OT【作業療法】のブログ~医療・介護福祉・リハビリ~

2008年から作業療法士をしています。医療福祉の情報や病気、怪我、体験談なども書いていきたいと思います!! よろしくお願いします。

【情報】痛み~痛みはなぜ起こるのか!?~

【情報】痛み~痛みはなぜ起こるのか!?

 

 

痛みとは

痛みには、急性痛と慢性痛がある。

急性痛:一過性で基礎疾患が治ると痛みが消える。

慢性痛:6ヵ月以上痛みがつづく。(病態によっては2~3週間以上でも慢性痛と言う。)

痛みは、人に警戒心を持たせることで、様々な危険から生命を守るために本能的に備わっている危険信号である。

 

痛みの経路

①刺激などを受ける(侵害刺激

「侵害刺激」とは、組織を実質的に損傷するか、その危険性のある刺激。刺激がある強さ以上に達すると、組織の損傷を起こし、発痛物質や発痛増強物質が産生される。

②末梢神経の侵害受容器で感知

末梢神経先端の侵害受容器で刺激を感知。

③神経線維を通り、脊髄へ伝わる

④感覚神経を通じて、脳(大脳)へ伝わる

脊髄に伝えられた信号が大脳へ伝えられ、「痛み」を認知。

 

外部から刺激ではない肩や腰の痛みなども、痛みの伝わり方は同じ。

発痛物質は、物理的な刺激だけでなく、血流が悪化しても作られる。

緊張や不安などで交感神経の興奮が続くと、血管を収縮させ血流が悪化、硬直した筋肉が末梢神経を圧迫・損傷したり、溜まった老廃物質が神経を刺激し、発痛物質を生成させる要因となる。

 

痛みの対処

①痛みの原因が改善されるよう働きかける方法

血流の改善や筋肉の緊張を緩和するビタミンや栄養素を摂る。

外側から温めて血液循環を良くする。

②痛みの発生経路に働きかけて痛みを抑える方法

1:刺激を受け組織が損傷

2:細胞膜にあるリン脂質はアラキドン酸に変わる。

3:更に体内にあるシクロオキシゲナーゼという酵素の働きにより発痛増強物質プロスタグランジンが生成(プロスタグランジンは、熱感や腫れ、発痛の増強作用がある)。

この3のとき発生した発痛増強物質の産生を抑える働きをするものとして、NSAIDsとよばれる非ステロイド性抗炎症薬がある。

NSAIDs(インドメタシン、イブプロフェンなど)は、シクロオキシゲナーゼの働きを阻害することで、発痛増強物質プロスタグランジンの合成を抑制し、鎮痛消炎作用を示すものです。内服薬や外用薬で用いられる。

 

痛みは2度ある

人間は痛みに2度さらされる。最初の鋭い痛みはファーストペインと呼ばれ、末梢神経のAδ線維が痛みの信号をいち早く脳へ伝え、その後、C線維が2度目の痛みのセカンドペインを遅れて脳へ伝える。これは神経線維の太さと伝導速度の違いによるものである。

 

痛みが慢性化!?

通常、適切な治療をすれば、急性痛は短期間で治まり、交感神経・副腎皮質系の働きによる緊急反応も治まる。しかし、痛みが長引いた場合は、交感神経の興奮によって血管が収縮し、血流が悪くなって酸欠状態になる。そうなると痛みを生み出す発痛物質が放出されて痛みが生じ、その痛みがさらに交感神経に刺激を与えるという悪循環に陥ってしまう。

その上、痛みに対するストレスや不安が加わって痛みが続くと、慢性痛に移行する場合がある。慢性化しないよう痛みを感じたら早めに対処する必要がある。

 

慢性痛は「痛み自体」が病気

慢性痛とは、痛みが長く続いている状態をいう。痛みがひどかったり長引いたりすると、原因自体がなくなっても、痛み続けてしまう場合がある。慢性痛は、痛みが広範囲ではっきりしないのが特徴で、ビリビリ、ジンジンするといった電気が走るような痛みと表現されることが多い。

 

慢性痛の代表的なタイプと原因

慢性痛にはいくつかのタイプがある。

神経障害性疼痛

ケガや病気で神経が傷つき、神経が異常に興奮して起こる痛み。

原因として、脊髄損傷や脳卒中などによる神経の損傷や切断、糖尿病の合併症による神経障害、がん細胞の神経への浸潤などが挙げられる。

中枢性疼痛

脳と脊髄にある中枢神経が傷ついて起こる痛み。痛みの刺激がないのに痛いと感じたり、麻痺している部分に異常な痛みを感じる。

心因性疼痛

ストレスや不安など精神的・心理的問題で生じる痛み。慢性の痛みで長い間続く人は、脳が痛みを学習して、原因がなくなっても痛みを感じることがある。病気や痛みに対する不安や恐怖、職場や家庭でのストレスなども心因性疼痛の要因となる。

 

慢性痛が心身に与える影響

慢性痛を放置していると、心身ともに消耗し、不眠や食欲不振、集中力の低下、イライラなどの症状が現れることがある。慢性的な痛みによるストレスで、うつ傾向となり、社会生活に支障をきたす可能性もある。

 

【介護】職業性腰痛の現状と展望

【介護】職業性腰痛の現状と展望

 

 

 

職業性腰痛とは

日本産業衛生学会では職業性腰背部障害と、行政上では業務上の腰痛(災害性腰痛 と非災害性腰痛とを区別される)とされており、WHOでは労働関連性疾患に包括され。作業関連性腰痛とされている。

 

腰痛の職業性危険因子

職業性腰痛の発生には、多数の因子が絡み合っており、疫学や生体力学のみならず,種々の臨床医学的研究(X線検査、MRI検査、電気生理学的検索、筋力評価など)の検討がされてきている。

職業性危険因子は・・・

①作業要因

➁環境要因

③心因的・社会的要因

④個人的要因

多数の危険因子が絡み合う職業として、長時間の拘束姿勢保持、振動が合わさる長距離トラック運転があげられる.

