腰痛
1.介護の天敵~腰痛~
介護職の方は従事後2 年以内に腰痛を発症することが多く、その主な原因は前屈位での介護動作(移乗,風呂介助)であった。腰痛は最も多い職業性の1 つ。
<腰痛の危険因子>
・肉体的な重労働
・静的労働姿勢(パソコン操作などの事務作業)
・物の持ち上げ・押し・引きの動作
・体の曲げやひねり
・反復作業,振動 …など ほとんどがこれらの要因により発症。
2.腰痛の種類
①急性腰痛
定義:腰に痛みが生じてから、おおむね4週間以内 に収まるものが「急性腰痛」
<痛みなどの特徴 >
・急激で激しい痛み
・安静にすると痛みが和らぐ
・自然に治る
・腰にはっきりとした異常がみられない
②慢性腰痛
定義:腰の痛みが3ヶ月以上続くものが「慢性腰痛」
<痛みなどの特徴>
・鈍痛がいつまでもしつこく続く
・いつのまにか痛み始める
・何もせずに自然に治る可能性は低い
・完治しにくい
3.予防策
① ボディメカニクスの利用について
② 簡単に出来るストレッチ方法
の2つをご紹介したいと思います。
①ボディメカニクス
ボディメカニクスとは:力学的原理を活用した介護技術のこと。
介護する側にとっての無理のない自然な姿勢で介護することをいう。
(1)支持基底面を広くとり、重心を低くする
支持基底面は広い(足を広げる)ほど安定。
足を開き、膝を曲げ、腰を落とす姿勢が安全で安定した介助の基本姿勢となります。
(2)本人にできる限り接近する
本人にできる限り接近することで、前傾姿勢にならないようにして腰への負担を減らし
介助ができるようになります。
(3)体をねじらない
不自然に身体を曲げると不安定になり、腰痛の原因となります。
介助者自身の体で本人の移動する方向を妨げないように足の位置や移乗方法を考えて介
助を行なって下さい。
(4)本人の身体を小さくまとめる
力が分散すると重くなる。本人の手足など、身体をできる限り小さくまとめると介助し
やすくなります。
(5)てこの原理を応用
出来る限り持ち上げるのではなく、シーソーのように支点を作り自分の体重をかけるこ
とで、軽い負担で介助を行っていく。
(6)膝の屈伸を利用し水平移動
上下に持ち上げるより、横に移動(水平移動)させる方が介護者の負担は少なくなりま
す。 上下に行わなければならない時は、前傾姿勢にならないように心がけ、上体(腰)
だけではなく膝の屈伸を利用して動かしていくことが必要です。
②ストレッチの基本
(1)反動をつけない。
⇒筋肉をゆっくりと伸ばす。
(2)無理をしない
⇒痛みを感じない程度で。
(3)伸ばす筋肉を意識する
⇒今、自分が伸ばしている筋肉は何処かを意識する。
(4)呼吸を止めない
<腰が痛いと感じたときの対処法>
腰の痛み方によりますが、まずは整形外科を受診して頂くことが第一!!
受診して異常がなければ…
①腰痛ベルトの使用
②ストレッチ
③安静・安楽な姿勢で休む(無理をしない)
④使っているベッドマット、自己の姿勢の見直し
<重い物を持つときの腰に負担をかけない方法は?>
復習になりますが… 第一は
①ボディメカニクスのうまく利用していくこと
②福祉用具の利用(リフトやボードなど)
③体が大きい利用者さんはできるだけ2人以上で
腰痛の原因はさまざまあります。ですので、仕事のせいで痛いだけとほっとかずに一
度整形外科の受診をお勧めします。また、腰痛ベルトやストレッチなどすぐにできるこ
とを行っていってもらえたらよいかと思います。
参考文献
1)峯松 亮:介護職者の腰痛事情:日職災医誌,52 : 166 ─ 169,2004
2)石田 肇:腰痛体操の適応と限界:リハビリテーション医学 VOL. 28 No. 2 1991年
2月97
3)澤田 小夜子.林 宏樹 他:職場で継続できる腰痛予防体操の提案 日本職業・災
害医学会会誌JJOMT Vol. 58, No. 1
4)甲田 茂樹 他:介護業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ
:中央労働災害防止協会. 2010 年10 月(第1 版)