OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

アルツハイマー型認知症と前頭側頭型認知症におけるBPSDの有病率と自然史 

アルツハイマー型認知症(AD)と前頭側頭型認知症(bvFTD)におけるBPSD(行動・心理症状)の有病率と自然史 

 

 

 

 

ADとbvFTDにおけるBPSDの特徴と経過

認知症には記憶障害や見当識障害などの「認知機能の低下」に加えて、BPSD(行動・心理症状)と呼ばれる様々な精神的・行動的な症状が高頻度でみられます。BPSDには、アパシー(無関心)、抑うつ、不安、妄想、幻覚、脱抑制、暴言・暴力、徘徊、異常な食行動などが含まれ、患者本人だけでなく家族や介護者にとっても大きな負担となります。

この研究では、イタリア南部の神経遺伝センターで診断された、前頭側頭型認知症(bvFTD)674名とアルツハイマー型認知症(AD)1925名を対象に、BPSDの発症頻度(有病率)と経過(自然史)を比較しました。

 

BPSDはほぼすべての患者にみられる

調査の結果、BPSDはADの90.8%、bvFTDの96.4%の患者に認められ、非常に高頻度にみられることがわかりました。特に多かった症状は、アパシー(無関心)、感情の不安定さ、興奮・攻撃性で、これは両群に共通していました。

ただし、bvFTDの方がADよりもBPSDの出現頻度や重症度が高い傾向にありました。特に以下の症状はbvFTDで有意に多くみられました:

* 妄想

* 脱抑制(衝動的な言動)

* 異常運動(常同行動など)

* 摂食行動の変化(過食、甘い物への嗜好)

* 徘徊

 

BPSDの出現時期にも違いがある

BPSDは、認知症の進行とともにさまざまな症状が現れてくるため、いつ、どの症状が出るか(自然史)を知ることは診断や介護にとって重要です。

 

この研究では、症状の出現時期を3つの段階に分けて調べました

  1. Pre-T0(発症前)
  2. T0(発症から5年以内)
  3. T1(発症から5年以上)

 

その結果、抑うつや不安などの気分症状は、認知症の発症前からみられることが多いとわかりました。例えば、bvFTDではうつ症状が発症の約0.5年前、ADでは発症の約1年後に多くみられました。これは、気分症状が認知症の“初期サイン”になる可能性があることを示唆しています。

また、異常運動や徘徊などの行動症状は、病気が進行したT1期に多く出現する傾向がありました。これにより、症状の時間的なパターンを把握することが可能となります。

 

ADとbvFTDの違いは「量」の差が中心

興味深いのは、ADとbvFTDでみられるBPSDの「種類」はほぼ共通していたという点です。違いは主に「どの症状がどれくらい多く出るか」という頻度や重症度の違い(量的な差)でした。つまり、bvFTDの方が早く、多く、重くBPSDが出る傾向があるということです。

一方で、妄想や幻覚などの精神病的な症状も一定数認められましたが、これらは診断基準には含まれていないため、臨床では見落とされることがあります。特にbvFTDでは、こうした症状が精神疾患と誤診されるリスクもあるため、注意が必要です。

 

認知症早期発見へのヒント

今回の研究で明らかになったのは、BPSDは認知症の初期から現れ、病型や時期によって特徴があるということです。特にうつや不安は、「加齢のせい」と見過ごされやすいため、家族や医療者が早期に気づくことが重要です。

また、bvFTDの患者は医療機関を受診するまでの期間(ETOV)が平均4.6年と、AD(3.7年)より長くなっており、早期発見の難しさが示されています。

 

まとめ

BPSDは認知症患者の90%以上に出現し、アパシー、感情不安定、攻撃性が最も多い。

bvFTDではBPSDがより多く・重く現れやすい。

抑うつや不安は発症前から出現することもあり、初期サインとして重要。

BPSDの出現には時間的なパターン(自然史)があり、進行とともに異なる症状が出てくる。

ADとbvFTDでみられるBPSDの種類は共通だが、頻度と重症度に差がある。

早期発見・適切な介入のために、BPSDの理解と観察が不可欠。