 

職業性腰痛の具体例

肉体的重労働

肉体的重労働が腰痛を引き起こすことは事実。重労働には、どのような職業であるかFrymoyerらの定義によると、腰を傷める者が年間1.5%以上発生する職種は運輸・倉庫業などが該当する。

継続的な静的労働姿勢

長時間座り続けたり、ある姿勢で仕事を継続する労働も腰痛の危険因子である。1日の労働時間の半分以上を自動車運転に費やす者は、椎間板ヘルニアの発生率3倍にもなるという報告がある。これは、長時間の座位姿勢保持と振動との影響とされている。

体幹の屈曲・捻転

屈曲・捻転が腰痛の発生に深い関連性を有するという報告は多数みられる。この複合動作は、物の挙上(持ち上げる)を伴うこともしばしばある。自動車の組立ライン、土木作業、看護業務などがあげられるが、事務員でもよくとられる動作である。

物体の挙上(持ち上げ)

物体の挙上(持ち上げ)が腰痛の原因となることは、多くの研究から明白となっており、常識でもある。職業性危険因子としての物体の挙上は、挙上重量のみならず、数人での物体運搬時に1人が急に物体から手を離す場合や予想外の重量物を手渡される時などの急激な力学的要請時や反復動作も関係する。

物体の押し・引き

物体の押し・引きを要する作業従事者は、通常の労働者よりも腰痛の発生頻度が5倍多いとの報告がある。押し・引きの動作で椎間板内圧が上昇すると言われている。

反復作業

反復作業は、単調な作業内容による心理的因子の影響もある。流れ作業の手仕事従事者は、事務員より腰痛の発生頻度が高い。

振動

振動は、椎間板の代謝に影響し、傍脊柱筋に疲労をもたらすことが生体力学的、生理学的研究から検証されている。そのため、トラック、バス、飛行機、建設機械などの運転手は、腰痛のリスクが高く、他職種の労働者よりも早期から腰痛に罹患しやすい。

心因的・社会的因子

これらの中で不満足な職業・職種,労働者間の不協調、単調な作業などの職場に関連するものも危険因子となる。

 

【介護】男女別にみた認知症高齢者の病前性格と BPSDの関連

【介護】男女別にみた認知症高齢者の病前性格と BPSDの関連

 

 

 

BPSDとは

BPSDの定義

BPSDを「認知症患者にしばしば生じる、 知覚認識、思考内容、気分、行動の障害による症状」と定義。

BPSDの症状

抑うつ、せん妄、妄想、幻覚、徘徊、失禁、暴力、食異常といったものである。しかし、その症状も認知症状や環境・体調、薬剤などほかの要因が加わり区別は難しい場合もある。

BPSDによる介助者の影響

BPSDは、介護者と患者のQOLの低下、介護者のストレス増大など、さまざまな問題が生じ、多くの主介護者が BPSDへの対応方法が分からず、介護負担感を抱えてしまっていることが在宅介護を困難にする。

 

BPSDへの対処方法 

薬物療法

BPSDは介護者の適正な介入と薬物療法によって症状の改善がみられることが明らかとなっているが、BPSDは身体的および環境要因が関与することもあるため、対応の第一選択は非薬物的介入を原則とする姿勢が重要である。

※抗精神病薬を使用する群のほうがプラセボ投与群に比べて死亡率が増加することが報告されている。

環境改善

・落ち着く場所の確保

・服薬調整管理

・課題の工夫

・本人生活ペース確保

・自力可能課題実施      といった対応が症状を改善させた。

※日常生活リズムの確保や嫌がることをしないといった対応により症状が改善した。

 

BPSDの症状の男女比較

男女の違い

男女は脳機能の違いや、性格特性の違いから BPSDの現れ方が異なっている可能性が示唆されている。

男性:女性に比べて攻撃的行動、退行が多くみられる。

女性:男性に比べてうつ症状が多くみられる。

男性において最も多くみられた症状

・易刺激性(54.9%)

・夜間行動(49.0%)

・興奮(45.1%)であった。

女性において最も多くみられた症状

・妄想(61.7%)

・興奮 (56.5%)

・易刺激性(56.5%)

・夜間行動(54.8%)

 

BPSDと性格の関連

男性の性格変化

勤勉性傾向の性格は脱抑制、神経症傾向の性格は易刺激性、協調性傾向の性格は異食を起こしやすいという結果がある。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症では前頭葉の障害が指摘されているが、レビー小体型認知症に限定した研究結果では、勤勉性の病前性格が興奮を起こしやすかったことを報告している。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症を対象に行われた先行研究では、協調性の欠如した性格で焦燥性興奮、易刺激性、アパシーが多くみられたと報告がある。

 

男女別にみた精神疾患の関連性

男性の場合

男性は外向性、勤勉性、開放性傾向の性格はうつ症状を起こしにくい。

うつと性格特性に関連があり、高いニューロチシズム(神経症傾向)、低い外向性、低い誠実性といった性格の人はうつになりやすい。外向性は、社交的、活動的な性格であり、開放性は、好奇心がある、興味が広い性格であるため、うつが少なかったと推察される。

女性の場合

女性は協調性傾向の性格が多く、アパシーが多くみられた。

先行研究では、アルツハイマー型認知症で協調性傾向の性格はアパシーを起こしにくいことが報告されている。協調性は柔軟な、気の良い性格であり、先行研究と同様にアパシーになりにくいことが推察される。

 

文献

原著_TJDCR20002_男女別にみた認知症高齢者の病前性格とBPSDの関連野_2020.0609.indd (jst.go.jp)

 

【介護】運動と認知症の関係~運動しよう~

【介護】運動と認知症の関係~運動しよう~

 

