【介護】腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、腰椎の脊柱管が狭小化することで、馬尾神経や神経根を圧迫して発症する疾患です。
初めは腰痛から始まり、症状が重くなると主に下肢に症状が出てくるため、生活に支障ををきたすようなります。
●腰部脊柱管狭窄症とは
脊椎の特徴
①脊柱管内は、第1~2腰椎レベルで脊髄が終わる。
②そこから下位腰椎レベルでは馬尾神経となる。
③椎間板では、前方を椎間板の線維輪、後側方を椎間関節と関節包、後方を黄色靭帯で形成。
この①~③の構造上、全て退行変性をきたす構造物だといわれており、加齢に伴い最も狭窄を生じやすい部位である。
<狭窄をきたす機序>
・加齢に伴い椎間板が変性。
・腹筋、傍脊柱筋が低下し、椎間関節に負担がかかる。関節の骨性肥厚を生じる。
・線維輪にカルシウムが沈着し、椎間靭帯、黄色靭帯の肥厚を生じる。
・脊柱管の横断面積が減少する。
※腰椎4/5間が最も変性しやすいと言われている。
<脊柱管狭窄症の発症機序>
・馬尾神経が直接圧迫される。
・神経根への動脈血流が圧迫により障害され、十分な血液供給がないために神経虚血に陥る。
・圧迫により静脈血の還流障害を生じ、神経浮腫をきたすためとするもの
などがあり、これらが組み合わさって症状が現れてくると言われている。
●腰部脊柱管狭窄症の症状
①腰痛
初期症状として腰痛がみられる。
原因
・椎間板の退行変性により洞椎骨神経が刺激される。
・椎間関節の変形をきたし、脊髄神経後枝内側枝が刺激される。
椎間板には、神経組織が分布し、骨膜、靭帯、硬膜、硬膜外血管などにも豊富な神経組織が分布しています。そのため、少しでも刺激されることで腰痛が起こってしまいます。
②下肢症状
間欠性跛行
馬尾型、神経根型、混合型として分類されている。
馬尾型:脊柱管内で馬尾神経が全体的に圧迫され、両下肢に症状がみられる。
神経根型:神経根の支配領域だけ圧迫されること多いため、歩行時に症状が出る。
馬尾性間欠破行は特徴的な症状と言われており、起立または歩行を続けているうちに両足部から上行する痺れが出現、歩行の続行が不可能となる。前屈位またはしゃがみ込んで数分休憩することで痺れが収まり、再び歩行可能になる。
下肢異常感覚
下肢の冷えを感じることが多い。また、逆に足が火照っていると訴える場合もある。
これらの症状は、自律神経機能障害によるものと考えられる。
③膀胱直腸症状
頻尿や残尿、便秘症状が認められることがある。
膀胱直腸症状は、第2~4仙骨神経根障害によるもので、会陰部の灼熱感など、異常感覚を伴っていることもある。
●腰部脊柱管狭窄症の診断
①主訴・病歴の聴取
主訴と病歴からある程度予想ができると言われています。
特に現在あるい過去に力仕事に従事していないか聞いておく。
腰に負担を強いる仕事の場合、腰椎の変性も高度で、黄色靭帯が著明に肥厚していることが多いと言われている。
②神経学的検査
・下肢筋群および殿筋の萎縮がみられる。
・膝蓋腱反射:上位の影響を受けて亢進している場合や、減弱していることもある。
・アキレス腱反射:ほとんど著明に減弱あるいは消失。
・神経根型の圧迫では支配領域に軽度の知覚障害を伴っていることもある。
・ラセーグ徴候は陰性、ケンプ徴候は陽性のことがある。
・立位保持、歩行負荷試験を行い、下肢症状の度合いを確認。
※ラセーグ徴候:仰臥位の患者の下肢を伸展させたまま持ち上げようとすると、大腿後面に疼痛を訴え、それ以上足を挙上できなくなる状態を指す。
※ケンプ徴候:患者を立位(または座位)とし膝を伸展したまま、腰椎を後側屈させる。同側の下肢痛を生じた場合を陽性。
③画像所見
・腰椎X線やMRIを行う。MRIでは、ほとんどの場合画像診断が可能。
・神経症状は画像所見で得られないこともあるため、脊髄造影、造影後CTも必要と言われている。
間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症で起こることもあり、腰部脊柱管狭窄症でも歩行障害が出ることも認識しておく必要性がある。