘍によって仙骨部回避(sacral sparing) がみられることがある。
⑥サドル状感覚障害
脊髄円錐部(conus medullaris) や馬尾の病変では、肛門周囲に限局した表在感覚障害がみられる。
脳幹障害
延髄外側症候群が代表的疾患。
障害:表在感覚障害が病巣側顔面と健側の上下肢体幹にみられ、解離性の感覚障害が交代性に出現することが特徴である。
視床の障害
視床の小梗塞によって対側半身の感覚が低下する(pure sensory stroke)。
刺激で焼け付くような痛み(hyperpathia) が出現。感覚障害が半側口周囲と上肢末梢に限局することがあり、これは手掌口症候群(cheiro-oral syndrome) と呼ばれる。
慢性期では視床痛があり、中枢性脳卒中後疼痛の一つである。痛みや感覚過敏、灼熱感などの異常感覚が自発的に継続してみられる。