変形性関節症
変形性関節症と聞くと膝関節症をイメージする人が多いのではないでしょうか?
介護や医療現場ではよく見かける病気だと思います。
今回は変形性関節症全般のお話をしたいと思います。
1.変形性関節症とは??
人間は一生のうちに数え切れないほど関節を動かします。
関節が繰り返し動かされると、関節と関節の間にある軟骨は、次第にすり減って磨耗していきます。しかし、そのすり減った部分は部分的に再生(増殖)します。
磨耗・増殖と変形が同時に起こってきて関節がスムーズに動かなくなったり、痛くなったりします。これが「変形性関節症(OA)」です。
<高齢者に多い!?>
壮年期以降に発症する慢性関節疾患の中では最も頻度の高い疾患
脊椎や四肢関節に多い
65歳以上の人には、かなりの高頻度で発症
加齢だけでなく、関節を多く動かす職業やスポーツ
体重が重い場合には関節に負担がかかりやすく、肥満もその要因
<診断は難しい?>
変形性関節症は関節が痛くなるということで、関節リウマチと間違えられやすく鑑別が難しい疾患です。
誤診を避け、早期に適切な治療を受けるためにも専門医に診せることが重要ですが、外科的・内科的な両面から診断する必要があります。
2.変形性関節症のメカニズム
<関節軟骨がすり減るのが原因>
①関節が繰り返し動かされることにより関節の間にある軟骨が次第にすり減って摩耗
②増殖と変形が同時に起こります
③すり減った部分が修復の起点となって関節軟骨が増殖する、摩耗と増殖が混在する状態が変形性関節症と呼ばれる。
<20歳を過ぎると老化が始まる関節>
関節軟骨はクッションの役割をしますので水分が非常に重要です。
正常な軟骨はプロテオグリカンがコラーゲンの網目構造に取り囲まれています。
※コラーゲンには約30%の水分が含まれており、プロテオグリカンには70%程度含まれているといわれています。
人間は20歳を過ぎると老化が始まり、それと共にコラーゲンもプロテオグリカンも少なくなってきます。
①関節軟骨内ではプロテオグリカンの数が減り、屈折・圧縮に対して弱くなる
②潤滑も悪くなる
③なめらかな動きが出来なくなる
④コラーゲンは水分が減ってくるとバラバラになり、表面の軟骨細胞が死んで数も減る
⑤関節軟骨に亀裂が入ってぱさぱさと繊維化が進む
⑥重度化すると軟骨がほとんど無くなり骨が丸出しになり、象牙のような状態になる
⑦動物の細胞には修復過程が起きるため、コラーゲンの再生などにより骨棘が形成され変形が起こる
⑧炎症(滑膜炎)が起こってくることもしばしばですが、常に軟骨の変化が先導します。
<O脚が変形性関節症を引き起こす>
加齢は、関節軟骨だけでなく足の形にも現れます。
日本人の膝は内反膝が多く、変形性変化を起こしやすいといわれています。
普通体重は、膝の内側と外側で、均等に受けるのですが、O脚になると膝が外側を向くので、体重が膝の内側にかかるようになります。
そのため、内側の軟骨が少なくなり、これが進むと象牙のようにかちかちになってしまう。
<症状>
①関節を動かすとコツコツという軋轢音がする
②痛みが出て、膝が伸びなくなってくる
③膝の可動域に制限が出てくる
④腫れ、熱発、滑膜炎が起こり水がたまるといった症状も起こる。
<女性の発症頻度は、男性の10倍>
変型性関節症の発生部位の頻度
40~50歳代から
①膝
②肘
③股関節
④背骨
⑤肩
といった体重負担のかかりやすい関節に部位に多く発症します。
OAは、頻繁に動かす関節や荷重がかかる関節に多発するといえます。
女性は男性の10倍の頻度で発症すると言われているのは、閉経後のホルモン分泌異常などに関係すると言われています。
3.変形の原因!?
◎変形性関節症の原因6つ‼
①肥満
高い所から飛び着地したときなど急激な衝撃が加わると、膝関節には3倍から4倍の力がかかってきます。
これが肥満の人になると余分な力が関節に加わり、OAの大きな原因となります。
そのため、減量が最も効果的ですが、体重を一気に減らすのはなかなか難しいです。
すぐできることは関節にかかる負担を軽減させるために、杖の使用が重要になってきます。しかし、なかなか杖を使用することに抵抗があります。
②加齢
加齢により、コラーゲン・プロテオグリカン・水分が変性してくるのは避けようがないです。
③遺伝?
女性に多いのもOAの大きな特長。これは、閉経後のホルモンの関係が関節軟骨の老化を増長させているといわれています。
④職業
デスクワークの人に比べると、肉体労働者のほうにリスクが高いです。
溶接工は膝、農業従事者は股関節に、発症しやすいと言われています。
生活様式に連動した関節がそのまま疾患として多くなるようです。
⑤スポーツ
スポーツは若くても関係なく関節に無理な負荷がかかるため、OAを発症しやすくします。特に膝の屈伸運動が多いスポーツにOAが多いようです。
⑥外傷
半月板損傷から、OAが発生するのが多いです。
靭帯の断裂により関節が非常に不安定になることで、発症する場合もあります。
4.治療法
<保存的治療が基本>
①まずは体重の減量
②運動療法、理学療法
③薬物療法(抗炎症剤の投与)
④温熱(炎症が強いときは冷やす)
膝のOAにおいては、大腿四等筋を鍛えることが非常に大切で、負荷をかけて伸ばす運動などが効果的です。この筋肉は膝の固定や体重を支えるために必要な部分です。
大腿四等筋を鍛えることにより、膝に水がたまっていた人が良くなったりすることもあり、エクササイズはとても重要です。
※関節の動きをなめらかにするためにヒアルロン酸を関節に注入するといった方法もとられます。
<NSAIDの副作用に注意>
薬物療法では、痛みをとるためにNSAID(非ステロイド性消炎鎮痛剤)投与が多く用いられます。
この薬は胃腸障害などの副作用があるので注意が必要です。
医師からの説明を十分に受けてからにしましょう。
特に老人では、痛みが不眠の原因になったり、鬱状態を引き起こす原因になるため、何とか痛みを軽減することが大切になります。