OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【介護】【リハビリ】廃用症候群~1度は聞いたことありませんか?~

廃用症候群

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●廃用症候群とは

廃用症候群とは、安静臥床・運動不足によって生じる心身の病的状態の総称

下記に安静臥床・運動不足で起こる影響をまとめあり。

<安静臥床・運動不足の影響>
筋骨格系:筋力低下、筋萎縮、拘縮、強直、退行性関節病変、骨粗鬆症
循環器系:心血管系脱調節、起立性低血圧、血栓・塞栓症
呼吸器系:換気機能低下、上気道感染、誤嚥性肺炎
代謝系 :アンドロゲン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インスリン、電解質・タンパク質・炭水化物等の代謝変化
泌尿・循環器系:尿うっ滞、尿路感染、尿路結石
消化器系:便秘、食欲不振、体重減少
神経系:知覚喪失、不安、うつ、錯乱、知能低下、協調性低下、運動の随意性低下
皮膚 :褥瘡

 

 

●廃用症候群の対策として必要なこと

可能な限り予防する努力をすること

もし廃用症候群になってしまった場合は、速やかに改善する努力をすることです。対策を行わないと悪循環に陥りますます低下してしまいます。
症状は局所にととまらず、起立性低血圧のように全身にも及びます。

筋骨格系
筋骨格系に注目すると、骨粗鬆症の危険因子は長期の臥床や筋収縮の欠如であり、自力での立位保持が困難な症例では他動的な起立訓練が予防に有効。

関節
関節拘縮は治療より予防が重要
1日1~2回、全関節可動域にわたって動かして関節可動域を維持する必要がある。
一度生じた拘縮を改善させるのは患者も苦痛であり、元に戻らない可能性が高い。
四肢関節の拘縮だけではなく、体幹の拘縮やハムストリングス、下腿三頭筋など二関節筋の短縮も含めて予防が大切
筋萎縮はリハビリテーションを行う上で、最も重要な課題。

 


●廃用性筋萎縮の病態

<筋力低下の原因>

神経原性、筋原性、廃用性などであり、廃用性筋力低下はリハ評価上頻繁に認められる。筋力は運動不足によって容易に低下する。

安静臥床を続けると筋力は・・・
1週間10~15%低下
3~5週間50%低下

筋の中で最も早く筋萎縮をきたすのは下肢体幹抗重力筋である。

筋として下腿三頭筋、前頸骨筋、肩甲周囲筋、上腕二等筋の順に大きい。
※手内筋には明らかな筋力低下を認めなかった報告もある。

様々な研究の結果から、麻痺側だけではなく、非麻痺側の筋力低下も認められ、これには廃用と皮質脊髄路の非交叉線維の存在が関与している可能性があるとのこと。

 

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●廃用症候群の予防

脳卒中片麻痺患者の廃用性筋萎縮の予防について検討した研究結果から、健常中年男性の場合、1日4000歩以上の日常生活の活動性を維持することが必要。

 

<脳卒中の廃用予防>
リハ現場(臨床現場)では、廃用性筋萎縮を予防するには不要な安静臥床を避け、可能な限り早期にリハビリテーションを開始することが大切。
対象者の多くを占める脳卒中では、多くの症例で発症当日からベッド上での他動、関節可動域訓練や非麻痺側の自動運動が可能。

神経症状が48時間以上進行しなければ、起立性低血圧に注意しながら、坐位、起立訓練を開始。
数日以内に坐位・起立訓練をしっかりと行えば、非麻痺側、麻痺側の筋萎縮をある程度防ぐことが可能であり、廃用性筋萎縮による問題を最小限に

大腿四頭筋セッティングに代表される等尺性筋収縮について、最大筋力の2/3の筋収縮を1日に6秒間行うと十分な筋力増強効果を得られると報告あり。
臨床上ではこれでは不十分とし、筆者らは5秒間最大に筋収縮をさせ、数秒の休息を入れながら5回繰り返すことを1週間に5日実施するように指導
※等尺性筋収縮は血圧が上昇しやすいので注意

歩行が困難な高齢者や脳血管障害者の下肢抗重力筋強化には、立ち上がり訓練が安全で簡単に行える運動であり、かつ効果的と言われています。

歩行可能な患者は、歩行階段昇降によって筋力の維持・強化を図ることができる。

 

●患側の廃用

脳卒中のリハ早期に、患者が麻痺側下肢の代償として非麻痺側を用いることを体得する。その後麻痺側が部分的に改善しても、患者は必要以上に非麻痺側に頼る為、結果麻痺側が廃用によってさらに筋力低下をきたす“learned disuse”という廃用のメカニズムがある。
脳卒中患者のリハビリテーションにおいて

初期は非麻痺側を中心とする筋力強化訓練

歩行が自立した者については非麻痺側に加え麻痺側の筋力強化や維持を目的とする訓練を取り入れ、非麻痺側・麻痺側ともに廃用性筋萎縮を予防することが大切である。

 

参考資料

「廃用性筋萎縮の病態と臨床」.総合リハビリテーション.第30巻第2号.2002年2月.医学書院