 

 

歩行機能と認知機能

文献

歩行速度が遅く、歩行の空間的・時間的ばらつきが大きい者ほど認知症リスクが高いと言われている。

文献

高齢者の認知機能と歩行機能を調べた研究によると、歩行速度低下は認知機能低下を強く予測する一方で、認知機能低下はそれ以後の歩行機能低下にはあまり関連しなかったという研究があり、歩行機能低下が認知機能低下の前駆症状である可能性を示している。

文献

認知検査の結果から四分位範囲で被験者を分け各集団の歩行速度の変化を調べた研究では、認知検査の得点が低い集団ほどその後の歩行速度の低下が激しいことを明らかにしている。

 

身体活動と認知機能低下

最近では、身体活動の低下は認知機能低下の危険因子と考えられてきており、認知症の発症にも強く関連していることも報告されている。

運動習慣がない者(運動習慣が週1回未満)に比べ、「週に1回以上」の運動習慣がある者では40%ほどアルツハイマー型認知症のリスクが低かったことを明らかにしている。このような身体活動量と認知機能の関連は特定の運動に限定されるわけではなく、家事やちょっとした移動も含めた「1日の総活動量」が重要であることが示唆されている。

※ 1 日の総活動量が多い上位 10%に比べ,下位 10%の集団では5年後の認知症の発症率がおよそ 2~3 倍高い。

 

正常範囲の加齢に伴う認知機能低下認知症の中間症状軽度認知機能障害(以下MCI)という。この MCIは、年間約5~15%が認知症を発症する高認知症リスク群であると考えられている

身体活動量レベルが高い者(スポーツ、ウォーキング、旅行・ 長い距離の外出、ガーデニングの頻度身体活動量レベルを定義)ほど、MCI から認知症に移行するリスクが低い。

※身体活動量が最低レベルの者と最高レベルの物と比べると約60%近くリスクが軽減されるという報告あり。

 

身体活動への介入が認知機能に与える影響

多くの研究で運動介入により認知機能の改善効果があるとの報告がある。そのほとんどはウォーキングを用いたもので、非認知症高齢者と認知症高齢者の両者において認知機能の改善が認められている。

研究では、ウォーキング群に有意な海馬容量の増加も認められており、有酸素運動が中枢神経系の構造変化を引き起こし、認知機能を改善していることを示している。

運動による効果

・認知機能改善効果は有酸素運動に伴う脳血流量の改善。

・運動反応性の神経栄養因子やマイオカインの増加。

・酸化ストレスの低下

・運動を通じた抑うつの予防・軽減

・睡眠の改善

・認知機能低下リスクとなる疾病(高血圧,脳血管疾患,糖尿病など)の予防・症状改善

など、運動が認知機能改善に及ぼす影響とされている。

※ただし、認知機能低下が見られる高齢者や軽度から中等度の認知症高齢者を対象とした介入研究では運動が認知機能改善に及ぼす効果は小さいと結論づけるものが少なくないのも事実であり、運動の認知機能に対する影響は認知機能低下の進行状況が関連している可能性が大きい。

 

アルツハイマー型認知症患者を対象とした治験

認知症症状の改善薬であるドネペジル塩酸塩メマンチン塩酸塩によって認知機能のみならず歩行機能の改善も概ね認められている。

ドネペジル塩酸塩

アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害し、脳内のアセチルコリンを増加させ、アセチルコリン系の神経活動を高める結果、記憶障害をはじめとする認知症の関連症状が改善する。

メマンチン塩酸塩

認知症症状に伴い脳内に過剰に出現する神経伝達物質であるグルタミン酸を抑制し、グルタミン酸神経系の機能の正常化から認知症の関連症状の改善を図る。このような神経伝達システムは運動制御にも影響を与える。

 

 

運動と認知症 桜井良太 バイオフィードバック研究・2022 年・49 巻・第 2 号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbf/49/2/49_59/_pdf

 

【リハビリ】リハビリをする上でのリスク管理

【リハビリ】リハビリをする上でのリスク管理

 

 

 

リハビリ中に生じる急変・状態変化

重篤・時間変化とともに重篤化

①心肺停止 ②胸部痛 ③動悸・不整脈 ④腹痛 ⑤頭痛

状態変化

①気分深い・悪心・嘔吐 ②めまい ③痙攣 ④ 低血糖 ⑤血圧変動 ⑥関節痛・筋肉痛

 

脳梗塞のリスク管理

①脳血流の自動調節機能の破綻(はたん)

血圧低下により脳血流量が低下し再梗塞や脳機能低下につながる。

②心原生梗塞

・出血性梗塞や脳浮腫のリスクが大きい。

・不整脈・心不全に注意が必要。

・再発予防にはワーファリンを使用。

③脳梗塞の危険因子

・高血圧:収縮期血圧160㎜Hg 以上 拡張性血圧95㎜Hg以上

・糖尿病

・高脂血症

・喫煙

 

脳出血のリスク管理

①出血の原因と再出血

・典型的出

血部位:被殻40% 視床30% 脳幹・小脳・皮質下10%

・その他の原因による再発:動静脈奇形、海綿状血管腫、もやもや病、脳腫瘍など

②脳室穿破(せんぱ)に伴う急性水頭症

神経症状の悪化が見られた場合はすぐに医師に報告。ドレナージ術適応の可能性あり

③痙攣

・皮質下出血は高率で起こりやすい(15~23%)

・脳出血の場合は確率は低いが、遅発性痙攣や症候性てんかんが起こりやすい。

・早期痙攣出現後、遅発性痙攣再発率(30%)は高い。

・まれに脳卒中再発の場合もあるため注意。

 

