肩の痛み~脳編~
1.肩の痛みのいろいろ
・日常の肩こりからくる痛み
・骨折などの整形外科疾患
・脳卒中を中心とした中枢疾患 など
2.特徴
・脳卒中患者の肩の痛みは発病1~2週間で訴えはじめることもある
・多くの患者が発症後1~2ヶ月で訴えることが多い。
<痛みは…>
①基本動作等の肩周囲の筋緊張の過剰亢進
②衣服着脱等のADL介入時
③患者のADL拡大 にともなって始まる。
・次第に一時的痛みから持続的痛みへと変化することも多い。
・さらに、肩の痛みから手指や前腕、上腕まで全体に広がることもある。
<肩の痛みから…>
・患者は次第に不安が強まる
・日常の活動性が低下
・精神的に非常に攻撃的になるケースやうつ状態に。
・リハの意欲低下やスタッフに対する不信感に発展すること。
3.痛みの評価
◎痛みの一般的な評価以外に…
①スタッフや家族に訴えている内容
②治療中の訴えや表情や身体の反応(痛みが我慢できるかできないか)
③姿勢や場面、痛みの場所とその変化など
◎痛み以外に…
①一日の生活リズムや時間経過での痛みなど
②活動時と夜間などの安静時での変化
◎ADL場面
①どの動作過程、介助場面で出現するか
②筋緊張、関節および筋の状態はどうか
③痛みが日常生活や活動範囲に及ぼす影響はどうか
④天気や地震等の自然環境の変化との関連はあるか
4.痛みの原因
◎中枢神経疾患の肩の痛みの原因
①加齢や廃用
②筋の異常、筋・関節のアライメントの異常
③可動域制限、神経、筋、腱の持続的な伸張
④炎症やアレルギー反応などで発生する発痛物質の増強
⑤中枢神経系のシステムの障害
※視床であれば表在性疼痛
※被殻や内包であれば深部痛 が起こるとされている
5.痛みへの対応
1,痛みの説明と対応
①丁寧かつ慎重に。
②CT、MRI等で損傷部位を確認。
※視床、基底核などの損傷があれば、経過に伴い痛みが出現する場合がある。
③一般的に脳の損傷と発病の経過の中で痛みが出現することが多いことを説明。
④痛みから来る不安をできるだけ減らす。
⑤各医療スタッフ間の連携を密にする。
⑥どの状況で痛みが出現し、その部位や特徴がどう変化するか十分に把握する。
⑦患者の表情、姿勢や動作の反応をよく観察・分析。
2,操作や作業活動時の注意点
①肩関節の動きのみでなく体幹や頭部の動きを引き出すような活動を実施する。
②非対称な姿勢が強い場合は、なるべく姿勢を正し整える。
③何かあったらまずは活動を一度止めて姿勢を正してから再度開始する。
④課題はストレスや負担がかからない分かりやすい課題から開始する。
3,ADL場面での注意点
①多くの人が活動範囲を拡大し始めたころから肩の疼痛が出現してくることが多い。
②習慣化しつつある過剰努力や悪い姿勢などを調節する。
③特定の運動パターンを繰り返している場合が多い。
そのため、ベッド上では可能な範囲で姿勢や枕・ベッドの高さなどを変更するなど正しい姿勢を心がける。
6.まとめ
今回の肩の痛みの大きな原因は中枢神経損傷特有の問題がある。
スタッフがその痛みについて考え、積極的に介入し、より良い方向へ導く工夫と治療への前向きな取り組みが必要である。
参考文献
1)林克樹:肩痛の作業療法計画 中枢神経疾患を中心に. OTジャーナル41:1161~1167,2007
2)若林秀隆 他:肩関節可動域制限.総合リハ.31巻12号:1101~1106,2003
3)矢崎潔:脳血管後障害後の肩の痛み 段階的アプローチ.勉強会資料