OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【文献】最新の文献・研究を読んでみた③

【文献】最新の文献・研究を読んでみた③

 

「本を読みながら考えことをする男性」の写真[モデル:大川竜弥]

 

 

統合失調症の社会機能障害に関わる脳内ネットワークの異常が明らかに!-視聴覚統合に関わる機能的結合が統合失調症者で低下していることを発見-

統合失調症において、左半球の外側溝後枝や右半球の紡錘状回といった視聴覚を統合する脳内ネットワークの活動に異常が見られることを発見

声や顔の視聴覚統合に関わる脳内ネットワークの異常と、統合失調症者の抱える陰性症状を背景とした社会機能障が強く関連していることを見出した。

※外側溝後枝:別名シルビウス溝(外側溝)。機能的言語ネットワークに関与。

※紡錘状回:側頭葉の脳回。紡錘状回は後頭側頭回と呼ばれることもある。視覚や聴覚などの認知機能や記憶の中枢。 側頭葉に特異的な主な機能は、聴覚情報処理・意味処理・記憶に関連する処理を行う。

 

 

亜急性期脳卒中患者における両半球への経頭蓋直流刺激が上肢機能に及ぼす影響:症例研究~ニューロリハビリテーション研究センター

本研究のポイント

上肢遠位に重度運動麻痺を有する脳卒中者1名を対象に、両側の一次運動野への経頭蓋直流電気刺激(tDCSを)併用したトレーニングを実施。

両側の一次運動野へのtDCSでは、筋活動や皮質脊髄路の興奮性を高め、過剰な同時収縮も抑制された。

両側の一次運動野へのtDCSを併用した上肢機能訓練を行うことで、運動学的及び神経学的に良好な変化をもたらすことが示唆された。

 

足の健康度は転倒リスクの高い患者における入院中の転倒発生を予測する ~下肢筋力、バランス能力、歩行能力の総合的な下肢機能評価が重要~

ポイント

・転倒発生数が多い病棟に入院した患者において、下肢機能低下は入院中の転倒発生リスクを上昇する要因であった。

・下肢機能が正常な患者と比較して、下肢機能低下が重度な患者の転倒リスクは 8.8 倍であった。

・下肢機能を客観的に評価することは、転倒リスクの高い患者の入院後経過の予測に重要である。

 

5年以内のフレイル発生リスクが40%低減! “要支援”高齢者の通所系サービス利用効果を実証

ポイント

・“要支援”の新規認定者に特化した調査を実施。

通所系サービスの利用によりフレイル発生リスクが40%低減したことが明らかに

・フレイルは健常状態に戻る可能性があり、適切な支援等が重要。

期待される効果・今後の展開

本研究では、要支援高齢者が通所系サービスを利用することにより、フレイル発生リスクの低減効果があることを明らかに。これは、高齢者が要支援 1 または要支援 2 と認定された時点で、通所系サービスや通所系サービスに相当する外出を高齢者に勧めることが大切であることを示唆している。感染予防対策とバランスをとりながら、高齢者の通所や外出を促す環境づくりや高齢者・家族への適切な意識づくりを働きかけていくことが重要。

 

 

作業療法で用いられている集団作業の効果を実証 ~2人で場を共有して個人作業をすると緊張が緩和~

ポイント

・作業療法で用いられている集団や手工芸活動などの治療効果を、脳波による「集中」の指標と心電図による「自律神経活動」の指標で分析。

2 人で場を共有した各自の手工芸活動時に、副交感神経が有意に高まることが明らかに

・2 人(各自の作業/非作業者は観察者)の手工芸活動時、Fmθの脳波出現者は副交感神経活動が有意に高まることが明らかに。

※Fmθ:特異な脳波活動。前頭正中部に数秒程度連続するθ波(徐波の一種)。特異なのは、徐波なのに正常脳波であることと、注意集中で誘発されること。

期待される効果・今後の展開

作業療法において並行条件を設定することはリラックスの観点で有効である可能性を示した。

臨床現場において緊張や不安が強い対象者への作業療法では、並行条件を設定することがそれらの軽減に効果を有する可能性を示唆。

今後は精神疾患を有する方を対象として、また 3人以上の集団での実験など、集団で作業療法を実施することの効果をさらに検討し、対象者の特性に応じた手工芸や集団の提供方法を具体化していく。

 

日本の研究:https://research-er.jp/