くも膜下出血のリスク管理

①重症で予後不良症例の急変には注意‼

・高齢 ・脳室内、脳内出血 ・再破裂 ・脳血管攣縮 ・Hunt Hess分類、Fisher分類が重症

Hunt Hess分類

GradeⅠ:無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直がある

GradeⅡ:中等度から強度の頭痛や項部硬直があるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はない

GradeⅢ:傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示す

GradeⅣ:昏迷状態で中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害を伴うこともある

GradeⅤ:深昏睡状態で除脳硬直があり、瀕死の様相を示す

Fisher分類

Group1:CT上で血液を示す所見が見られない。

Group2:CT上で血液がびまん性に存在するも、血塊は認めない。血液の層が1㎜を超えない。

Group3:CT上で血塊を認める、または血液の層が1㎜以上ある。

Group4:脳室内に血塊を認める.びまん性の出血を認める、またはクモ膜下に出血を認めない状況に限らない。

②再破裂

・発症6~24時間以内

・根治術の未実施症例はいつでも再破裂の可能性が高い。

③脳血管攣縮

・数日~14日目ごろまでに発症。

・神経症状の悪化が30%程度あり、無症候に収まる場合は60~70%程度。

・治療方法として、意図的に血圧を上げる方法がある。

・脳血管攣縮期の血圧低下は脳血流量の低下につながる。

・脳血管攣縮による梗塞の可能性もあり、その予後の影響は大きい。

④正常圧水頭症

・発症頻度:10~40% 発症期間:発症後2日~数か月

・水頭症の合併症として、認知障害、歩行障害、尿失禁の疑いがある場合は報告。

・急性期の重症例として、心電図の異常や呼吸困難(中枢性肺水腫)、意識障害(低ナトリウム血症)に注意。

 

血圧低下に伴う脳虚血(起立性低血圧)

①臥位から座位・立位になると重力の影響により血液が下肢や腹部臓器に移行し、心臓への還流血液量は約30%軽減してしまい、血圧低下につながる。

②脳卒中(特に急性期)では、麻痺による筋収縮困難・長期臥床による筋力低下が起こり、筋ポンプによる静脈還流の低下、下半身への血液貯留が起こりやすくなる。

③体位変や離床を進める際は、頻度の血圧測定と本人の訴えを聞き出し慎重に行なう。

血圧が低下する場面

・強い負荷や痛みからの解放後:迷路神経過反射が起こりやすい。

・刺激が少ない:立つだけ。車椅子に座っているだけ。

・長期臥床患者・糖尿病合併症の離床。

・突然の起立:十分な筋活動もないまま他動的に立位姿勢になるため、起立性低血圧を起こしやすい。

 

急性期の自律神経障害

①病型(脳出血・梗塞)に関わらず、急性期は自律神経のバランスが崩れる。

②原因は、①ストレスに対する交換神経の過剰反応、②内因性カテコールアミン濃度の上昇。

※副腎髄質および交感神経に存在する生体アミンの総称で、生体内ではドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの3種がある。

・血圧動揺:血圧上昇が多く、変動しやすい。少しの刺激に過剰反応する。

・不整脈

・頻脈:安静時より頻脈になる。

・発汗異常:安静時より発汗が多い。

・発熱:明らかな炎症反応なしでも高熱が続く。

 

脳浮腫への考慮

①出血、梗塞、虚血で脳浮腫出現

②脳梗塞:3~7日のピークから徐々に減少。脳出血:1~2日後から出現、約1~2週間をピークに3~4週間持続。

③脳浮腫の悪循環:脳浮腫により、脳組織・頭蓋内圧亢進し、脳血流が低下する。その結果、脳低酸素状態に陥り、脳浮腫の悪化につながる。

④薬物コントロールが最優先で行なわれる(ステロイド療法、高張液療法など)。

 

筋力増強トレーニングでの注意

①過負荷にならないように負荷量を調節(翌日に疲労が残らない程度)。

②血圧に配慮し、循環器疾患は注意する。

・等尺性収縮は、血圧上昇をきたしやすい。

・呼吸を止め、いきむと血圧上昇をきたしやすい。バイタル確認および運動時の呼吸維持。

 

肩関節痛

①肩関節亜脱臼

・初期の弛緩期に多く、上肢の重量を保持できないため生じる。

・腱板に対して牽引力が生じ、関節包・棘上筋・三角筋が昨日的ストレッチ(オーバーストレッチ)を受ける事で生じる。

・すべての亜脱臼症例で痛みが生じるわけではなく、一時機関経過後に生じる。

②痙性および拘縮

・片麻痺上肢:内旋・内転が優位になり、外旋制限が起こりやすい。

・内旋筋(肩甲下筋・大胸筋)の痙縮が強く、伸張刺激で生じる場合がある。

 

肩関節亜脱臼について

<定義>

関節が構成する骨の関節面がズレて正常な位置関係ではないが、一部はなお接触を保っている。

<原因>

三角筋だけでなく棘上筋の筋緊張の低下や筋力低下が原因だと考えられる。

<予防>

・早期の関節可動域訓練。

・スリングを使用し、関節の位置関係(アライメント)を保持する。

・筋緊張の低下している時期は、スリングや三角巾で固定することが多いが、拘縮を起こさないように他動的に関節可動域維持のための運動も必要。

 

肩手症候群について

<定義>

肩と手の疼痛性運動制限と手の腫脹(発赤を伴う)・痛みを主徴とする反射性交感神経性ジストロフィー(RAD)の一種である。原因の明らかでない特発性のもともあるが、離床的にみられる本症候群の多くは、片麻痺、心疾患、頚部脊椎症、上肢の外傷などに続発する。重症例では上肢機能は廃用(廃用肩・廃用手)となる。

<症状>

急性期では、手部の腫脹・熱感・発赤、手指の運動時痛を伴うことが多く、慢性期では手指の関節可動域と筋委縮を伴うようになる。

<発症時期>

発症から3日目から6ヶ月(7割程度は3か月までに発症)

