【感染症】ブルセラ症
中国西部の甘粛省 蘭州にある製薬工場の不注意により「ブルセラ菌」が流出し、6000人を越える感染者が発生。
というニュースが流れました。
初めて聞く感染症だったので調べてみました。
●ブルセラ病とは
ブルセラ症とは、ブルセラ菌によって感染することで引き起こされる感染症。
ブルセラ症を引き起こす病原体は、人だけでなくペットの犬や家畜として飼われる牛、豚、ヤギ、また野生動物においても感染する。
・ブルセラ症は日本においては法律上では4類感染症に指定。発生数を全数把握することが求められる。
・日本国内では発症報告は少ない。
・世界では地中海周辺地域を中心とした地域で食事等を通じて感染することもまれではない。
・屠殺場や食肉加工場にて働く方や、野生動物のハンターなども病原体に曝されるリスクが高い。
・妊娠中の女性が感染すると胎児にも重篤な影響が生じる。
・ペット間で集団感染を示すこともあるため、動向に注意。
●ブルセラ病の原因
ブルセラ症は、ブルセラ菌に感染することを原因として発症する病気。
ブルセラ菌は100個以下の菌数でも感染するという感染力の強い菌。
日本では家畜によるブルセラ症はほぼ撲滅、現在でも犬の感染(Brucella canis感染)がみられ、人にも感染。
犬の2~3%がキャリアであると言われている。
ブルセラ菌は犬や牛、豚、ヤギやヒツジのほか、アザラシの中にも潜んでいることがある。
ブルセラ菌は、野生動物のみではなく、ペットや家畜として飼われている動物中に潜むことも。
ブルセラ菌は、さまざまな状況において人へと感染が広がる可能性を秘め、ブルセラ菌に感染した動物からの乳や乳製品を人が摂取することでヒトに感染、発症することもあります。
屠殺場や食品加工場などで働いている方、野生の豚やパイソンなどを狩るハンターも感染リスクは高いといえます。
●ブルセラ病の症状
ブルセラ症は病原体に感染しから、1〜3週間ほどの潜伏期間(ときに半年近く)を経て発症。
発症すると、発熱、筋肉痛、全身倦怠感、頭痛、食欲不振などの症状が出るようになります。
急性期の発熱は高く、時間経過を経ても微熱が残ることもあります。
その他に、関節炎、精巣炎及び続発症としての不妊症、心内膜炎、神経症状、貧血、慢性疲労、うつ、肝臓や脾臓の腫大などの多様な病態を引き起こす。
軽症の場合には数週間から数ヶ月の経過で自然治癒することもある。
重症化すると、心内膜炎が重篤化して死に至ることも。
ブルセラ菌が妊娠中の女性に感染すると、流産や死産、早産など胎児に重篤な健康被害が生じるため注意が必要。
●検査・診断
ブルセラ症の診断は、病原体を分離・同定することによる検出、抗原抗体反応検査、PCRによる病原体遺伝子の検出によってなされます。
用いられる検体としては、血液、骨髄、リンパ節など。
ブルセラ菌を実際に同定する検査はどの施設でもできるわけではなく、検体を扱う基準を満たした施設(Biosafety Level 3基準)にて行われる。
●ブルセラ病の治療
ブルセラ症の治療には、抗生物質が使用。
また、どの臓器に病変が生じているのかに応じて、使用薬の選定や治療期間などが決定されます。
ブルセラ症では実用可能な予防接種は無し。
<予防>
調理が不十分な肉の摂取を避ける。
殺菌処理が行き届いていないミルクやチーズなどの乳製品の摂取を避ける。
病原体に汚染された動物と接する可能性がある場合は、手袋やゴーグル、ガウンやエプロンなどを着用し、物理的な接触を避けることが有効。