結核
●感染経路
◎飛沫感染
活動性結核で排菌がある患者の咳・くしゃみ・会話などで生じた結核菌を含む塵埃を吸い込むことで感染。
●結核の種類
①初感染肺結核症
初期感染の時期は炎症反応において、細胞性免疫の獲得と遅延型アレルギー反応が成立してツベルクリン反応が陽性となる。
感染者のうち発病するのは約10%。90%はツベルクリン反応陽性のまま発病しない。
②慢性(既感染、再燃)肺結核症
初感染巣がいったん鎮静化したのちに、数年~数十年後に活動性結核が発病するもの。
初感染の際に成立した細胞性免疫、遅延型アレルギーの働きによって封じ込められていた小病巣が、何らかの原因(加齢、疲労、低栄養、ステロイドホルモンの使用、免疫抑制剤、抗癌剤など)によって細胞性免疫が低下することによって再燃する。
③粟粒結核
一度に多量の結核菌が血流中に入り、全身の多くの臓器に多数の結核結節ができる重篤な疾患。
●結核の発病・悪化
<一般的・社会的背景>
①高齢者
②外国人、特に抗蔓延国からの移住者・労働者
③小規模事業従事者(健診や保健医療サービスが受けにくい)
④医療従事者(看護婦・検査技師など感染機会が高い)
⑤不十分な健康管理(受診の遅れ、過度のダイエット、不規則生活)
<生理的状態・疾病>
①過去の結核感染・既往(X線上末治療効巣)
②糖尿病
③胃切除
④ストレス
⑤低栄養
⑥慢性腎不全(腎透析)
⑦悪性腫瘍(癌や白血病)
⑧免疫不全症(先天的、後天的)
⑨アルコール依存症
⑩大量喫煙
⑪塵肺
<医源性>
①免疫抑制治療(ステロイド長期投与、免疫抑制剤、癌化学療法、放射線照射)
②診断の遅れや不適切な治療
●結核の蔓延状況
世界の結核患者は増加傾向。
毎年約200万人が死亡し、約800万人が新たに罹患。
途上国の結核患者は、届出されたものだけでも約700人にひとりの患者がおり、地域的には、アフリカ、南アジア、東南アジアなど感染地域が全世界に広がっている。
●結核の症状
<初期症状>
微熱、頭痛、倦怠感、易疲労感、盗汗、食欲不振などであるが、ほとんど症状がでないこともある。
<進行すると・・>
肺胞に滲出液が貯留すれば咳嗽、喀痰がみられる。
進行して呼吸面積が減少すると呼吸困難、体重減少、貧血などもみられる。
炎症が胸膜に及べば胸痛や背部痛も出現する。
●環境上の感染防止
<空調設備の整備>
結核患者を収容する一般病棟の中の結核病室あるいは結核病棟単位(以下、結核病室)においては空調設備は外部から空気を取り入れ、排気は直接外へ放出する独立したものとする。
室内空気圧は、外部に対して陰圧とする方向で施設の改善を図ることが望ましい。
●個人の感染防止
◎安全マスクの着用
結核感染を特に受けやすい救急処置や気管支鏡検査の操作時ならびに多剤耐性結核菌を排出する患者の診療に際しては、結核菌が通過しないようなマスクの着用が望まれる。
特に、※N95微粒子用マスクが望ましいと言われている。
※N95微粒子用マスク
米国労働安全研究所の認定規格N95を満たした高性能のマスク。
0.3μmの微粒子を95%以上捕集する性能を備えているため、結核、SARS、PM2.5、また放射性物質からの防御に効果があるとされています。
参考資料
①山岸文雄:結核の院内感染予防対策 臨床検査5・結核 Vol43 No5 1999
②石川信克:わが国の結核の展望―高齢者結核の動向 老年医学・老年者の結核 Vol38 No6 2000
③大成浄志:標準理学療法・作業療法学専門基礎分野内科学 医学書院 2005
④http://www.johac.rofuku.go.jp/world/index.html