<各時期の症状>

第1期(急性期:3~6か月)

・激しい疼痛

・発赤、腫脹、発汗過多、皮膚温上昇、血流増加

・肩、手関節の屈曲制限

第2期(亜急性期:3~6か月)

・激しい疼痛

・萎縮(皮膚や手指)、蒼白、乾燥、光沢を帯びる。

・関節拘縮。MP軽度伸展位

第3期(慢性期)

・疼痛の軽度減少。

・乾燥、著名な萎縮。

・関節拘縮の悪化。完全拘縮。

 

転倒・転落・骨折

<リスクマネージメントシート>

①転倒したことがある(入院前後)           :3点

②歩行に介助または補助具が必要である。        :2点

③判断力が低下している(記憶・理解・注意力低下など) :2点

④日常生活に影響する視力障害がある。         :1点

⑤頻尿・失禁がある                  :1点

⑥薬を服用している(眠剤、降圧剤、利尿剤など)    :1点

※転倒の可能性大:7~10点 転倒しやすい:4~6点 可能性がある:0~3点

 

ベッドサイドでのチューブ・コード類のライン管理

人工呼吸器装着患者

経鼻挿管:鼻から気道確保

経口挿管:口から気道確保

気管切開:直接気道へチューブを挿管し気道確保

カテーテル挿入患者

胸腔ドレーン:胸水などの排泄用チューブ

末梢動脈カテーテル(Aライン):血液ガス測定、持続的な血圧のモニタリング(観血的動脈圧測定)

中心静脈カテーテル(CV):中心静脈栄養法(TPN/IVH)。太い静脈から直接投薬、栄養補給を行なう。

マーゲンチューブ:胃への直接流動食・投薬を行う。

バルーンチューブ:膀胱から直接排尿。

肺動脈カテーテル(スワンガンツカテーテル):肺動脈圧(心臓負荷)、肺動脈

 

 

【リハビリ】乳酸アシドーシスとは~筋肉痛では済まされないことも~

【リハビリ】乳酸アシドーシスとは~筋肉痛では済まされないことも~

 

 

 

乳酸アシドーシスとは

乳酸アシドーシスとは、乳酸の蓄積または乳酸の代謝低下が原因で、アシドーシスが起こること。

アシドーシスには、大きく分けて代謝性と呼吸性の2種類があり、乳酸アシドーシスは、代謝性アシドーシスに分類される。

※アシドーシスとは、体内に過剰な酸が発生することで、血液が酸性に傾いた状態。

 

乳酸アシドーシスの種類

乳酸アシドーシスは大きく分けて3タイプある。

A型乳酸アシドーシス

A型乳酸アシドーシスは、アシドーシスの中でもっとも重篤になりやすいタイプ。

主な原因として、体内の酸素不足がある。体内への酸素供給が不足することで、嫌気解糖が起こす。嫌気解糖では、過剰な乳酸が生成されるため、酸性に傾き乳酸アシドーシスに陥りやすくなる。体内が酸素不足に陥る原因としては、全身の血液循環の低下(心筋梗塞・不整脈などによる心原性ショックなども)が嫌気解糖を引き起こす。

※嫌気解糖とは、酸素を用いずにエネルギーを生み出す仕組み。

 

B型乳酸アシドーシス

B型乳酸アシドーシスは、全身疾患などを原因とするタイプ。A型に比べると重篤化リスクは低いと言われている。

B型乳酸アシドーシスを引き起こす疾患は、肝臓障害・糖尿病・がんなどが代表的で、フェンホルミン・メトホルミンなどの薬剤が原因となることもある。

腎機能が低下した方がメトホルミンを服用すると、血中に乳酸が増えやすくなるため、乳酸アシドーシスが起こりやすくなる。

※メトホルミンは糖尿病治療やがん抑制に用いられる薬。

 

D乳酸アシドーシス

D乳酸アシドーシスは、乳酸アシドーシスのなかでは頻度が低いタイプ。

D乳酸アシドーシスが起こりやすいのは、腸切除や空腸バイパスの手術を受けた方などで、腸の手術を受けた方は、

結腸などでD乳酸が生成されやすくなり、D乳酸は人体内では代謝されないため、生成後は血中に蓄積される。血中のD乳酸の量が過剰になるとD乳酸アシドーシスに至いる

 

乳酸アシドーシスの症状

乳酸アシドーシスの症状の種類・程度は個人差があります。

初期:消化器系の症状:悪心、嘔吐、腹痛、下痢など、その他の初期症状:筋肉痛・倦怠感など。

進行すると:過呼吸、脱水、低血圧。低体温、昏睡 ※最悪の場合は、命を落とすことも。

 

乳酸アシドーシスの診断方法

動脈血ガス、血清電解質

動脈血ガス:血液中のガスの成分(酸素や二酸化炭素など)を調べる検査。

この検査は肺・心臓・腎臓や体液の状態を把握をすることに役立つ。

血清電解質:血液中の電解質の成分を調べる。

血液のph、体内の水分や浸透率を把握するための検査。

動脈血ガスや血清電解質の結果が血中pH < 7.35となった場合、乳酸アシドーシスと診断される。

 

アニオンギャップ、デルタギャップの算出

アニオンギャップ:血液中の陽イオン・陰イオンの差をみるもの。

デルタギャップ :正常なアニオンギャップとの差をあらわすもの。

アニオンギャップやデルタギャップは、動脈血ガス検査の結果をもとに出され、アニオンギャップが高くなっている場合、乳酸アシドーシスが疑われる。

 

血中乳酸濃度

血中の乳酸の濃度を調べる方法。

血液中に大量の乳酸が認められる場合、乳酸アシドーシスの可能性が高まる。

乳酸濃度 > 5~6mmol/Lかつ動脈血ガスでpH < 7.35の場合、乳酸アシドーシスと診断される。

 

