【文献】最新の文献・研究を読んでみた①
- 動作中に手で触れる物の感覚を感じにくいのはなぜか?の仕組みを解明
- 歩行に重要な“足首を素早く動かす能力”加齢と性別による能力の変化を検証
- 歯の本数・噛みにくさ・口の渇きは体重減少・増加に影響する ~歯が9本以下の人では体重減少が1.17倍、体重増加が1.23倍起こりやすい~
動作中に手で触れる物の感覚を感じにくいのはなぜか?の仕組みを解明
研究で分かったこと
本研究によって、皮膚など末梢感覚センサーからの感覚信号は、感覚信号の入力部(延髄楔状束核)において、運動開始前から予測的に調整されており、この調整は脳が事前に感覚信号に対するシグナルを出すことで行われていることが明らかとなった。
体への影響
このことにより、高次脳領域では感覚情報処理にかかる負担が軽減され、“柔らかさ”や“なめらかさ”などより複雑な触感覚の認識を可能にしていると考えられる。
また、このメカニズムは、健康な動物の感覚情報処理様式を示すとともに、様々な疾患による感覚運動異常を共通して説明しうる。特に、自動運動時と他動運動時とで感覚入力信号に対する調整様式の違いは、自己と他者の運動区別に関わっていること考えられる。
期待されること
今後は、統合失調症などにおける自他混同などの病態の背景として、楔状束核の機能異常に着目した新たな治療法の開発が期待される。
歩行に重要な“足首を素早く動かす能力”加齢と性別による能力の変化を検証
ポイント
・歩行に重要な要素として足関節底屈運動速度(足首を素早く動かす能力)が注目。
・加齢とともに底屈運動速度は約 26%低下するが、男女間では差がないことが明らかに。
・運動速度は、加齢だけでなく男女間でも差がある筋力とは別の指標として考える必要。
研究で分かったこと
本研究により、歩行速度に大きく関わる機能の一つの「運動速度」が、「筋力」とは独立した機能であることが示された。
本結果から、効果的に歩行速度を改善するためには、筋力だけではなく運動速度の向上にも焦点を当てたトレーニングが必要であると考えられる。
期待されること
本研究で示された足関節底屈運動速度の加齢変化や性差に関する基本的な情報は、今後効果的な介入方法を検討する上で有用な知見になると期待。研究グループでは、底屈運動速度の向上を目標にした運動機器の開発や実証実験を進め、効果的な運動速度トレーニングの実用化を目指している。
歯の本数・噛みにくさ・口の渇きは体重減少・増加に影響する ~歯が9本以下の人では体重減少が1.17倍、体重増加が1.23倍起こりやすい~
研究で分かったこと
口腔機能低下(少ない歯の本数、咀嚼困難、口腔乾燥)が体重減少だけでなく体重増加にも影響を及ぼす可能性があることが明らかになった。
歯の喪失や咀嚼困難、口の渇きは高齢者において有病割合の高い口腔の健康問題であり、食事摂取量に直接影響しやすい要因。歯の喪失・咀嚼困難にはブリッジや入れ歯等の歯科治療を実施すること、口の渇きには唾液腺マッサージ等の口腔リハビリテーションを実施することにより、口腔機能の改善、さらには食事内容や食事摂取量の維持・改善が期待。その結果、体重減少・増加を予防し、全身の健康問題を防止することにつながる。
日本の研究:https://research-er.jp/