アパシー
●アパシーとは
認知症になると日常の出来事ややる気や関心が失われていく、"無気力"に陥るケースがあります。
この無気力状態を「アパシー」と呼ばれます。
この症状は他症状と異なり、はっきり現れる症状ではありません。
そのため、周囲も症状の進行に気づくのが遅れてしまうことが多い症状です。
アパシーは、もともと社会学で用いられていた概念。
近年、心理学でも使われるようになり、周囲に対してだけでなく、自分自身の身の回りのことでさえ無気力・無関心になってしまう状態を指す言葉として用いられるようになったようです。
高齢者にアパシーが見られる場合、生活習慣が乱れ、身体面や衛生面であらゆる無精が目立ってようです。
<例えば>
・散歩などを習慣にしていた人が急に引きこもりがちになる。
・入浴や歯みがき、着替えなどを行えなくなる など
特に一人暮らしや夫婦ともに高齢者の世帯の場合、周りの目が行き届きにくいため、普段できていることが出来てない場合は、アパシーの症状が出ている可能性もあります。
●診断の方法
<Marinが定義したアパシー>
①目的ある行動の減弱(自発的な根気強い努力の欠如で示される)
②目的ある思考の減弱(個人の健康、経済的問題などへの関心の欠如で示される
③目的ある行動に付随した情動的反応の減弱(感情の平板化や良いあるいは悪い出来事への情緒的反応の欠如で示される)
を特徴とした動機付けの欠如ないしは減弱した状態とアパシーを定義。
<Levyらの提唱>
Levyらは
①モチベーションは内的な状態
②評価で表出された行動や感情の観察に基づかざるを得ない
ことからMarinの定義には問題が含まれていると指摘。
彼らはアパシーを自発的な目的のある行動を量的な減少として定義するべきであると提唱している。
Marinの定義ではアパシーは認知障害によるものではないとしたが、アルツハイマー病患者では高率にアパシーを示すことが繰り返し報告されており、アパシーの定義や診断基準にはまだ難しい状況である。
アパシーの重要度評価としては1991年にMarinらがApathy Evaluation Scale(アパシー評価尺度)を開発。
Apathy Evaluation Scale(アパシー エバリュエーション スケール)
⇒日本では「やる気スコア」として用いられる。
やる気スコアのリンク⇓
●うつ病とアパシーの違い
何事に対しても無気力になるアパシーは、うつ病と間違えられやすいようです。
うつ病とはいくつか異なる点があるため、その違いを見ていきます
●気分
うつ:気持ちが暗く沈みがち。
アパシー:何に対しても関心を示さない状態。
●症状への自覚
うつ:多くの方は自分がうつ状態であることを認識できます。また、周囲に話したり病院を受診したりできます。なかなか改善できないと、そのあせりやイライラなどで自己嫌悪に陥り、さらにうつが悪化してしまうという状態にもなってしまいます。
アパシー:症状への自覚意識が乏しいです。病院受診などの行動は見られません。
●危険行為の有無
うつ:自傷行為をする方もいます。また、他の精神疾患を併発している場合は、思い通りにならないイライラなどから暴力行為が見られることも。
アパシー:自傷行為はほとんど見られない。暴力的になることも見られない。
●薬による治療
うつ:抗うつ剤が有効。
アパシー:現在有効な薬がない。抗うつ剤も十分な効果が得られないとの事。
●対策
規則正しい生活を促す
家族にアパシーの症状が見られる場合、アパシーに効果のある薬がないため、家族の働きかけが意欲を促進させ、症状の緩和をつながることが多いとの事。
まずは規則正しい生活の時間(起床・就寝・食事時間・外出など)を決める。
家族だけでは難しい場合は、通所介護(デイサービス)や訪問介護などで定期的な外出を促したり、規則正しい生活リズムを付けることが重要になるようです。
参考資料
https://www.sagasix.jp/column/dementia/apathy/
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/アパシー