乳酸アシドーシスの治療方法

A型・B型乳酸アシドーシス

A型・B型の乳酸アシドーシスは、全身疾患などが原因で引き起こされる。

治療は、まず根本原因である疾患・症状の治療が中心となる。A型の原因は、心筋梗塞や不整脈などによる酸素の供給不足などあるため、改善するには、心疾患などを治療して体内の酸素供給量を増やす必要がある。B型の場合は、糖尿病などの疾患のほか、薬剤の使用が原因であるため、乳酸アシドーシスを改善するには、原因疾患を治療したり、原因となる薬剤の服用を中止する必要がある。

 

D乳酸アシドーシス

D乳酸アシドーシスの治療:輸液、炭水化物制限、薬剤投与など

 

乳酸アシドーシスを起こしやすい人の特徴

乳酸アシドーシスのリスクが高い方 :腎臓障害、肝機能障害、循環器系の疾患など

乳酸アシドーシスのリスクが高めな方:高齢者、脱水、大量飲酒など

 

 

【介護】アリセプト(ドネペジル)とは

【介護】アリセプト(ドネペジル)とは

 

 

アリセプトとは

アリセプト(ドネペジル)はアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の症状進行を抑制する薬である。認知症治療薬の中でも古くから使用されている薬である。

 

アリセプトの種類・剤型

①口腔内崩壊錠(OD錠)

少量の水分で溶けるように設計された薬。口の中に入れると唾液で瞬時に溶けるため、水なしで飲むことができる。飲み込む力の弱い方によい。

②ゼリー剤

カップに入った一口サイズのゼリー状の製剤。食事でのムセなど飲み込む力が弱い人に適している。

ドライシロップ

粉末を水に溶かして液体として飲むことができ、粉末のまま飲むこともできる。

 

各疾患の用法・用量

アルツハイマー型認知症

開始用量の3mgから開始する。少量の開始理由は、副作用の出現の有無を見極めるためと、薬を内服することで起きる神経伝達物質の変化に身体を慣らすため。また、脳の活性化を促す薬であるため、昼夜のリズムを作っていく目的で朝に処方されることも多い。薬がの半減期が長いため飲む時間による血中濃度への影響は少ないとされている。

レビー小体型認知症

臨床試験の結果レビー小体型認知症に有効であることが確認され、2014年よりレビー小体型認知症への適応が拡大された。

 

アリセプトの効果・作用機序

脳は神経伝達物質を介して記憶・学習を行なっている。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では神経伝達物質の1つであるアセチルコリンが脳内において減少していることがわかっている。

脳内にはアセチルコリンを分解する役割を持つ酵素であるアセチルコリンエステラーゼがあり、アリセプトはこのアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内でのアセチルコリンの濃度を高め神経伝達を助ける働きがある。

 

アリセプトの副作用について

飲み忘れた場合は、基本的には気が付いた時に服用。

※ただし、いつも飲む時よりも12時間以上離れていたときは、次の日から通常通りに飲む。

この薬は半減期が長いため、1日飲まなくても影響は少ないです。飲んだかどうかわからなくなってしまった場合は、誤って重複して飲むことを避けるためにその日はそれ以上飲まずに翌日から内服を再開する。

 

代表的な副作用

多い副作用として、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状がある。

消化器症状

消化管における神経伝達物質の変化により生じると考えられており、多くは内服が開始後および増量後に出現。多くは様子をみているうちに体が慣れてきて自然に軽快すること多い。

症状が強い場合は、整腸剤や吐き気止めなどを併用し継続できるが、内服の継続有無は主治医の判断や副作用の程度で判断する(重度の場合には基本的に中止または減量)。

精神症状

興奮やイライラ感、落ち着きのなさなどが出現することがある。これは脳内のアセチルコリンが増加することにより、神経細胞が刺激されて生じるものと考えられている。投与開始や増量に伴い生じた場合は慣れてくるに従い自然に軽快することもある。

徐脈・不整脈

心臓の病気をお持ちの方は内服にあたり注意が必要。

パーキンソニズム

アリセプトにより脳内のアセチルコリンとドパミンのバランスが崩れ、パーキンソニズムの悪化・出現を招く可能性が指摘されている。

 

アリセプトの特長

認知症の周辺症状(BPSD)の中でも、意欲低下、無関心、抑うつといった症状への改善効果が報告されている。また、2015年にレビー小体型認知症に適応の薬となっている。

コリンエステラーゼ阻害薬の中で、唯一高度のアルツハイマー型認知症に適応のある薬。軽度から高度まで適応があるため、途切れのない治療を行うことができる。1日1回の内服で済むため、飲み忘れの防止や本人・介護者の負担軽減になる。

 

 

【リハビリ】感覚と感覚障害

【リハビリ】感覚と感覚障害

 

 

感覚の分類

体性感覚は,① 表在感覚(痛覚・冷覚・触覚)② 深部感覚(振動覚・関節位置覚)③ 皮質感覚の 3 種類に分類される。

 

感覚障害の種類

感覚障害の分類には様々ある。

感覚障害は、感覚低下・錯感覚・異常感覚・感覚過敏・疼痛、の5 種類に大別される。錯感覚 (paresthesia) は異なった感覚として認識される感覚で、触覚を痛み・ぴりぴり感として感じることが多い。

異常感覚(dysesthesia) はしびれ・じんじん・ぴりぴりなどが自発的にみられる感覚。

疼痛は、① 放散痛、② 視床痛、③ 有痛性強直性けいれん、の3 種類に分類される.根性疼痛は放散痛に含まれ,神経根圧迫により神経の走行に沿って疼痛が生じる。

 

感覚障害の診断

感覚障害の診断で重要なことは、障害部位によって感覚障害の分布が異なることである。

 

単一神経の障害(mononeuropathy)

