【文献】最新の文献・研究を読んでみた⑥
- うつ病、不安症患者さんに対する マインドフルネス瞑想を組み込んだ作業療法の効果を検証
- 肥満がインスリン分泌細胞の機能を低下させる仕組みを解明
- 加齢で神経細胞の形が変化し、それが統合失調症では逆方向であることを発見 ~脳の老化と、統合失調症との関係~
うつ病、不安症患者さんに対する マインドフルネス瞑想を組み込んだ作業療法の効果を検証
ポイント
マインドフルネス瞑想を組み込んだ作業療法プログラムについての初めてのランダム化比較試験
本プログラムが上記患者さんのパーソナルリカバリーに寄与する可能性が示唆された
社会的・職業的機能の改善が難しい患者さんに対して、有効な治療の選択肢となる可能性
研究の成果
本研究は、マインドフルネス瞑想を組み込んだ作業療法プログラムについての初めてのランダム化比較試験であり、うつ病と不安症のパーソナルリカバリーの改善にそのプログラムの有用性が示されました。また、その効果は定量脳波解析によっても裏付けられました。薬物療法などの生物学的治療だけでは十分なパーソナルリカバリーに至らない患者さんにとって、マインドフルネス瞑想を組み込んだ作業療法プログラムは、プログラムのアクセシビリティの観点も含めて、念頭に置くべき選択肢の一つになると考えられます。
用語説明
1:マインドフルネス
第3世代の認知行動療法と呼ばれることもある、「今、ここ」に注意を向け価値判断せず、あるがままを受け入れる姿勢を養う。
2:パーソナルリカバリー
病気や障害を受容し新たな人生の意味や目的を見出し充実した生活を送る過程
肥満がインスリン分泌細胞の機能を低下させる仕組みを解明
ポイント
本研究グループは、従来から、 代謝産物の質や量を感知するセンサー分子 “CtBP2 タンパク質”の肥満や代謝での役割に注目。
今回、肥満によって膵β細胞に生じる酸化ストレスによってCtBP2 タンパク質が壊されてしまうこと、それによって膵β細胞の機能が維持できなくなり、 インスリン分泌低下や糖尿病をもたらすこと、を明らかに。
本研究成果は、これまでの研究と合わせて、 CtBP2 が肥満で機能しなくなることが、 メタボリックシンドロームの発症やその病態に重要な役割を果たしていることを示しており、 肥満に関連する疾患治療への応用が期待される。
研究ポイント
さまざまな肥満モデルマウスにおいて、膵β細胞での CtBP2 は顕著に低下しており、ヒトの肥満者(脳死ドナーの検体) でも CBP2 発現量が低下していることが観察された。
膵β細胞は酸化ストレスの消去能が他の細胞に比して弱いことが知られており、肥満によって生じる酸化ストレスによってCtBP2 はユビキチン修飾を受け分解されるために、発現量が低下するという仕組みが明らかになった。さらに、膵β細胞特異的に CtBP2 遺伝子を欠損させたマウスでは、 胎生期から欠損させても生後に欠損させてもインスリン分泌低下型の糖尿病を示した。
以上のことから、長期の肥満経過における膵β細胞機能低下および糖尿病の発症のプロセスは、 ① 肥満によってCtBP2量が低下する、②インスリン分泌が低下する、③糖尿病を発症する、 という CtBP2 を中心とした分子メカニズムで説明できると考えられる。
加齢で神経細胞の形が変化し、それが統合失調症では逆方向であることを発見 ~脳の老化と、統合失調症との関係~
ポイント
ヒト脳の神経細胞の3D構造を、日米の放射光施設でナノCT法により解析。
神経突起の曲がり方(曲率)が、健康な場合は加齢により変化していた。
一方で統合失調症では、そこから大きく逸脱し、加齢とは逆方向の変化を示した。
神経突起の曲率は統合失調症で60%高く、幻聴スコアと強い相関を示した。
神経突起を太くまっすぐにすることで、精神症状を改善できる可能性がある。
記事:https://research-er.jp/search