障害された単一の末梢神経の症状が出現する。障害された神経が1 本であれば単神経炎、複数であれば多発単神経炎と呼ばれる。

単神経炎:上肢では正中神経麻痺(猿手)、尺骨神経麻痺(鷲手)、橈骨神経麻痺(下垂手)、下肢では腓骨神経麻痺(垂れ足)が代表的。

多発単神経炎:血管炎とサルコイドーシス。脳神経系では三叉神経痛が代表的。

 

多発神経障害(polyneuropathy)

感覚障害が左右対称性に四肢遠位部にみられ(手袋靴下型)、深部感覚・表在感覚のいずれもが障害され、遠位部の運動麻痺や腱反射低下を伴うことがある。

原因:糖尿病、薬剤や中毒(アルコール)

実例:糖尿病性多発神経障害では異常感覚が多くみられ、しびれや灼熱感・足の違和感がみられる。

神経障害が高度になると、感覚は低下して糖尿病性壊疽に陥ることがあるので注意。

 

神経根の障害(radiculopathy)

神経根に支配される皮膚分節に一致する感覚障害が出現することが特徴。

放散痛がみられることが多く、障害された神経根に対応する領域に強い痛みがみられる。前根も障害されると、支配筋の萎縮と麻痺が生じる。

原因疾患:脊椎疾患で,変形性脊椎症・椎間板ヘルニア・後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症が代表的。

 

脊髄障害(myelopathy)

髄節以下の感覚障害が生じる。横断性を除いて解離性感覚障害がみられる。

原因疾患:脊髄梗塞・脊髄炎・多発性硬化症・腫瘍がある。

①横断性障害

障害髄節部(sensory level) 以下に両側性の全感覚障害がみられる.sensory level 直上に感覚過敏領域がみられることがある.対麻痺や膀胱障害を伴う.原因では外傷・脱髄・炎症(図 2A)がある.

②半側障害(Brown-Séquard 症候群)

脊髄が半側性に障害された時にみられる症候である。

表在感覚:情報は後根から脊髄に入り、そのレベルで交叉。

深部感覚:髄内ではすぐには交叉せず,同側を上行して延髄レベルで交叉。

このため脊髄半側の障害では、病巣側の麻痺と深部感覚障害・反対側の表在感覚障害がみられる。病変部髄節の全感覚障害を伴うことがある。

③前脊髄動脈症候群

前脊髄動脈の虚血により両側性に前索・側索が障害される。

障害:皮質脊髄路や外側脊髄視床路が障害され、対麻痺・表在感覚障害が生じ、膀胱障害を伴う。

④後脊髄動脈症候群

後脊髄動脈の虚血により両側性に後索が障害される。

障害:深部感覚が障害

原因:ビタミンB12 欠乏(亜急性脊髄連合変性症)が代表的。この疾患では多発性末梢神経障害を併発することが特徴。

⑤脊髄中心部症候群

脊髄の中心部が障害される疾患として、脊髄空洞症と脊髄腫瘍がある。

脊髄空洞症:下部頸髄から上部胸髄に生じることが多く、感覚障害としては宙吊り型の表在感覚障害が代表的であるが、実際には表在感覚障害は顔面を含む片側性にみられることが多い。

脊髄腫瘍:髄内腫瘍によって仙骨部回避(sacral sparing) がみられることがある。

⑥サドル状感覚障害

脊髄円錐部(conus medullaris) や馬尾の病変では、肛門周囲に限局した表在感覚障害がみられる。

 

脳幹障害

延髄外側症候群が代表的疾患。

障害:表在感覚障害が病巣側顔面と健側の上下肢体幹にみられ、解離性の感覚障害が交代性に出現することが特徴である。

 

視床の障害

視床の小梗塞によって対側半身の感覚が低下する(pure sensory stroke)。

刺激で焼け付くような痛み(hyperpathia) が出現。感覚障害が半側口周囲と上肢末梢に限局することがあり、これは手掌口症候群(cheiro-oral syndrome) と呼ばれる。

慢性期では視床痛があり、中枢性脳卒中後疼痛の一つである。痛みや感覚過敏、灼熱感などの異常感覚が自発的に継続してみられる。

 

 

【介護】ぎっくり腰~急に動けなくなるのキツイです~

【介護】ぎっくり腰~急に動けなくなるのキツイです~

 

 

ぎっくり腰(急性腰痛)とは

急性腰痛症は、腰痛が発症してから4週間以内のものを指します。一般に“ぎっくり腰”と呼ばれている状態はこれに含まれ、重いものを持ち上げたときや腰をひねったりしたときなどに突然起こります。強い痛みを生じることが多く、欧米ではその激しい痛みから「魔女の一撃」と呼ばれることもあります。痛みの原因は、主に腰の関節やその周りの筋肉や靱帯にあると考えられていますが、原因がはっきりとしないこともあります。

 

原因

急性腰痛症の痛みの原因はさまざまで、原因がはっきりしない場合が多いようです。

原因の1つとして・・・

・身体の機能低下(姿勢、習慣、過緊張、筋力、柔軟性低下)

・ストレスや環境、季節要因に

・老化

・無理な力がかかることなどによる腰の関節のズレ、椎間板の損傷、腰の筋肉や腱、靱帯の損傷 など

が原因として多いと考えられています。

そのほか、特別な病気として椎間板ヘルニア、脊椎分離症、すべり症、腰部脊柱管狭窄症などが原因となっていることもあります。また、ときに圧迫骨折やがんによる背骨の病的骨折、感染症による背骨や椎間板の化膿などが原因となって腰痛を引き起こす場合があるため、病院での診断を受けることが重要です。

 

症状

・腰に強い痛みが生じ、腰を前後に曲げることが難しくなる。

・症状が重い場合は痛みで動けなくなることがあり、臀部や下肢に放散するような痛みやしびれを伴う場合もある。

・起き上がる時や咳・くしゃみをしたときなどに生じることもある。

・痛みは1日以上続き、1か月以内に治まる場合を急性腰痛症と呼ぶ。

※安静にしていると痛みは和らぎますが、過度な運動制限は筋力低下を招き腰痛を悪化させる可能性があるため注意が必要。

 

検査・診断

診断で重要となるのは問診・身体診察と画像診断になります。

診断では、まず問診と身体検査によって、痛みの範囲、悪性度、慢性化の可能性、進行性かどうかなどを注意深く評価し、腫瘍や感染症、骨折などの重要な病気が隠れている可能性も。

腰椎の状態を調べるために、画像診断(X線検査で、より詳しい情報を得るために、MRI検査やCT検査)が行われることもあります。

他にも、血液検査、尿検査、骨密度検査、筋電図検査、骨シンチグラフィー検査、PET検査などが行われる場合もあります。

 

治療

急性腰痛症は安静にしていると数日から数週間で自然に治ることもありますが、痛みを軽減させるために、薬物療法、神経ブロック療法、装具療法などが行なわれます。

薬物療法

腰の痛みや炎症に対しては通常、非ステロイド系抗炎症薬が処方されます。痛みによる筋肉の緊張や精神的な緊張を和らげる目的で筋弛緩薬や抗不安薬を使用することもあります。また、心因性の腰痛が疑われる場合は、抗うつ剤などの薬剤が用いられることもあります。

神経ブロック療法

脊髄を囲む硬膜と骨の間の空間に局所麻酔薬を注射し、一部の神経を遮断(ブロック)することで痛みを軽減する方法。痛みを感じる神経のブロックと、運動神経や交感神経の遮断で筋肉が緩み血行がよくなる効果によって腰痛が緩和されることが期待できます。

装具療法

コルセットなどを用いて痛みの出ている部分を安静に保つことで、痛みの軽減や早期の回復を目指す。

急性腰痛では、安静を続けるよりも無理のない範囲で日常生活を維持したほうが早く回復するという報告もあり、どの程度運動を制限すべきかについては医師との相談が必要となります。

 

予防

機能改善

体幹トレーニングなどで体幹の安定性を高める

ストレッチなどで股関節や大腿部の柔軟性を高める

様々な運動、動作をおこない、共同運動パターンを増やす

トレーニングで猫背、反り腰、受け腰といった脊柱のアライメントを修正する

習慣改善

一日中、同じ姿勢、同じ動作にならないように体操を取り入れる

心理的なストレスを解消する

運動習慣を作る

入浴やストレッチなど日ごろのケアを行う

 

 

 

【リハビリ】筋緊張を知ろう!!

【リハビリ】筋緊張を知ろう

 

 

筋緊張とは

筋緊張異常(亢進・低下)

筋緊張亢進の病態:痙縮

痙縮でみられる現象:折りたたみナイフ現象

パーキンソン病でみられる現象:筋強剛

筋緊張亢進時に感じる抵抗感:鉛管様現象、歯車様現象

筋強剛と痙縮が重複:強剛痙縮

筋緊張低下の病態:弛緩、一見弛緩様

弛緩:常に筋緊張が低下

一見弛緩様:安静時は筋緊張低下。深部腱反射は亢進。

※臨床的には、筋緊張異常の要素は、すべてが「痙縮」「筋強剛」「弛緩」のような疾患そのものに由来する一次的障害というわけではない。筋短縮や皮膚短縮といった二次的障害も筋緊張を亢進させる要因である。

 

筋緊張の評価

①静止時筋緊張検査

ある姿勢を保持させた状態(背臥位、座位、立位など)での筋緊張を、視診、触診にて観察する。

②他動運動時筋緊張検査

筋を他動的に伸張させて、その抵抗感から筋緊張の状態を検査する。できるだけ安静にさせて検査を行なうことが原則となる。一般的に用いられる方法としては、背臥位で麻痺筋を伸張させる方法がある。

痙縮:伸張速度が速くなるにつれて筋緊張程度が亢進し、その亢進する部位が緊張初期の場合。

一見弛緩様:筋緊張速度を速くしたときに伸張初期に抵抗感を感じるがある。

弛緩:筋伸張速度を変化させても抵抗感は感じないが、弛緩しているため重い感じがする。

強剛痙縮:速度に関係なく抵抗感を感じる。

アシュワーススケール(MAS)

他動運動での筋緊張の客観的検査法

④筋緊張亢進程度を軽度、中等度、重度の3つに分類する方法

軽度:他動的伸張時の抵抗感は殆ど感じることなく、可動域全域を動かす事が出来る。しかし、動作におけるスピード、持久性、巧緻性には欠ける。

中等度:他動的伸張時の抵抗感はある程度感じるが、可動域全域に渡り動かすことができる。

重度:他動的伸張時に高度の抵抗感を感じ、可動域全域を動かす事が困難。

⑤動的時筋緊張検査

歩行時の評価:(例)麻痺側肘関節、手関節、手指が屈曲する。

※CVA患者の「筋力低下」を用いる場合は、麻痺側運動機能が正常である場合(ブルンストロームステージⅥ)。

 

筋緊張異常のアプローチ

①二次的障害(皮膚・筋短縮)のアプローチ

 皮膚の伸張:皮膚短縮の両端に触れて皮膚だけを伸張。圧が強すぎないように。

 筋の伸張 :ダイレクトストレッチ

②一次障害に対するアプローチ

③正常動作の獲得

 本人の動作を適切な方向に自然に誘導することを目的にし、本人を無理に動かすのではなく本人が動きたいと思う方向に誘導する。

 

まとめ

筋緊張異常に対するアプローチとしては、二次的障害へのアプローチ(皮膚・筋のストレッチ)を第一に行い、次に一次的障害へのアプローチ(持続的伸張など)を実施する。これらのアプローチをもとにして動作指導を行なう。